映画評

  •  若い人達の映画評は、「やっほーい、見ちゃった!(^□^)゛にゃはは(^□^)゛(^o^)」(゚ω゚)イイヨゥ! のような具合で、おじさんにはさっぱり理解できません。年寄り向けのサイトがあればと考えました。

劇場主

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カテゴリー「ら」の11件の記事

2009年1月 6日

ラブ・アペタイザー(2007)

- キニア氏に同情  -

劇場主(私)の年末は忙しかった。インフルエンザワクチンの人をさばきながら、普段の患者さんも診察しないといけないし、新しい電子カルテの導入の準備、薬の点検、注文なら何やらで、ほとんど休みのない日々を過ごした。

そんなときに観たいのは、やはり心温まる物語だ。タイトルにラブの文字が入っていたし、モーガン・フリーマンが出ているし、きっと良い映画に違いないから、この作品を観る気になった。おやあ、監督はロバート・ベントン!こりゃ、絶対イケルねえ。

愛の話であった。愛は、神様が人間にくれた宝物か、呪いか?

モーガン・フリーマン演じる教授と妻(白人)は、かって息子を亡くしている。息子は薬物中毒だったのだが、全くそんなそぶりに気づかなかったことが夫婦の心の傷になっている。その傷のために、教授は休職中である。

教授の日課は、なじみの喫茶店で、グレッグ・キニア演じる店主と世間話をすること。キニアには妻がいたのだが、なんと!レズの女のもとに走られてしまう。彼は突然のことに呆然。

いっぽう、店の店員は恋人をゲットする。恋人は占い師に二人の行く末をみてもらうが、悪い結末が待っていると出る。しかし、彼女は彼に結婚を申し出る。彼女は何を思ったのか?

レズに妻を寝取られたキニア氏は、傷心の日々を過ごすが、自分が妻の心の変化に気づいていなかったことを素直に認める好人物ぶりに、教授を始めとする周囲の人間は呆れつつ、励ます。

キニア氏は、不動産業の女性と恋に落ちる。そして結婚生活を開始するが、この新妻には不倫関係の男性がいる。さて、キニア氏の結婚の行方は?

店の店員の若いカップルも結婚する。めでたく妊娠も判明。しかし、例の占いは外れてはいなかった。大いなる不幸が襲う。

愛は、苦しみしか残さないのか?様々な不幸が、登場人物達を襲う。

アブ・アペタイザーというタイトルの意味がよく解らないが、愛の前菜?キニア氏が前菜としてしか扱われないことを言っているのか?本格的な愛の前菜として、いろんな事件があるという意味かとも思う。

ロバート・ベントン監督の作品らしく、いかにもゆっくりした穏やかな口調で物語が始まる。途中で大きな不幸が訪れるのだが、どこか救いを探せるような面を持ち、暖かい周囲の人々の目が感じられる。

グレッグ・キニアという俳優は、本当にこんなキャラクターの映画には必須のアイテムなのかと思えるくらい、はまっている。不幸に打ちのめされる人間の役ばっかり演じている気がする。たまには別なキャラクターも演じてみては?彼がスーパーヒーローを演じたら、シュールで面白いのでは?

心うたれるのは、恋人が将来性がない、何か不幸が訪れると知って結婚する娘の行動。現実的には危険な考えたかで、ほとんどの女性は計算を優先すると思うが、中には純真な人も確かにいる。不幸を覚悟で、あえて愛の運命に自分をゆだねるのは凄いことだ。

私も妻の行状を見て、これは苦労するなと感じつつ、結婚したのである。別に肉欲に負けたわけではない。運命にまかせようと真剣に思ったのだ。偉いのである。映画にして欲しいくらいだわ。

でも、明らかに考えが足りなかったことは認めないといけない。相手は慎重に選ぶべきだ。

モーガン・フリーマンの妻が白人だったので、フリーマンが優れた人材であること、妻と強いきずながあったこと、二人には強い意志もあったことが自然に解る設定。

不倫関係で悩むキニア氏の妻の様子も自然。悪人としては描いていなかった。レズに走る妻も、最近良く見かける女優さんだったが、いかにもありなんという表情を出していた。

さて、この映画を家族や恋人に見せたものか?私は勧めない。家族はもちろんだが、恋人が同性愛に走ってもいいと言ってるような勘違いをされては困るし、基本的に不幸な話であり、恋が盛り上ることも期待できないからだ。

今のパートナーと付き合いを続けるか迷っていて、微妙な状態の時には、カマをかける意味でみせてみて、二人でよく深く考えて見るといいかも知れない。

「どんな不幸が来ようとも、運命にまかせて愛する。」という結論がでるようならバンザイ。「イヤ、やはり無難な人生を送りたいから、現実路線で行くわ。」と思えば、それも良し。私だったら・・・・いや、もう愛のことなんか、考える余裕もないわ。

 

 

2008年12月28日

乱(1985)

ー 話が手法とマッチしてるか? -

ある国の話。

城主の仲代達也は戦上手で、周辺の国々を滅ぼして領地を広げてきた。しかし、そろそろ引退したいと考える。

狩の休憩時間に、皆が揃った席で引退を表明する。子供三人に国を分けるので、それぞれ仲良くすること・・・。突然の発表に、そんなあ急すぎだよ福田総理、と言ったか言わないか?

三男は反対する。結果として今いる城を追われ、隣国に追放される。リア王における三女(コーデリア?)の役割。

兄弟仲良く国は安泰のはずだったが、次男は嫁にせつかれて結局は兄弟で戦うはめになり、仲代達也は自分の判断の間違いに気が動転し、狂人としてフラフラ城を出る。

三男は仲代を救うために国に戻ってくる。当然、次男との戦いになる。さて、戦いの結末は?

この作品は「蜘蛛巣城」と共通点が多い。

ともにシェ-クスピア原作の物語を題材にしていて、ともに戦国時代の城主が中心で、さらに疑いや裏切りによる不幸を描くところまで同じ。普通なら2番煎じと言われるのを気にして製作しないはずだが、監督くらいの超大者は気にしないらしい。

狂った仲代のメーキャップ、表情は、蜘蛛巣城の三船と同じく、目をギョロッと向いて激しすぎる。さすがにワンパターンの印象を受けた。

できれば原作と同じく、荒野の東屋に横たわって生死をさまよう、付き人は次々と無残に殺される、といった話のほうが良かったのでは?道化師との会話は、うまく使えば作品の価値を高めるが、なかなか万人に伝えるのは難しい内容だった。

三男の軍隊が林の影に隠れて、押しては引くの策謀で敵を翻弄する場面は非常に明解で、面白かった。しかし、話全体の中では、見事でも意味がない印象はある。

騎馬の突進も音響、カメラアングルなどの工夫があって素晴らしかった。映画館で観ると、音がうるさすぎるくらいだが、あれがいいのである。

逆に、この映画はカラーで画面が解りやすいので、余計にオーバーなところが目立つ。煙幕も、はっきり煙幕だと解ってしまうので、不自然な演出のアラが出てしまう。難しいところである。

富士山の山麓に作ったらしいセットも、細かいところまで見えるので、砂利の丘に無理に作ったことが解りすぎて不自然。あんな城はないと思う。敵に囲まれても困らないような作り方をしないと・・・。

出演した俳優達にも、今ひとつ共感できなかった。知っている俳優達だったからか、いつもと勝手が違う現場で萎縮したのか、個性が十分に出せていない気がした。

特に根津甚八は、嫁に翻弄される次男役の悩んだ表情が充分に出せていなかったような気がする。同じような敗戦の将を演じさせると、豊川悦司などは実に迫力があるが、声を裏返らせるような細かい表現が出来ていなかったのでは?

アップも少なくて、彼の微妙な演技を生かしきれていなかったような気もする。能の舞台をイメージした演出には合わないのかも知れない。

悪女役の原田美枝子は、化粧のために表情が解らなかった。能のような化粧は必要ない。戦国時代なので、現代風の化粧で良かったのでは?それなら現代風の容姿の彼女には表現がしやすかったのではないかと思える。

「蜘蛛巣城」の山田五十鈴よりも扱いが低かった気もする。アップで目立たせると良かったのではないか?

能を取り入れた舞台劇風の蜘蛛巣城は大成功だった。気味の悪さ、オドロオドロしさが引き立っていた。でも、あの手法の成功体験が、この作品ではマイナスに働いていたようだ。

この作品は家族で観ることも、恋人と観ることも勧められない。暇つぶしに友人と観ることも同じ。そんな映画、やはり問題だ。

手法と俳優の個性、画面の解像度などがマッチしていない気がする。

 

 

2008年12月18日

羅生門(1950)

- 話が聞こえない -

京の都の羅生門(正しくは羅城門だが、生命にかけてあるらしい)は、今は戦乱で荒れ果てて、死人の腐臭が漂う。たまに人々が雨宿りに利用するだけである。そこで出会った二人の農民?僧侶?が自分達の見聞きした事件を話す。

ある盗賊が、若い侍とその妻を襲ったらしい。現場には侍の死体があったが、妻は消えていた。

捕まった盗賊は、自分は妻の求めに応じて正々堂々と侍と戦い、勇ましい戦い方で侍を倒したと証言する。

妻は、辱しめを受けた自分は生きてはいれないと、夫に短刀を差し出したが、気がつくと夫に短刀が刺さっていて、どうやら夫が自分で自分を刺したか、錯乱した自分が刺したのか解らない有様。

侍の代わりに呼ばれた霊媒師は、自分に侍の霊をのり移らせて、自分は妻の言葉に絶望して自分の胸を突いたが、誰かが短刀を引き抜いていくのを見たと言う。

いったい誰の言うことが本当なのか、さっぱり解らなくなり、検非違使(検察官)は困惑する。

雨宿り中の男達は、この調べの証人になっていたのだが、真相が解らない、もう誰も信用しないぞ、とあきれつつ、怒る。

すると、そこに赤ん坊の泣き声が・・・

・・・この映画は何度も観たのだが、音声が解りづらくて筋が解らない。あらすじで述べた内容にも自信がない。

作品の内容はともかく、話の出来が良いので家族と観ても良いと思う。観れれば。

とにかく音声に難点があるので、現実的にはちょっと難しいかも。オススメとは言い難い。教育上はマズイ。恋人と観るのは構わないが、音声が良い状況でないといけない。そして全く楽しくない。

なんで、こんな映画を作ることができたのかが解らない。

テーマから考えて、観客が喝采を送って大ヒットするとは到底思えない。おそらくは芸術家かぶれの客しか見ない、普通の人は退屈してしまい、批評家には受けても興行的に失敗しそうなことが確実と思える。会社が、よく製作に踏み切ったものだ。たぶん、上層部にも芸術派がいたんだろう。

もともとは、赤ん坊の話は芥川龍之介の羅生門から、本題は藪の中から取ったのを、映画向きにつなげてある。このアイディアがいい。

何かの本で読んだが、この作品は当初は興行的には失敗に近い状況だったらしい。ところが映画祭でグランプリを摂ったものだから、凱旋興行ではヒットになったらしい。

外国のウケは非常に良かったらしいが、音声に関係ない字幕でこの作品を観れば理解度は上がるだろうから、充分に評価されそうだ。今、我々がDVDで観ようとすると、声が良く解らなくて理解できない部分が多くて困る。この作品は字幕でみるほうが良い。

黒澤ファミリーの意向か?デジタル処理が充分にできないらしい。

アメリカ映画の「戦火の勇気」も、この作品を参考にしていたようだ。

 

2008年12月 6日

ラヂオの時間(1997)

- 構成が素晴らしい - 

三谷幸喜監督による映画。舞台の題材を劇場映画化した作品と思える作風。

ラジオ局が公募したドラマの脚本に応募してきたのは、主婦の鈴木京香のみ。彼女は自分の願望をもとに恋愛物語を作ったのだが、これが採用されて、いよいよ本番という段になって、主演女優戸田恵子のワガママが始まる。主役の女の名前が嫌いで、自分はアメリカの女性弁護士役がいいと言い出す。

急遽脚本は書き直され、舞台はニューヨークと思ったら、マシンガンの効果音が絶対に必要というスタッフの意見で、それならと舞台はシカゴへと変更。さらに、シカゴには海がないのに、どうやってヒロインは難破するんだ?という問題から、ダムが決壊するという設定に変更。

ヒロインが弁護士なら、自分はパイロットがいいし、名前は思いついたドナルド・マクドナルドというワガママも飛び出したが、パイロットが遭難するとスポンサーの航空会社からクレームが来る。言い訳のために、パイロットは実は宇宙飛行士だったという苦しい設定変更、そんなこんなのドタバタ劇が繰り広げられる。

さらに、訪問してきた脚本家の主婦の夫、テレビ局のスタッフの間の諍いなどが話をどんどん複雑にしていく。かっての音響技師が今は守衛をやっているので、その人に頼んで奇抜なアイディアで効果音を作ってしまうシーンも楽しい。

非常に面白かった。複雑な話だが、構成がしっかり練ってあり、極端に無理は感じなかった。極端でやや無理だが、ありえる程度に意外な展開が繰り返されると面白い。やや気になったのは、ディレクター役の西村雅彦の恋人のアシスタントが、唐沢達の味方をするのはおかしいと思ったくらいである。

だが、全体的に舞台風の演技になっている。特に鈴木京香は完全にオーバーアクションだった。むしろ素人くさい下手な演技のほうが好感を持てたのではないか?一般人が示すような遠慮がちな演技に終始しても良かったのではないか?

もっとブスの女優でも良かったかもしれない。表情が大げさな、いかにもオバちゃんタイプの女優のほうがおかしく感じられたかも知れない。

唐沢寿明は逆に自然で、いつもテレビで見せている演技とは気迫が違う気がした。前半でのキャラクターが無愛想だったので、あんな不親切なスタッフ、確かにいるよなあと思っていたら、意外にも脚本家に共感して行動するという美味しい役だったことも関係しているかも知れない。

三谷作品は、多くの登場人物が複雑に絡み合い、ドタバタ劇を繰り広げるストーリーが多い。いかにも舞台で、大勢の劇団員が、それぞれの出番を確実にこなす総力戦タイプの作品である。その原点は、やはり「東京サンシャインボーイズ」の舞台なんだろう。

井上順や、細川俊之、桃井かおりなど、大勢の役者達がオーバー気味だが、味のある演技をそれぞれ見せていた。本当にたくさんの人達のアイディアと演技の総合力で映画を作った感じがする。

この作品は完成度が高い。きっと家族でも、恋人でも、いっしょに観て楽しかったと言える作品だと思う。

 

 

2008年9月30日

ライラの冒険(2007)

- 映画向きの題材か?  -

ライラの住む世界は、動物の精霊と人とがペアとなって生きる世界である。ダストという、言わば魂を作る物質のようなものが世界の鍵となっているらしいが、ダストの正体は誰も知らない。

ライラの叔父ダニエル・クレイグはダストの研究者であり、ついにダストが別な世界に流れ込む事象を発見したらしい。北の方角を目差して旅に出た。ライラも出発することになるが、その際に奇妙な羅針盤を渡される。

いっぽうで、ニコール・キッドマン演じる富豪の女も北を目差しているが、子供とその精霊を分離する実験に関わっているらしく、正体は不明。ライラを殺そうとはせず、親切に扱うが、羅針盤を奪おうとしている。

ライラは機転を効かせて、実験台の子供達を逃がすことに成功するが、敵の兵隊に囲まれてしまう。

・・・というストーリーだが、何を言っているか解っただろうか?このストーリーは言葉では説明しにくい。

まず、私自身がこの作品は全体として非常に難解だという印象を受けた。物語が我々の世界とは違って、人と動物がペアになった世界が基本になるというのが特異な設定なので、まずそれに慣れる必要がある。我々の世界との関係が、いったい今後どのようになるのか知らないが、今回は違う世界だけで終わっていたので、なんとなく親近感が湧きにくいからかも知れない。

映像は非常に美しかった。CG技術の進歩のおかげで、動きが自然な映像美を楽しむことができるようになった。今回のクマの戦い、人と魔女とが入り乱れる戦いの迫力は素晴らしいものだった。

ニコール・キッドマンの悪役も良かった。ただし、彼女は悪役にしては頬がふっくらしていて、凍りつくほどのクール・ビューティーという雰囲気ではなかった。でも、色々頭で考えながら、腹の内に何か隠している様子が表現できていて、まずまず満足のいくレベルだったと思う。

主役の女の子は、第一印象として、万人を惹きつける魅力を持っていたとは思えない。このような大作においては、スタッフの力で話はなんとでもなるので、主役に見た目の良さが求められる。可哀そうだ~、もしくは勇敢だあ~など、何でもいいのだが、一発で好きになれることが必要である。そうでないと、込み入った話についていこうと思えない。

原作の話は、もしかすると映画化することを設定していない内容なのではないか?

普通は、我々の世界から、違う世界に迷い込むパターンが多い。これは話が自然になることと、こちら側の世界で惨めだった主人公に皆が同情することができるという利点もあるからだが、最初からあちらの世界の少女の話とは・・・。

映画化する際の区切りに問題があったのかも知れない。

クマの王が戦いに勝つところで今回の話は終わっても良かったかも知れないし、前半部分を大幅に省略して、少女が何かを隠している→何を?→回想シーンで解説→少女は誰かを探している→誰を?→楽しく遊ぶ子供達のシーン→突然誰かに子供がさらわれる→といった整理がされたら、随分盛り上りも変っていたかも知れない。

映画用の演出もあったのではないか?

いきなり簡単に羅針盤が「はい、これ。」と、手渡しされると、有りがたみに欠ける。誰かが命に代えて渡すくらいないと、どれくらい重要なのか解らない。

今後、クマにどれくらいの比重があるのか知らないが、できれば怖ろしい暴れ熊として登場し、主人公と強い心の結びつきができる様子を表現して欲しかった。あまりに簡単に仲間になっていたような気がする。文章で説明されていたことを、映像だけで解らせるための、細かな工夫が欠けていた。

ハリー・ポッターのヒット以来、この種の壮大な夢物語がたくさん作られているが、正直なところ私は少々飽きてきた。我が家の子供もそうみたいで、この映画を観ようとは言わなかった。見なくて正解だったかもしれない。

よほどの映画好きでないかぎり、恋人に観るのを勧めることも止めたほうがよいと思う。よくできた映像なんだけど、まだ一作目だけでは、今後盛り上るのかどうかも解らない。

興行的に大コケだったらしいので、続編は無理か?

2008年7月16日

ラストキング・オブ・スコットランド(2006)

Photo - タイトルがいい  -

よくできた映画だと思う。

タイトルが素晴らしかった。イングランドに対抗意識を持つスコットランド人を意識したものだったが、最初に聞く人は、古代の活劇を描いた映画か?と勘違いするかも知れない。

この映画は家族では観ないほうが良い。リンチシーンもあるからだ。恋人と観るのは、ダメではないが、これもオススメとは言いがたい。一般受けするためには、もっと視点を変えないとダメだろう。

アミン大統領は、もう随分昔の人になるので知らない人が多いのではないだろうか?軍隊でボクシングの猛者だったからモハメッド・アリに挑戦したいと発言したり、欧米諸国を敵に見立てて激しい口撃をしたりしていた。発言が過激だったことで、一種のヒーローめいた印象を持った時期もあったが、大多数の日本人にとっては何の関係もないままで終わったのではないかと思う。

そのアミン大統領時代に、激しい反対派の弾圧のために虐殺行為が行われたことは、後になって知った。当時も今もそうだが、アフリカ諸国では民族がたくさんある関係で、何かあるたびに激しい虐殺が起こることが多い。最近のソマリアやスーダンあたりもそうらしい。我々には理解できない感情が働くのだろう。

この映画の主人公は、ラストでリンチに遭ってしまう。それはそれは激しい。胸に釣り針みたいなものを刺されて、つるし上げられるのである。日本人にはちょっと理解し難い。日本の場合は、せいぜい首をちょん切る、刀で腹を刺す、棒で殴るくらいだが、家畜を扱うのが日常の民族は、やることが肉屋風になってしまう。残虐であるのに変わりはないのだが・・。

主人公がなぜアフリカの小国に行くことになったか、アミンに魅せられたかは、この映画でうまく説明されていた。

でも肝心のアミンは、私にはちょっと迫力不足のように写った。暗殺されかかることなどで、部下をも疑うようになること、反対派に対抗するために次第に過激化していくところはうまく表現できていたが、その際の狂気、殺意、迫力の表現には欠けていたような気がする。それは、おそらく主演のウイッテカーの目力のためだろう。

彼を知ったのは、最初はスピーシーズの予知能力者役だった。あの時は変な目つきをした性格俳優として存在感があった。しかし、アミン役に最も必要なのは、ぎらついた目だと私は思う。演技力だけでカバーしきれない、目の力が必要だった。

イギリスの政府系機関が暗躍する様子などは、非常に解りやすかった。映画制作の上での重点の置き方は適切だったと言えるだろう。

考えてみれば、ソ連軍を混乱させるためにイスラム原理主義に力を与えてしまう、またはイランに対抗するためにイラクを援助して、そのために今度はイラクを攻撃しなくてはならなくなるというように、欧米の政策が現地の住民の弾圧に関わっているケースが多い。

介入すること自体が状況を悪化させるなら、やらないほうがいいのか?という逡巡が、最近の国際的軍事活動では目立つ。その結果、また虐殺の歯止めが効かないという悪循環。虐殺する側にとっては、外国の介入は主権侵犯に他ならないと訴える格好の材料であるし、介入に反発することで、かえって過激化させる傾向も間違いなくある。

国連が明文化した介入の規則を作れれば、このような悪循環、過激化は少なくなるのかも知れない。

 

2008年1月 8日

RISE(2006)

- 腰が痛くなりそう  -

とにかく迫力のある映像でした。監督のデヴィッド・ラシャベルの才能、踊り手の技術、体力を感じました。

撮影の効果の上げ方も自然で、見事でした。特に最後に青空をバックにスローモーションで踊る場面は、映画のポスターにも使われていましたが、筋肉の動きがくっきりと見えて迫力がありました。

タイトルも、ダンサーの夢を集約していて秀逸でした。子供に見せてもいいとは思いますが、果たして楽しめるかどうか解りません。若い人が観るのはオススメです。恋人と観るのも面白いと思います。テーマがいいですし、迫力がありますから。

登場人物達が繰り返し述べていますが、ゲットーのような街で育った黒人は将来に希望を持つことが非常に難しく、ギャングの一員になるか、ヤク中になるかしかないのが現実だといいます。ほとんど全員が同じようにそう分析していますから、私が想像するよりずっと事態は深刻なんでしょう。私ならたぶん軍隊にいるしかないと考えるかなと思います。比較的まともな道で、少なくとも多少の誇りを持てますから。誇りは必要です。

ダンスで注目されると誇りを持てると思います。しかも、ダンスは興奮と快感を与えてくれる効果があります。アフリカの原住民の踊りと、彼らのクランプダンスをオーバーラップさせるシーンがありましたが、非常に似ているのに驚きます。DNAのレベルで踊りの仕方が規定されているかのようです。

ただ、このダンスは、体には良くないように思います。入念にストレッチをしても故障しやすいのではないでしょうか。もし関節を痛めたら、ダンサーは表現方法を失ってしまいます。その後、果たしてどうするでしょうか?ギャングに逆戻りでしょうか?

また、このダンスは踊っている人には感覚が解るのでしょうが、観ているだけの人には踊りの美しさが伝わりにくいと思います。ヒップ・ホップまでなら美しいという表現もありえますが、このダンスでは凄い、激しい、熱いという表現はあっても、美しい、優雅なという表現は適当でないと思います。そのため、メジャーであり続けることは難しいと思います。

実際に住んでないし、人種も違いますので本当に理解は難しいのでしょうが、生活レベルが低い家庭で育った子供は、よほど特殊な才能がない限りは学問やスポーツなどで身を立てる夢を持つことは難しいだろうと思います。才能がないんだから仕方ないと言うこともできますが、才能を伸ばせないほど生活に追われるのが現実でしょう。程度の差はありますが、日本も似たような状況はあります。

今でも田舎では才能を充分に伸ばすことは難しい傾向はあります。都会で、精神的に安定した状況で才能を伸ばせる子供に比べればハンデが多少あります。部落、あるいは朝鮮系の町では、何らかの足かせがあります。ひどい場合は、本人が一流スポーツ選手並みの才能があっても、家族や友人のからみで暴力団員にならざるをえないこともありえます。黒人街では、それが極端なんでしょう。

黒人街を一気に活性化させ、誰もがその才能を伸ばせる妙案はないと思います。根本的な解決は難しいので、ダンスやクラウンの活動は、若者の現状を緩和するという意味で評価できます。

 

2007年12月10日

ラストコンサート(1976)

- なぜ惚れたのだあ~ -

主演 パメラ ビロレッジ

この作品は、子供といっしょでも恋人といっしょでも良い作品です。家族みんなで見ても、まず安心してみて良い映画だと思います。言わば、「奇をてらったところがない」、「古典的なテーマ」の、本当に「オーソドックスな手法による」、ラブストーリーだと思います。

若い娘がブルターニュ地方のどこかの病院を受診します。この時、ある男が彼女の父親と勘違いされて、彼女が白血病らしいと告知されます。この男は音楽家で、目下スランプというか目標を見失っています。彼女のほうは、なぜかこの男が気に入って、二人はいっしょに暮らしながら、男が仕事の情熱を取り戻していきますが、彼女の病気はどうなるのか?という物語です。

原作は日本の少女漫画じゃないでしょうか?と言いたいのですが、実はよく知りません。なぜ、この映画が日本とイタリヤの会社の共同制作なのか、パンフレットを買って読んだ記憶があるのですが、忘れてしまいました。舞台がル モン サン ミシェルのそばというのは、いかにも少女漫画的な匂いがプンプンです。

主演のパメラ ビロレッジは、今見てもきれいな女優さんです。対して、相手役はダサいと当時思いましたが、今見ても相変わらずダサい男です。なぜ、こんなに可愛い女性がダサい男に魅かれるのだ、なぜ私はこのような女性と知り合えないのだあ!と当時思いましたが、今ももてない状況が続いています。なぜなのだ~!

これが分らないから私はもてないような気がするのですが、やはり分りません。分らないまま、この男のような年齢になってしまいました。悲しいことです。観た当時は、「ケッ。こんな中年に誰が惚れるかよ。俺のような若者に惚れろよ。」と思ったものでしたが・・・。

この作品の画質は、今となっては懐かしい、当時の恋愛映画に共通の、全体に明るくモヤがかかったような色調です。音楽も、男と女のテーマを鼻歌にしただけのような曲ですが、良い曲です。服装も、さすがに2世代くらい古くなった感じがしますが、このテーマでこの演出なら、おそらく今の娘さんたちが見ても充分にうけると思います。でも、なぜかビデオ屋さんにこの作品はあまり置いてないようです。

いい作品なのに・・。

 

2007年10月 1日

ライアンを探せ!(2006)

- マダガスカル2? ニモ2?  -

この作品は、ライオンが動物園を抜け出して自然の動物と対決する話でしたが、少し前に「マダガスカル」も製作されていました。偶然の一致でしょうか?まさか、産業スパイが「ディズニーは今度ライオンが動物園を抜け出して自然と戦う映画を作るらしいぜ。」という情報をもらし、これに対抗するために某プロダクションが似たような作品を作るというような動きがあったのでしょうか?

ライアンの話は、「マダガスカル」より親子の愛情や子供の成長といった要素に重点が置かれ、動物同志の友情が主題ではなかったようでした。画面の細かさも若干違って、ライアンの方がよりディズニー的というか、細かい感情表現に気を使っていたように思いますが、それにしても似たような話です。

ファインディング・ニモともストーリーが似ています。最初は動物園、次は都会、そして船、アフリカと、旅が壮大になっていくところなどが、そっくりでした。

ライアン達が最後に戦う相手は水牛の群で、何か宗教がかった団体を作っています。その宗教の根拠、神の啓示がどのようになされたのかが笑える話ですが、何かのマンガで読んだような話でした。

仲間と協力して、救出、脱出する冒険物語、おかしなカルト集団で笑わせる話、親が子供の成長を心配する話、危機を乗り越えて理解が深まる話など、ディズニー路線通りのストーリー展開になっていました。我が家の子供達の評判を聞いてみましたが、マダガスカルたニモで興味をそがれたような様子で、何か似た話だったね~という感想でした。

カルト集団がダンスを踊ったりするのも似ていました。集団を作ると、かならずダンスをしなきゃならないとアメリカ人は考えているようです。マイケル・ジャクソンのスリラーの呪縛でしょうか? 並んで、隊列を組んで激しいダンスをするのは、規則と化しているようです。

何か、もうひと工夫しないと、印象に残ることはできません。親子の愛情を盛り上げるためには、敵役は本当に邪悪なキャラクターの、ハイエナか何かのほうが良かったかもしれません。カルト集団で笑わせながら、親子の危機が盛り上がるはずはないと思います。

カルト集団で笑いを取ることにこだわるなら、集団と別に黒幕としてハイエナを登場させても良かったかも知れません。、また、母親を登場させていたら泣けたかも知れません。助けようとする姿は、母親のほうが絵になります。普段は母親の尻にしかれてなさけない父ライオンが、戦って子ライオンの信頼を勝ち得る話なら盛り上がったでしょう。あちらでは父子家庭が増えているのでしょうか?

2007年1月26日

ライフ アクアティック

- 芸風が変わった? -

不思議な映画でした。退屈そうなボンヤリした表情のビル マーレーが初老の研究者役をやっていました。とぼけた詐欺師寸前の男で、莫大な借金をして海洋の研究をしていますが、成果が出ていないようです。いいかげんそうな男なので、研究をしているのかすら怪しい気がします。

共同研究者で、こちらはマトモに近い男がいましたが、あっさり死んでしまいます。残った博士は、見たところ知識もいい加減で、人徳もゼロ、本当に研究をしようと考えているのか、だまそうとしているのか分りません。

成果を上げて、資金を集めて儲かっている研究者もいて、大掛かりな施設を作っています。ところが、この設備を平気で盗んだりしています。

海賊に襲われてしまいますが、無茶な行動が幸いしたためか、なぜか開放されます。勇気があると言えば言えますが、見た感じはバカなために状況が分っていないだけのような気もしました。

スタッフ達と会話をしているのですが、会話のピントがずれていて、何が問題で、何をどう話していいのか分らないまま皆で深海に行くことになります。やめりゃいいのに。もともとの英語は聞いていても抽象的で理解できませんでしたが、日本語訳も難解で、もしかすると訳がうまくできないような会話だったのではないでしょうか?

深海では思いがけないほど美しい映像が見れました。

また、ラストで少年とビル マーレーが歩くシーンは、悪くない雰囲気でした。

この映画の会話は、最近ビル マーレーが主演した映画では共通の、無表情で話をするシーンが多くて、日本人には少々つかみにくい面白さだったような気がします。少なくとも爆笑することは難しいと思いました。ゴースト バスターズのころはテレビタレントのにおいがするドタバタ的な動作も多かったのですが、会話のくだらなさが面白いという芸風の場合は、会話が分らないと魅力も半減します。

2006年10月 9日

ラブ アクチュアリー

監督 リチャード カーティス 製作 ダイアナ妃の恋人のお父さん

愛の物語はいいですね。冒頭で作者が述べるように、空港の出迎えを見ていると幸せな気分が味わえます。残念ながら子供に見せるには良くない場面がありますが、さらっと見せてもそんなに悪くはないかも知れません。家族で見ても悪くないと思います。恋人となら素晴らしいでしょう。笑えるし、気難しくないし、適度に作り方がいいかげんで、ちょうど良い雰囲気の作品です。

ストーリーは9つ?の愛の物語が、お互いの登場人物がちょっとだけ関係し合いながら同時進行する話です。どの話も愛にあふれていて、幸せな気分にさせてもらえます。音楽も定番のものが使われてますので、安心して良い雰囲気にひたれます。細かいことを考えてケチをつけるべき映画ではないと思います。

でも細かくネチネチとケチをつけます。

最近人気のキーラ ナイトレイを撮ったビデオのシーンがありましたが、結婚式の花嫁を演じていませんでした。彼女の宣伝用のビデオを持ってきたのかと思いました。彼女のマネージャーが「これを使え!」と強く主張して売り込んだのかもしれません。

ヒュー グラントの首相がラストでキスしていたらカーテンが開いてしまう場面がありましたが、さすがに不自然でした。青春物のTVコメディなら許される定番のパターンでしたが、スターをそろえたちゃんとした作品ですから安易な演出は少し質を落とすと思います。特別に見れる席は、舞台奥の人が出入りする場所ではありえません。別な演出法があったと思います。他にも細かい難点がたくさんありました。演出の仕方がテレビ用だと思いました。

ネチネチとよくもまあ難癖をつけたものですが、お詫びがてら申し上げますと、この映画を見た後は例外なくと言って良いほど高い確率で幸せな気持ちになれますので、ぜひ見てください。

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