映画評

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カテゴリー「み」の29件の記事

2017年12月22日

蜜蜂と遠雷(2016)

- 恩田陸・幻冬舎 -

 

ピアノコンクールの入賞を目指す男女の、互いの関わり合いを描いた小説。名演奏家の弟子だという謎の少年が参加してきたことで、優勝レースは混沌としてくる・・・・2016年下半期の直木賞と本屋大賞を取った作品。

 

この作品が書かれた頃は、ピアノが文学界のテーマとして流行していたのだろうか?「羊と鋼の森」も、確か本屋大賞に入選していたはず。文学で音楽をどう表現するかが、作家たちの間でテーマになったのかもしれない。互いに触発されて、いかに自分なりの文章で表現できるか、作家ならではの意欲が作用して、試してみたくなったのだろうか?

 

この作品はコンクールの勝負、そして恋愛感情、道を究めようとする試練やライバル意識、緊張感、そして協力してもらえる人達との関わり、そして異能の持ち主が与えた影響など、物語を面白くしそうな要素がたくさん詰め込まれていて、贅沢なシチュエーションになっていると感心した。

 

その一方で、話が出来過ぎている点も否めないのでは?と思う。コンクールの有力な出場者が幼少時に仲の良い友人である、しかしコンクールの日まで認識していなかったなど、明らかに出来過ぎだろう。ニュースや新聞、業界雑誌などで事前に気づいていないとおかしい。異能の持ち主が、ヒロインの周りに出没する偶然も、少し浅はかな設定のような気がした。韓流ドラマなら許されるだろうけど、小説には安易な設定だったろう。それによって作品の重厚感が損なわれたように感じる。

 

でも逆に言うと、テレビドラマの原作小説としては最高かもしれない。次々と見せ場の演奏が奏でられ、これが最高と思ったら次の演奏も素晴らしい、また次も個性的で評価が悩ましい・・・そんな繰り返しは、連続ドラマでは盛り上がりにつながる。次回をお楽しみに・・・となる仕掛けである。単発の映画でも、二転三転の勝負になって面白くできるかも知れない。もともと映画化、ドラマ化のための設定なのかも知れない。ドラマ化されると原作も売れるから、その点は無視できない。

 

作品の成功は、演奏の表現がカギだったと思う。文章で音や演奏をいかに表現するか?劇場主には想像もできない。演奏を聴いて風景がイメージされる・・・そんな演奏もあるかもしれないが、分からない。劇場主はCDやラジオでしかピアノ曲を聞いたことがないので、本当のコンサートでの感動を知らない。音響の効果は大きいから、本物を聞いたら涙にむせぶくらい感動できるのかもしれない。それを表現した文章を読めた可能性はある。でも分からないので、良い文章なのかも評価できない。

 

ピアノの位置を少し変えるくらいで、本当に何かが大きく変わるものだろうか?そんなに繊細なものなのなら、ホール建設の時には何かの仕掛けが必要だろうが、実際の演奏家、建築家や音響技術者でないと分からない。劇場主の感覚では、演奏している本人が観客席での音響を把握するのは難しいような気がする。音の拡がりは、演者と観客では方向性が違うはずだ。

実際に席に座り、周囲に人間がいて初めて音が分かるのではなかろうか?劇場の構造は、千差万別のはず。いかに演奏が上手くても、席で聞いている音は直接認識できないはず。そこを可能だと書いたら、劇場主は嘘くさく感じる。本当にそんなことが可能で、よく知られた事実なら話は別だが・・・

ドラマに向くだけの小説なのか、あるいは音楽を大胆に文章で表現した傑作なのか、そこは音楽家や音響技術者だけが分かる領域なのではないかと思う。よって、劇場主にはその判定が難しい。

 

 

2017年10月17日

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること(2017)

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- 河合雅司・著 ・講談社現代新書 -

人口減少問題を扱った本。劇場主は同問題について長いこと考えすぎ、脳味噌の回路がショートして思考不能状態に陥り、もはや諦めていた。いちばん気にしていたのは30年以上前だから、悩む時期を間違えていたようだ。この問題を放置するに近い形で、枝葉の問題に奔走している世論の大勢が腹立たしく、また情けなくも思えて、常時不安な気分を感じざるを得ないわけだから、精神衛生上良くなかった。 

人口問題に目途が立たないまま、小選挙区制を導入?郵政民営化?消費税をいじる?金融緩和に景気対策?・・・きっと間違って間違って、間違いまくって予算を無駄にしたに違いない。

この十年くらいは保育所整備を求める声が高まっていたが、それで問題が解決するかのような論理に呆れる。保育所は確かに足りないだろうが、整備は問題の本質からは大きく外れた、末節の課題である。あの声は、どんな風にして盛り上がったのだろう?建設業者や政治家の利害が一致したのかと疑ってしまう。分かりやすいから政策にしやすく、業者に利益を生むから選挙に有利、それだけという仕組みだろうか。

誰もが感じることだろうが、国家のことより自分の収入、差し迫った保育園建設などのことを考えた連中のほうが、ずっと良い人生を歩める。皆、余裕がないし、遠い将来のことはよく理解できない。誰かが良い事を考えても、人は身の回りの切実な事しか気にしないから、確実に無視される。その現実を思い知った。予言者は不当に評価され、損するばかり。ヨハネの時代からそうだった。

人口減少に対処するのは、本当は30~40年前が良かったのだろうが、研究者でも政治家でもない個人が、具体的に何かできる問題ではない。だから、焦ったり怒ったりせず、もっと事態が進み、緊迫し、皆が意味を分かるのを待つべきだった。義憤にかられてしまって、それでは遅いと焦ってはいけない。周囲の人に腹を立ててもいけない。時期は大事。そこを反省する。

個人でできることは、なるべく多くの子供を作ることくらいだ。でも、そう簡単にはいかない。家内は出産育児を非常に嫌がっていたから、なだめすかし、拝み倒してやっと生んでもらった。比較的条件が良かった我が家でもそんな具合だったから、通常なら夫婦の意見が合わなければ、もう仕方ないさと諦めるしかないだろう。

子の世話の負担は大きい。子供達が小さい頃、劇場主は掃除、洗濯、買い物、遊びなど、フルに協力し・・・・協力と言うよりむしろ劇場主が中心になって切り抜けたのだが、忙しい人間では限界もあるだろう。昔のように祖父母が面倒を見てくれる家庭は少ないから、たくさん子供を作るのは難しい。

収入も、おそらく不足している。自分が派遣社員だったら、家庭を持つ気になれたかどうか分からない。年収500万を軽く超えたら、複数の子供を作ろうかとも考えられるが、それ以下だと、かなりの無理を覚悟しないといけない。特に学費の問題は大きい。

そこで大学までの学費を無料化しようという意見がある。職を得るのに学歴は必要、格差是正につながるなど理屈は立派だが、単純すぎる考え方で即効性もなく、効果の実証もできていない。選挙目的の大盤振る舞いの公約としか思えない。全員が高学歴だと、結局は大学間の格差が大きくなるだけだ。よって有効性には乏しいし、無駄遣いに終わると予測すべきだ。この種の安易な考え方が、問題の是正を妨げてきたと思う。たとえば、大学が倍に増えたら子供が増えるか?普通に考えるとおかしいだろう。

人口減少を解決することは難しい。解決策のひとつは、やはり金で釣ることだと思う。著者も劇場主と同じ考えのようだ。3人目の子供に1000万提供することは、おそらく効率から考えて一番良い。問題も多いだろうが、生む能力と意志がある夫婦は、きっと答えてくれる。平等さの観点では問題があり、子を簡単に生めない夫婦に不平等を強いるが、効果が出ないと話にならない。

このような意見は過激と思われてきた。財源の問題もあるので反対されても仕方ない。だが反対すれば、問題を悪化させるだけだ。その他の政策では、効果を期待できない。学費を無料化しても保育所を整備しても、それだけでは意味がない。著者の意見は必須の方法で反対してはいけない、反対は全てをぶちこわす・・・この意見の、そういった意味を理解していただいて、実行に移して欲しい。

もう既に時期を逸しているのだから、方針の基礎となるべき「金釣り作戦」は、早急に開始したほうが良い。

 

 

 

 

 

2017年9月20日

Mr & Mrs スパイ(2016)

Keeping_up_with_the_joneses

- 20C.Fox -

新しいスター、ガル・ガドット嬢が出演している作品。相手役は、ドラマの「マッドメン」に出ている俳優だそうだが、宣伝でしか見ていないので、よく知らない。

話の主人公の俳優ザック・ガリフィアナキスが笑い担当。ガドット嬢達はハードな路線。ガリフィアナキスが「ハングオーバー」シリーズで登場した時は、素人として扱われていたように記憶している。その後、続編が作られていくうちに有名になり、今はブラッドレイ・クーパーと彼が生き残っているようだ。

スパイ夫婦が主演にならず、ドジな夫婦が主演したことは、作品を面白くするうえで好都合。ひとつのパターンでもある。今作品も、見るからにドジそうなガリフィアナキスが失敗するから、役割を充分に果たしていた。全体の流れも定番に沿って、自然だった。

そのせいか、画期的なアクションや、予想外の展開による驚きは感じなかった。大ヒットを狙える企画ではなかったということだろうか?興業的にも失敗だったらしい。何か画期的なウリが欲しい気はする。典型的な流れだけでは退屈するから、何か驚きが欲しかった。

ヒロインは庶民的な感じのする女優、アイラ・フィッシャー。「グランド・イリュージョン」では、なぜか直ぐにキャストから外れてしまったが、彼女はキャラクター的に、派手なマジシャンの雰囲気が感じられなかったから、当然のようにも思った。でも、この作品のヒロインの個性には完全に合致していた。

さらに面白くするためには、彼女の個性をいじって酷い悪妻か、あるいは異常人格と言えるほどの詮索好きだと良かっただろう。世間話のネタのために、平気で不法侵入するクセがあるなど、きわどい個性が欲しい。スパイ夫婦を何度も困らせるほどの個性があれば、作品の魅力は増したと思う。主人公夫婦が、常習的に小さな悪事を働くような人間でも良かったと思う。

ガドット嬢は、「ワイルド・スピード」シリーズで有名になった。完全なモデル体型の女優だが体力はあるそうで、本物の兵士だったそうだから、アクション映画には最適だ。今後もしばらくは、おそらく容姿が保つかぎり、登場し続けるだろう。

顔だけ見ると、美人と言うよりたくましい印象を受ける。演技力は、よく分からない。はたして彼女がロマンス映画で恋を演じる事ができるのだろうか?アクション映画専門とすると、人気は数年止まりなのか?

世界を見渡すと、各地で若い女性兵士が訓練を受けているはずだから、その中で容姿に自信のある人達が、自分もガドット嬢に続いてスターダムにのし上がってみせるわと思うのではないか?元イスラム戦士の少女から転身する娘だって、いるかも知れない。それも個性になるだろう。

 

2017年5月 8日

ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影 <シャドウズ> (2016)

-Out of the Shadows, Paramount Nickelodeon etc-

前作で逮捕した犯罪者集団のボスが脱走した。ボスは謎の宇宙人と結託し、地球を征服する作戦が始まる・・・・

・・・・DVDで鑑賞。このシリーズを劇場で観ようとは思えない。小学生くらいの子供がいて、他に適当な映画がない、時間が合わない、そんな条件がある時くらいしか観ないだろうと思う。

でも、出来映えに問題があるわけではない。アクションのレベル、CG技術に関しては、第一級の凄さがあると思う。愉快なアクション映画として、完成度は高い。お子様映画というだけのことだ。

今回は敵の側に新たなキャラクターが登場していた。イノシシやサイの姿をした悪役は、ユーモアたっぷりで存在感があった。妙な宇宙人も、普通に考えると弱そうなんだが、独特の気味悪さがあって、なかなか面白い。敵としての魅力は充分だったろう。

タートル達の冒険も、空中を飛んで別な飛行機に移るなど、派手で迫力があった。昔なら、あの画像を見て感動してしまったかも知れない。でも今は、他にも凄い映像を見せてくれる映画は多いので、特別に凄いと感じなかった。

愉快なアクションという路線に関しては、このシリーズは結構よい線いっていると思う。マヌケなヒーローが活躍する「デッド・プール」なども、路線としては同じと思うが、タートルズ達は各々が個性豊かで、ラッパー調の会話も面白く、他に代えがたい魅力がある。

ただし、劇場主だけだろうか?既に、このシリーズの趣向には慣れてしまっており、次の作品を是非みたいとは感じなくなっている。タートル達のアクションはそりゃあ素晴らしかろうし、彼らの会話はひねりが効いてておかしいことも分かっている。マヌケな失敗も笑わせてくれるし、最後はきっと敵をへこますだろう。

でも、たぶん感動することはない。感動するのは、本当のヒーローを感じさせる暗さ、自己犠牲、悲しい運命、別れ・・・そんな要素が大きい時に多い。あるいは、本当に画期的な展開、もしくは敵が素晴らしく魅力的だった場合もそうだ。このシリーズには、そこらの要素が欠けていると思う。

だから、このシリーズの映画化の企画は、既に曲がり角に立っているはず。

 

 

2017年2月19日

ミュータント・タートルズ(2014)

Mutantturtles


- 安心して鑑賞 -

ある実験でカメ達が高い知能と運動能力を得た。彼らは地下に潜んで、ひそかに犯罪者組織と戦っていたのだったあ・・・・

・・・・有名アニメの実写化作品。実写と言ってもCG技術をたっぷり使ったCG映画に近い。トランスフォーマー・シリーズのスタッフが再結集した感じで、ヒロインもその一人だった。

ストーリーは適当に作られたような印象を受けた。元のコミックではどんな流れだったのだろうか?この作品のウリは、忍者達の会話、そして派手なアクションだと思う。セリフはラッパー達のそれを参考にしていたのだろう、よくは知らなかったが、声優がおそらくラッパーかコメディアンだったようだ。

格闘のシーンは出来が良かったと思う。動きがダイナミックで、しかも本物のカンフー映画のように美しい。ラスト近くのビルの屋上でのシーンなどは、建物の立体感、高さの表現なども素晴らしかった。

子供と安心して見ていられる作品と思う。お色気女優のミーガン・フォックス嬢がヒロインだが、それほど色気は出していない。彼女もさすがに年増アイドルのような立場になってきたので、今回は立場が苦しい勤労者として同情を買う方針だったようだ。お色気封印の路線が良かったかどうかは分からない。

片思いらしい相手役の人間は、今ひとつ目立たなかった。とことんドジで善良な人間というキャラクターに徹してはいなかったようだ。彼はもっと目立ってよかったのではなかろうか?情けなさで笑いが取れる役柄だったはず。

そもそもニンジャで、しかもカメ、そして若々しい未熟者という設定に感心する。人間の忍者だと、笑いの要素は減ってしまう。カメのアイディアがどこから出てきたのか分からないが、素晴らしいアイディアだと思う。だから制作者は代っても、長く作り続けられているのだろう。

この作品以外にも、アニメ版などでは様々なキャラクターが出ているらしい。既に続編ができているそうだが、もっとシリーズ化されるなら、そんなキャラクターが次々登場してくるに違いない。制作のスタイルは決まっているだろう。どんなキャラクターでも、得意のCG技術で見事に描けるに違いない。

2017年2月 2日

ミラクル・ニール(2015)

Absolutly_anything

- 快作 -

平凡な教師ニールは、宇宙人によって地球人のテスト対象として選ばれ、全能の力を得る。彼は、その力を上手く生かせるのだろうか?・・・・

・・・DVDで鑑賞。快作と思った。監督や原案は、モンティ・パイソン・グループのテリー・ジョーンズという方らしい。作品中に展開されるギャグ的な部分は、どれも何度か観たようなアイディアだが、描き方やストーリー展開が面白い作品だった。

おおがかりなSF大作ではない。その点は、観る側にとっては気楽に鑑賞できるという良い面もある。スター・ウォーズ最新作となると、こちら側も時間を確保しなきゃ、用事を済ませておこうと、結構準備が必要になる。お気楽作品も便利である。

主人公は、人気の高いサイモン・ペグで、ヒロインはなぜかケイト・ベッキンセール。でも、両者とも上手く演じていたので好感を持った。ただ、彼らのキャラクターが充分に生かせていたかどうかは分からない。他の俳優でも構わなかったかも知れない。そうなると、この作品の人物像の表現には何か欠けるものがあったかも知れないと言える。「はまり役だねえ」と感じないなら、たぶん何かが問題なのだ。

ラストがすぐ読めてしまった。他に話を終わらせる展開は考えにくいから、当然だろう。大多数の人がハラハラしてくれないと、映画は印象が薄いままに終わる。したがって、宇宙人達のキャラクターや、彼らが評価する内容を少し変えるべきだったかも知れないと思う。

主人公が必死になることも、作品の盛り上がりのためには必要ではなかったか?観客が同情し、共感するためには、敵役が非常に陰険で、ずる賢く、強敵であることが必要。その点を考えると、能力をいったん恋敵に奪われてしまうことが望ましかったのではないかと思う。「能力を敵役に移す」と主人公に言わせれば良いのだから。

 

 

2016年12月 7日

ミスター・ノーボディ(1973)

My_name_is_nobody


- 引退 -

老境にさしかかったガンマンは、引退と移住を計画中。しかし、彼に付きまとい、盗賊団との対決をそそのかす変な若者が登場。彼は困惑する・・・

・・・ユーモアたっぷりの破天覧な若者が活躍する西部劇。制作の中心はセルジオ・レオーネ監督らしいが、従来のどぎつい復讐劇とは全く違った作風。ギャグのシーンが多く、B級映画のふざけっぷりが目立つ。

そのふざけた中で、従来同様の立場をとるのが、もう一人の主役と言える老ガンマンで、演じていたヘンリー・フォンダは、途中ほとんど笑うシーンがなく、ニヒルに演じきっていた。皆がコメディアンだとかえって面白くない。ニヒルさも必要。

そういえばヘンリー・フォンダは、およそ荒くれ者の体格をしていないが、演じた役柄はタフネスか理論派ばかり。その中でも、この老ガンマン役はなかなか恰好いい。颯爽としていない所が良い。ハリウッド製の映画でジョン・ウェインがやっていたように、去り行く者の哀愁が感じられる。

敵の一派で、鉱山を管理する社長らしき人物も、従来の映画と同じ演じ方。クールなワルだった。その他の、やられる側の町のガンマン達は完全にコメディアンの役割。ウエスタン映画も、同じ路線ばかりでは飽きられてしまうから、コメディに路線を振ったのだろう。香港映画のようなアクションシーンは、結構面白く感じた。ただし、こんな路線もやはり飽きられてしまうのだろうけど。

敵の集団をダイナマイトで吹っ飛ばすシーンは、かなりの危険を冒している。死人が出ていても不思議じゃないくらいの大きな爆発が繰り返され、迫力のある美しいシーンになっていた。芸術的なシーン、叙情性、ギャグ、非現実的なガンアクションなど、雑多な内容が詰め込まれた作品。

この作品は、おそらく当時の子供にウケが良かった気がする。ギャグのアクションシーンが多いからだ。大人の恋人同士で今後鑑賞する場合、この作品に満足できるかは分からないが、ある程度は笑えるのでは?家族で鑑賞するのも悪くはないと思う。大爆笑、大満足とはいかないだろうけど。

老ガンマンがどのように引退するか、そこがポイントだった。その点に関しては非常に真面目に扱っていたようで、それで後味の良い作品になっている。引退は叙情的な感情を生むからだろう。ラストの朗読の手紙は、良い文章だった。

劇場主は、自分の引退も考えないといけない年齢になってきた。今後は頭の回転がどんどん落ちてくるはずなので、失敗が多くなって自然と仕事が減ってくるのかも知れない。体力的にも、忙しい日は今でさえ苦労しているくらいだから、10年後は辛いだろう。

劇場主に、年金の連絡が最近届いた。通知葉書は、どうも理解が難しい。葉書だけでは分からないように記載されているから、デザインとしてはレベルが低いと思う。意図的に難しく書いてあるのかと疑う。こちらの理解力の問題かも知れないが・・・。読み取れた範囲で解釈すれば、今後頑張って働いても、年間で200万程度にしかならないようだ。自分は高給取りのほうだと思っていたが、勘違いだった。

昔と違って、今後の年金は凄く少ない。最初からずっと公務員で出世できた人間でも、昔のような額は出ない仕組みになっている。今はまだ豊かな年金額の人が多いけれど、今後は老人ホームの入居費が出せない人が増えるはずだ。そうなると、施設の経営は苦しくなるばかりと思える。

劇場主の場合は住居があるので、当面は生きられるとしても、生活は非常に厳しくなるだろう。今から貯金を頑張らないと、楽しみのない生活になりそうだ。あと二十年は働かざるを得ない、そう考えると、なんだか気が重くなってしまう。今でも体力の低下を自覚してるのに・・・

名誉ある有名なガンマンでない一般人である自分の場合は、引退に際してどんな感情が生まれるだろうか?名誉どころじゃなく、老後の金の心配ばかりだと悲しい。あるいは女房が金を要求して来て、酷い目に遭っているかも知れない。彼女は思いやりに欠けているから、どんな酷い言動も簡単にやること確実。すんなりと引退できれば、それは幸せなことだろう。

 

2016年7月31日

ミケランジェロ・プロジェクト(2014)

Columbia

- 狙いは・・・ -

第二次大戦中、ナチスが強奪した美術品を保護し、持ち主に返す作戦があった。作戦に参加した隊員の物語。実話が元になっているそうだ。DVDで鑑賞。

この作品の狙いがよく分からなかった。大ヒットを期待して制作したのだろうか?もし大ヒットを予想するなら、何か圧倒的な魅力が必要と思う。魅力的な主人公のキャラクターか、あるいは涙を誘う大悲劇か、圧倒的なスターの魅力か、画期的な映像か。確かにスターは出ていたが、役割としては魅力的だったかどうか?

盛り上げる手法に問題があったように思う。仲間が殺され、彼が命を賭けて守ろうとしたマリア像の行方が重要になる話は良かったので、そこをもっと協調するほうが良かったと思う。映画の冒頭からマリア像を写し、セリフでも繰り返し像の重要性を訴え、仲間が殺される時は実に無残に表現したほうが良かった。演出が上手かったと思えない。

この作品は娯楽作品としての方向性は間違っていなかったように感じる。盛り上げのために、過剰な悲劇、残忍さを強調しておらず、子供でも鑑賞できそうな表現に徹していたから。適度にユーモラスな場面もある。退屈な作品とは感じない。ただ、ウリになる魅力も不足しているように思う。

「オーシャンズ・イレブン」の場合は、特殊な能力の仲間達が、各々の力を生かして作戦を成功させる話が元になっていた。ジョージ・クルーニーの狙いは、それと同じ路線だったのではないか?でも、この作品では各自の能力が生きていないように感じる。それでは話として面白みがない。

面白みを出すための手のひとつは、好敵手を作ること。この作品には、美術品を集めてドイツ本国に送った将校がいたから、彼が憎らしい敵となると良かった。でも、比較的あっさりと見つかってしまい、盛り上げようがなかったと思う。仲間を殺した将校も、手強い逃げ方はしていなかった。

そもそも、こんな作戦が考えられた理由は、おそらく米国のユダヤ人達からの依頼が一因ではないかと想像する。米国に逃れていた欧州出身者達は、本国に残した美術品をナチスに奪われ、奪還して欲しいと強く願っていたはず。直接政府に働きかけていたのではないか?

学者が中心になって運動が起こったようなストーリーだったが、本当かどうかは分からない。支援した人達のほうが中心で、画面では隠れていただけでは?

なんとなく感じるのだが、昨今では第二次大戦を舞台にした映画は、流行らない傾向があるようだ。若者の興味を引く時代ではなくなっているからかも知れない。戦後の体制・・・米国中心の勝者から、欧州で大きく力を回復したドイツ、経済力が増した中国、徐々に発展しつつある南~東南アジアなど、パワーが移動しつつあるからかも知れない。

要するに飽きて、興味が薄れてしまったのか?米国がドイツを懲らしめても、だから今更どうした?それよりイギリスとEUの関係や難民問題のほうが大事だよ、といった雰囲気かも。 

 

 

2015年12月24日

三つ数えろ(1946)

Warner

- 主人公と女のみ -

私立探偵マーロウは、脅迫と失踪に関して捜査を依頼される。美しい姉妹、本屋、ギャングらが何かを隠していると考えたマーロウだったが、ワナにはまってしまう・・・・

・・・・DVDで鑑賞。`三つ数えろ’という邦題のセンスが素晴らしい。

オリエント急行殺人事件を久しぶりに鑑賞したら、ローレン・バコールが出演していて、そう言えば彼女の映画を観ていなかったことに気がつき、この作品に思い当たったという次第。彼女は悪女役に最適だが、好感の持てる悪女だった。昨今の悪女役ナンバーワンの菜々緒嬢は、バコールよりワルで、怖さが凄い。細身で端正な顔の悪役は、なんとなく共感を得やすいのだろうか?

この作品は44年頃には出来上がっていたそうだが、大戦の関係で公開が遅れ、撮り直しなどを経て46年に公開されたと解説されていた。でも、手直しの後も非常に効果的な表現に変わっていたのかは分からなかった。ストーリーが難解だった。

おそらく、前知識として原作の小説を読んでいれば話の流れが直ぐ分かったかも知れないのだが、前半部で登場人物の名前をうわの空で聞いていた劇場主は、セリフで誰のことを話しているのか分からなくて頭が混乱したまま、理解に時間がかかってしまった。ひょっとすると作り方次第で、もうちょっと分かりやすいストーリーにできたようにも思った。

原作小説のストーリーをいじることは難しいので、映画化の際に、映画でないとできないような解説めいたテロップ、台詞で復習させるような表現が、もしできていたらどうだったろうかと、ちょっと思った。邦訳テロップの場合に、「運転手の誰それ」「本屋の誰々」「店員の誰々」と言ってもらえると覚えられる。

映画独特の表現方法はたくさんある。人物が怪しい行動をとるシーンを演出で強調すれば、主人公が感づいていない段階で観客は「あいつが犯人だ!」と気づき、主人公の行動にやきもきする効果が出る。そうすると、流れを理解しやすいという効果もある。複雑なストーリーでは、そんな手法も有効ではないか?本とは違った解説が可能だ。

この作品には無理が多々ある。主人公らが待ち合わせに先に来て隠れていることを知らない部下の連中は、家から最初に出る人間を殺すことはできない。必ず自分らの親分を殺すことになるはずだから、設定がおかしい。原作でもそうなっていたのだろうか?運転手や本屋の殺され方も曖昧な点が多く、真相が分からないままのように思う。

おそらく、現代の子供達がこの作品を観ても、印象は似ているのでは?なんだかよく分からない印象のまま終わると思う。それに、この作品は恋人と観るのに最適な雰囲気とも思えない。とことんスリルがあるとは言えないし、恋が盛り上がって良い結果が待っていたとも言えない。

でもアイディアは素晴らしいと感じた。黒幕がなかなか分からない展開。姉妹の役割や、秘密が分かりそうで分からないことなど、謎を解くために興味が維持される作り方は良かった。

後年の「動く標的」「チャイナタウン」「LAコンフィデンシャル」などは、ずっと洗練された作品だった。不可解な事件の謎解きの部分は似ていても、敵が何をどうやったのかという細かい設定に無理がないように、周到な検討をやったかどうかが違う。そして、後になるほど残虐なシーンが多いような気もした。

この作品の場合は、主人公と女達が格好良く収まるシーンを撮影するほうが大事で、細かい点は後でつじつまを合わせりゃいいやといった適当なノリを感じる。当時の観客の興味を考えると、それで正解だったのかも。

平成27年12月22日に、新国立競技場のプランが決まったらしい。決定に至る経緯がよく分からなかったが、ABふたつの案の選択をどこかの会議で決めて、政府も了承した。大成建設が中心となったグループが担当するのは、過去の流れから有利だったのだろう。既定路線があったが、そこをカモフラージュしたように見える。清水建設側にも、おそらく仕事は回ってくるのでは?

時間の制限があるので、今回は全く新しいグループが参入することは避けようと、おそらく役人も政治家も結束していたのだろう。今後は、路線が決まった以上、追加で予算をどれだけ取るかが重要になってくると思う。東京都も3割くらい負担するらしいので、国が独断で追加工事をするのは難しいだろうが、都との談合めいた交渉でなんとでもできるように思う。

大きなことをやる場合、既定路線を作って流れの中で反論が現実的でないような雰囲気にしないといけない。流れができれば、仕事は異常に早く進む。欲に目がくらめば、突貫工事が可能だからだ。1500億円というと気が遠くなるような金額だが、おそらく誰も案に反対することができない。責任を問われることもないだろう。

2015年12月21日

ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション(2015)

Paramountetc

- 第一級 -

スパイ組織IMFはCIAから敵視され、活動停止処分となる。しかし、その間にも謎の組織が、各国でテロ行為を進行させていた。メンバーはCIAに追われつつ、独自の行動を始める・・・・

・・・・DVDで鑑賞。冒頭で輸送機にトム・クルーズが実際にへばりつくシーンが、この作品のメインだったと思う。最初に度肝を抜くアクションシーンを持ってくるのは、後が尻つぼみにならないか心配じゃなかったろうかと考えたが、この作品では他にも様々なアクションシーンがあったので、杞憂だったようだ。

シリーズ第一作はデ・パルマ監督スタイルで、サスペンス映画の王道を行くような緊迫感が特徴だったが、その後はアクションが売りになっていて、これは観客の支持の動向から考えての選択だと思うが、今のところ成功していると思う。信じられないような高度のアクションを見れる。

トム・クルーズには本当に感心する。体をはって危険きわまりないアクションをこなし、飽きが来ないように毎回違ったものを作り上げることに成功している。おそらく複数の優秀なアクション部門の協力を得ているのだろう。元々肉体派じゃないのに、キン肉マン俳優達も敵わない活躍を続けている。

今回はバイクでの追撃シーンが素晴らしかった。スピード感の表現が上手い。スタントマン達が念入りに計算して、車の間をバイクがすり抜けて行けるように工夫していたに違いない。事前に小石などを入念に除去し、バイクが転倒しないようにもやっていたはず。おそらく遅めのスピードで撮影して少し早回しで再生したのだろうが、迫力が出ていた。

水冷型コンピューター室内部の作業も面白かった。邪魔が入ったり、協力を受けたり、展開が面白くなるようによく考えてあった。

そんな工夫が随所にあるので、この作品は家族皆が楽しめると思う。第一級のアクション映画だ。小さな子供にまずそうに思えるシーンは少ない。冒頭で若い女性が銃殺されるシーンがあったが、血は出ていなかったようだ。あまり無残な死に方は写していない。

ボンドガール的な女スパイ役は、イギリスの女優らしい。クールそうな美人で、色気に偏りすぎてないので適役だった。敵役の冷酷そうな俳優も非常に感じが出ていた。無駄にマッチョでない点が良かった。007シリーズよりも、キャスティングに優れていると思う。

中国系、香港系らしき会社が制作に関与していたようだ。資金面での信頼があるせいだろう。このシリーズは必ずヒットすると考えてくれているのだろう。実際にも相当ヒットしたらしい。

ストーリーのために無理したと感じる設定はいくつかあった。冒頭で飛び乗った輸送機で、後のドアが開いていたら、真っ先に人間が落ちそうに思う。風の具合などに不自然さが感じられた。録音を聞く段階で敵の工作が既に仕込んであるというのは意表をついたが、IMFの組織の特性を考えると、良いアイディアではないかも知れない。

細かい設定の面でも観客が疑問を抱かないようにできれば、作品のレベルはもっと上がると思う。

 

 

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