映画評

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カテゴリー「も」の4件の記事

2008年1月20日

もしも昨日が選べたら(2006)

- 手慣れた手腕を感じました -

始まった途端に結末が解りました。でも、この作品に限り悪いことではないと思います。陳腐なストーリーの映画は、安心して観れるという良い面もあります。ホームドラマを観ているような感覚で、お約束のギャグで笑い、ラストでは泣けました。

脚本家が「ブルース・オールマイティ」と同じで、そう言えば作品の雰囲気も同じで、夢のような力を手に入れた主人公がまき起こす冒険、トラブルをギャグを織り交ぜて映像化していました。こちらの作品のほうが特撮効果は練ってあったようで、肥満体になる時のメーキャップ、過去の場面を見るときのCG画像の処理は非常に進んでいました。スピルバーグ監督の作品と差がないくらいの高い完成度だったように感じました。

この作品は、でも大人向けでしょう。ぬいぐるみに犬が挑んでいる姿が頻繁にでていましたが、小さい子供への影響は「?」です。恋人と観るには、最高の作品かも知れません。ギャグが汚すぎないし、テンポ良く話が進みますから、ほとんどのカップルが退屈しないで楽しめると思います。

主人公のアダム・サンドラーがサタデー・ナイト・ライブ出身のためか、共演者が喜劇映画で頻繁に見かける人達でした。主人公の奥さんの友人役ジェニファー・クーリッジと社長秘書のスタイルの良い女の子は、「最愛絶叫計画」で共演していました。スタイルの良い女優はソフィー・モンクという娘ですが、目つきが厳しくて色っぽいけど喜劇的でネコのような雰囲気が、いかにもエッチな雰囲気を出しています。

アダム・サンドラーのギャグの時の力は素晴らしいものでした。ジム・キャリーのような顔芸はないかもしれませんが、総合的には彼よりも上かも知れません。何となくいい人じゃないかという雰囲気がにじみ出て、非常に魅力的でした。やや毒が少なめなのは、最近のコメディアンには珍しいキャラクターです。下手すると簡単に消えてしまう可能性もありますが・・・。

奥さん役は好感度の高い旬の女優を選んでありました。良いキャスティングでした。色っぽすぎても勇ましすぎてもダメで、好感を持ってもらわないといけない難しい役でしたが、うまく演じていました。

コメディアンが毒々しくなく、しかもラストでしんみりさせるのは、ちょうどチャップリン映画のパターンです。笑わせて親近感を充分持った観客は、コメディアンの不幸に心から同情します。あまりにも毒々しい俳優には難しいことです。将来、彼の主演で凄い傑作な悲劇~喜劇を作れそうな予感がします。

特殊メイクは、有名なリック・ベイカーが担当していましたが、太った時の肉のつけ方、肉質などは本当に見事でした。しかもメイキングビデオを見ていたら、必要に応じてデブの実写に顔だけ合成したりしていたそうで、恐れ入りました。主人公以外の人が止まった状態の映像も、実に自然でした。

SF大作ではないマイナー気味の映画、と言ったら失礼ですが、このような作品に、素晴らしいテクニックを導入して、見事な映像を作り出せることに感動します。技術者の底力があるから、できることでしょう。

 

 

2007年9月29日

モンスターズ・インク(2001)

- パート2はどこ?  -

この作品は非常によくできていました。公開当時は相当な評判になりましたが、残念ながら次々とアニメの新作が発表されるので、ディズニー・オン・アイス以外では、もうこの作品のキャラクターにお目にかかることは少なくなりました。ディズニーランドでは活躍しているかも知れません。

第二作が作られるのか?と思っていました。子供達は完全にその気で、「お父さん、モンスターズ・インク2は、どこ?」っていまだに聞いてきます。残念ですが、この企画は1回きりだったようです。でも、こじつければシリーズ化することもできるような気はします。

子供の叫び声をエネルギー源にしたモンスター達の社会の話で、人間社会、それに数々の映画のパロディを織り交ぜながら、迷い込んだ人間の女の子と怪物の心の交流、そして倫理を失った怪物と正義の怪物の戦いなどがユーモラスに描かれていました。

この映画はディズニーですから、家族と見ると最高です。恋人と見ても良い雰囲気が作れるように思います。そのうち古典になるかも知れません。

子供の頃、私も仲間と「オバケは何を食べているんだろうね?」「きっと俺たちの恐怖心だよ。」「きっと、ちびったお前のオシッコだよ。」「それは、お前だろうが!」などと話したような気がします。発想は誰でもしそうなものでしたが、会社組織を作って怪物がサラリーマンを演じると、人間社会の悲哀をパロディ化できて面白くなります。

正義 対 倫理を失った社員とういう対決、女の子を救うヒーロー物語、ジェットコースターのような倉庫内での戦いはアクション映画の要素でした。そして、各々の怪物のキャラクターで小さな笑いが取れますから、企画として最初から成功が見込めるものだったと思います。怪物達の表情の細かな表現が見事で、子供たちにも好評でした。

日本の映画制作者なら、きっとシリーズ化を最初から考えて、女の子に兄弟を作っておくか、悪役を会社の直属の上司にするなど、こざかしい工夫をしていたかも知れません。そして第2作では、ライバル会社に転進した悪役の上司が主人公に復讐する話になるでしょう。ディズニーは、欲が足りないかも知れません。

アニメの技術はCG化が進んで、怖ろしいほど美しい、精密な画像でした。アニメと言えるかどうか知りません。怪物の表情が実によく表現できていました。愛嬌を保ちながらバケモノを表現しないといけませんから、大変な作業が必要だと思います。スタッフは腰痛、肩こり、痔に悩まされたのではないでしょうか。

カメレオンみたいな怪物の映像を見ていて気がつきましたが、最近(2006年)の「ライアンを探せ!」に出てくるカメレオンの色使い、色調の変るスピードが全く同じでした。「ライアン~」の場合は怪物ではないので、もう少し遅くして自然な変化にしたほうが良くはなかったかと思いました。

モンスターズ・インクというタイトルは、なじみの少ないINC.という言葉を使っていますので、日本人には少し分りにくかったかも知れません。せっかくですから、「モンスターズ株式会社」「モンスター電力」としてもよかったのではないでしょうか。

 

2007年6月 8日

モーターサイクル ダイアリーズ

- 貧困が最大の病魔  -

チェ ゲバラの青春時代の旅行を描く物語でした。ゲバラと太っちょの友人がバイクで南米大陸を旅します。

途中何度も転倒し、ついにはバイクが完全に故障し、テントも飛ばされて病気にもなり、妻の浮気を怒った亭主に殺されそうになるなど、様々なエピソードが散りばめられています。ただし、その描き方はウケ狙いの派手な表現ではなく、淡々とユーモラスに描くやり方でした。ダンスのシーンはありましたが、流行の踊りではないので見て盛り上がるわけではなく、穏やかな気分になるくらいでした。そのような描き方に好感を持てました。

ゲバラは喘息持ちで、吸入器を持参しての旅行です。昔の吸入器らしきものが出てきましたが、仕組みがよく分らない代物でした。現在は薬がパウダーになったり、勢いの良い噴霧器のタイプが主流ですが、昔はそんな便利な器具も良い薬もなかったはずです。いったいどんな薬を使っていたのでしょうか?それに、喘息持ちの人が満足な薬がない時代に旅行するのは、恐ろしいことだったと想像します。

脚本も映像のセンスも素晴らしかったと思います。登場人物のキャラクターに無理がないため、リアルさを感じました。特にいっしょに旅をする太っちょの友人、船でいっしょになる売春婦、ハンセン病の施設のシスター長の言動、表情は本当に「いかにも」という感じでした。よく当直の時に教会関係の病院の婦長さんと話すことがありましたが、婦長がそのまんま映画に出て来たような印象でした。

残念ながら子供には全く受けないタイプの映画のように思います。ですが、思春期くらいになれば逆に結構面白く感じる子も多いかも知れません。恋人と見ても特別に面白い映画ではないと思いますが、見終わった後の印象は悪くないと思います。中には退屈さばかりを感じてしまう人もおられるでしょうが、少なくとも出来の悪い作品だと思う人はいいないのでは?

登場した俳優達は全く知らない人ばかりでしたが、エキストラはテレビのドキュメンタリーで出てくる労働者たちがそのまま出てきたかのようなリアルな人ばかりでした。無表情なところが、いかにも南米風でしたし、彼らの視点が自然でした。よほどうまく統制しないと、視線がカメラに向かってしまうと思います。あの視線は、国や人種に関係なく、貧困者の視線です。たぶん困惑、希望のなさ、精神的な疲れ、うつ状態、思考する内容の停滞を表しているのだと思います。貧困は最大の病魔です。

太っちょの友人は実に魅力的な人物でした。つまらないウソをついていたことをラストに明かしますが、わざわざ別れ際にあんなつまらないことで謝るなんて、いかにもいいヤツだと感じることができました。少なくとも南米の人はゲバラのその後の運命を知っているだけに、登場人物たちが話している以上の意味を感じることができますから、最高の分かれ方だったかも知れません。

共産主義のことは特別強調してはいなかったようですが、途中インディオの夫婦が共産主義者だと言う場面がありました。確かに当時の南米の状況なら、圧倒的な貧困が最大の問題であると考えるのが自然で、共産主義に傾倒するのも自然しょう。日本も少し前まではそうでしたし、今後は再び格差の是正がうまくいかなくなって似たような状況になるかもしれません。ワーキングプアの青年達のルポをした番組を見たことがありますが、その感想としては日本の場合は革命はないとしても、暴動くらいは起こってもおかしくないかも知れないと思いました。南米諸国は日本より状況が深刻なので、共産主義国家ではないにしても、今でも結構反米感情の強い国が多いようです。

ゲバラは日本にも来たことがあったはずです。キューバの葉巻か砂糖か何かを輸入してくれるように交渉しに来ていたと書いてあったような気がします。キューバの大臣をしている頃でしょう。その後、再びゲリラ戦に戻って死んだしまったようです。早死にしたために、カストロと違って伝説のヒーローになってしまった感があります。実際にゲバラが若い頃に旅行したのかは覚えていませんが、彼の伝記にも書いてあったような気がします。

私もバイクで旅をしたくなりました。後部座席にはカワイ子ちゃんがいるといいですが。ラストは、きっと私達が喧嘩別れする場面でしょう。トホホ。

2006年10月31日

モダン タイムズ

- ホントはドタバタ劇 -

この作品は1936年製作だそうですが、最近デジタル処理をされて画も音もかなり鮮明になってるようです。子供たちもゲラゲラ笑ってくれます。恋人と見ても、たぶん笑えると思います。現在のコメディアンのやるスラップスティックコメディのほとんどの原型が見られます。失業者チャーリーの歩き方を見ると、手塚治虫のアニメも相当影響を受けているように思います。ドリフの加藤茶も、吉本新喜劇の新しい役者達も似てます。もはや普遍的ですので、年代を問わず家族みんなで楽しめると思います。

話の冒頭で、チャーリーは珍しく失業してません。工場で単純作業をしてますが、あまりにスピードを要求されて、おかしくなってしまい、工場をメチャクチャにしたため病院に入れられます。退院したものの投獄されたりして再就職はままならぬ中で、ポーレット ゴダード演じる娘と知り合い、助け合いながら(ドジを踏みながら)生きていこうと頑張る(ドタバタする)物語です。

この作品の批評に「痛烈な機械文明批判」などと書かれていましたので、私は全編が工場の場面かと勘違いしていましたが、冒頭だけでした。特に娘と会ってからは二人で生きていこうと頑張る姿が完全に話の中心になっています。別の話をくっつけたような印象すら覚えました。

もしかすると本当にくっつけたのかもしれません。機械文明批判だけでは、さすがに1時間もたないと思います。観客も飽きるでしょう。したがって、退院から投獄までの話を接着剤にして、二つのアイディアをつなげたのではないでしょうか。この作品では、繰り返される投獄が話と話をつなぐ役目を果たして自然な形で展開しています。ドタバタの笑いの、ちょうど休憩になってて気がつきにくいですが。

ギャグのアイディアには驚きます。まず、工場でネジをひねってばかりでクセがついてしまって何でもひねってしまうのがおかしいですが、目隠しローラスケートは怖くておかしい!撮影中に何回か下に落ちているのではないでしょうか? 逃げ方ひとつ取っても、椅子を引っ張って追っ手を引っかけるなど、アイディアにあふれています。

チャップリンの伝記を読んだところ、青年時代まではひどい暮らしをしていたようで、落ちてた財布をネコババして暮らしたりしたと書いてありました。一歩間違えれば、病気持ちの貧乏役者で終わったかも知れません。大スターになれたのは、様々な理由があると思いますが、

①ボードビリアンとして見た目で人を笑わせることができた。②小柄であった。③たまたま扮した浮浪者のスタイルがシリーズものに必要なキャラクターとなったこと。④ちょうど大物監督が喜劇役者団を作った時期にアメリカにいたこと、⑤人気がある時点で会社が長編ドラマ化という冒険にOKを出してくれたこと。などなどでしょうか。いずれが欠けても普遍的なスターにはなれなかったかも知れません。

チャップリンは4~5回結婚したそうですが、皆から愛され尊敬されています。私も2~3回はしたいのですが、甲斐性がなくてできません。残念です。

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