映画評

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カテゴリー「は」の104件の記事

2018年9月24日

バース・オブ・ネイション(2016)

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- Fox -                      


ネイト・パーカーという俳優が主演、監督、脚本、製作の一部を兼ねて作った作品。日本では劇場公開されず、映画祭でのみの上映だったそうだ。マイナー路線の作品だから仕方ない。作品はナット・ターナーという黒人奴隷にして宗教的指導者、反乱指導者を描いている。     

 

今日という時代を考えると、この作品の主題には特に大きな意味があると思う。トランプ政権の誕生で、米国は人種差別の勢いが戻った印象がある。もともと酷いものはあったのだろうが、差別用語が糾弾されなくなり、発言者の責任が追及されずに終わることも増えた印象だ。最高権力者が明らかに人種差別主義者だと思われるから、末端にもその影響が出てしまうのだろうか?       

 

この作品は国の独立とは関係ないので、古の映画「国民の創生」と同じタイトルを付けたのは、古い観念への対決姿勢を示したためだろう。黒人たちの反乱こそ、新しい国家の形を示したものだという訴えも兼ねていると思う。日本と韓国との対立も根が深いが、米国の人種差別は、その歴史的規模が違う。それでも国家としてまとまっているのは、宗教と法律の成せる奇跡のようだ。      

 

ネイト・パーカーは、この作品の制作のために他の作品への出演を断り、賭けに出たそうだ。クラウド・ファウンディングのような手法で資金を集めることに成功し、十億円以上の製作費をかけて作ったのだから、完全にのめり込んでいたに違いない。俳優たちの中には、気に入った企画に金と名誉と時間のかぎりを費やし、壮大なイノベーション的作品を作り出す人がいる。「ガンジー」を作ったリチャード・アッテンボローがそうだったし、日本の本木雅弘が「送りびと」を作った時も、予想外の力量を示していて驚いた。一人の人間の強い意志が、こんな思い切った作品を生むのだと、改めて思う。その強さは、尊敬に値する。       

 

この作品の場合、差別への怒りが意志に力を与えたのだろう。ただし、怒りによって冷静さを損なうと、作品の出来栄えに関わって来る。人種差別主義者でさえ納得させるだけの名作になるためには、完成度が必要だと思うが、少し力不足だったかもしれない。    

 

最近、「ある奴隷少女に起こったこと」を読んだ。本を読んで奴隷制について再考していた時期だったので、この作品に興味が湧き、借りることになった次第である。奴隷の描き方がどんなものか、注目して鑑賞。所有主によって、奴隷たちの扱いが随分違うように描かれており、物置き小屋のような所に殴られて横たわる者もいれば、独立した小屋に家族で暮らす人達もいるという描き方だった。あれは、おそらく実像に近いと思う。「ルーツ」など、他の作品でも所有者は残虐な人間ばかりではない。金銭問題や周囲の白人たちとの関係に応じて、黒人たちへの扱いはピンからキリまで違っていたのだろう。             

 

ネイト・パーカーは聖書に忠実に行動した、それが作品の視点であるようだ。確かに、彼のセリフはモーゼら預言者たちの発言内容と大きくは変わらない。虐げられた人々が支配者たちに立ち向かおうとする時は、時代や民族に関係なく、仮に聖書がなくても言葉は同じになるのだろう。  

 

いっぽう、支配者側の行動原理は上手く描けていないように感じた。同じ聖書を読んでいるはずの白人たちは、自分たちの行動をどう考えていたのだろうか? 不信人な連中ばかりだとは思えない。おそらく積極的に奴隷制度を支持してはいなくても、奴隷所有者の権利が法的に認められている限り、それを奪えないはずで、黙認したくなくても、そうなってしまう。そのような構図が大きな力となって、根深いものになったのではないか?            

 

経済的理由と法的な面が、悪しき制度を守ってしまう。奴隷所有者が広大な農園を経営して社会的立場が上にある場合、権力や財力におもねる周囲の人間は必ずいる。出世や商売のためだ。人道的な立場で糾弾しようとしても、奴隷の労働で農園の経営が成り立っているのだから、地域経済を危機に陥れる可能性があるという理由で訴えは潰されるのではないか? 

基地や原発を支持するかどうかで町がもめるのもそうだが、立場や考え方は、同じ地域に住む人間でも正反対になる。奴隷制の維持か廃止についても、結局は自力での解決はできなかったのでは?という風に理解する。自分が白人農場主だった場合、どのように行動するかろうか?生半可な考え方はできない。

 

 

 

2018年8月16日

ハッピーフライト(2008)

Happy_flight             

 

- 東宝 -        

 

綾瀬はるか主演のコメディ。8月5日、衛星放送で鑑賞。鑑賞した理由は、他に面白い番組がなかったからだ。この作品のことは宣伝を見て知っていて、ドタバタ喜劇だろうと思っていた。旅客機や空港を舞台に、CAや若いパイロットが活躍する話となれば、おそらく恋の話が中心だろう・・・。スチュワーデスが登場する番組は、恋物語かハイジャックものと決まっている。子供のころから何度観ただろう?そう思ってビデオも借りないし、もちろん劇場で鑑賞しようなどという考えも、一顧だにしなかった。   


しかし、劇場主は自分の不明を恥じないといけない。この作品の中で中心となっていたパイロット氏とCA嬢は、一回だけ挨拶をしたかもしれない程度で、会話もない。まったく別個に、それぞれが失敗をしながらも自分の仕事に懸命に尽くし、危機に陥った職場を立て直す一役を担っていた。そこが、この作品の個性、着眼点だったようだ。   


浮ついた恋物語が、今日の日本で受けるはずがない。とことん真面目な、あんまり夢はない、まとまっていて、派手な冒険を避ける、その姿勢に徹した点が、きわめて今日的な作品と言えるだろう。就職難の時代が続いた影響か?    


この作品は、監督のオリジナル企画らしい。作品の構想を考えるうちに、浮ついた恋物語もハイジャックの駆け引きも除外され、マイナーだがリアルな故障によって、乗客やスタッフが経験する緊張や、対処の仕方などが描かれ、結果としてなかなか爽快な物語になっていた。  


主役の綾瀬は、ドジそうな人物を演じると非常に味が出る女優。際立つ美人女優ではないと思うが、万人に好感を抱かせる独特の雰囲気が感じられ、そのためだろう、気がつけば20年近く活躍している。この役も非常に個性に合っていたと思う。もう一人の主役と言える田辺誠一は、綾瀬に比べるとマイナーな存在かも知れないが、こちらも様々な分野でちょくちょく顔をみる息の長い俳優。この作品では少し三枚目だが、ちゃんとした能力も見せるというキャラクターだったから、まったくの喜劇役者では個性的に少し合わない。キャスティングが上手く行っていたと感じる。  


エピソードが少なかったにもかかわらず、ちゃんと物語としてまとまり、意外なほどの達成感が感じられたので、映画作りに関する監督の手腕には改めて感心した。しかし、劇場主はもっと様々なエピソードが盛り込まれていたほうが、興行面を考えると良くなかったろうかとも感じた。あまりギャグシーンを増やすと、かえって観客に不快感を与えてしまう可能性もあるが、海外の観客などには分かりやすくなるだろう。ギャグ満載の前半から、ブラックユーモアと緊迫感あふれる後半と、観客の予想を裏切る展開に持ち込む、そんな極端な作品のほうが、個性的だったと思う。おそらく外国人にとっては、この作品はインパクトに欠けるはずで、どこが面白いか分からないだろう。

 

 

 

2018年5月19日

バリー・シール(2017)

Americanmade

Universal

 

パイロットをやっていた主人公は、CIAの仕事を命じられ、やがて麻薬組織や軍事政権とも関係を持つようになる。武器や麻薬、資金洗浄に関わるうち、巨額の資産を貯め込むが・・・・DVDで鑑賞。

 

主人公は犯罪者だが、非常に魅力あふれる人物だった。実際のバリー・シールがそうだったらしい。資産も凄かったらしいが、寄付行為も頻繁にやっていたらしく、人助けをさかんにやったと描かれている。人間的魅力に満ちた人物だったようだ。演じていたトム・クルーズが笑顔の素晴らしい俳優なので、確かに実在した人物の雰囲気を出せていたかも知れない。

 

疑問が湧いてくるのだが、バリー氏は自分の行為を楽しんでいたのだろうか?あるいはCIAに尻尾をつかまれた状態だから、戦々恐々としていたのだろうか?映画では自分の資産形成に懸命になっており、みずから積極的に犯罪にのめり込んで行った様子だったが、怖さを感じないはずはない。いつでも自分が吊し上げられ、殺し屋から狙われる寸前の状態であることは確かだったはず。組織との関係が常に順調で、互いに依存した状態が続くなら安心もできようが、そんな良い状況が一生続くはずはない。知りすぎた人物は消されるはずだし、利用して敵対勢力を葬ろうと考えている連中は、バリーのような人物を逃さないだろう。 

 

もともと彼がCIAににらまれたのは、ちょっとしたバイト感覚で密輸をやったかららしいので、彼はギャンブルやスリルを好む性格が元々あったのかもしれない。スリル依存症の人間は、より強い興奮を得ないといられず、より危険で金の額が大きい仕事に熱中していくものらしい。そんな破滅型性格が、彼の物語を生んだのではないかと、勝手ながら想像してしまう。そういえば主演のトム様も、そんな傾向があるらしい。まさに適役だったのかも。 

 

共演者の奥様役も味のある演技ぶりだった。殺人のシーンも描き方が穏やかで、この作品はちゃんと娯楽作品に仕上がっていた。まとめ方が上手い。 

 

それにしても、イラン・コントラ事件の頃の米国の作戦は、考えが足りないように思えてならない。ことが露見すると考えなかったのだろうか? CIA側は秘密を守るだろうが、相手方は平気で裏切るはず。それが米国民に知れ渡らないはずはない。どうやって機密を守るつもりだったのか、そこが理解できない。 

 

日本の自衛隊や、国土交通省、財務局の文書管理も理解できない。劇場主は公的文書というものは、絶対に捨ててはならないものだと考えていた。今なら電子記録でどんな量の文書だって保存される。破棄する必要はないし、保存するのは国民に対する義務だ。だが、管理を任されるということは、改竄や破棄は当然と、どうやら長いこと考えられていたようだ。昨今だけの問題じゃなく、昔からそうだったようで、本当に信じがたい低レベルの政府機関だったということ。  

 

 

2018年4月10日

バッタを倒しにアフリカへ(2018)

Photo_2

- 前野ウルド浩太郎 -

 

昆虫学者の前野氏の著書。氏がモーリタニアに渡った経緯、バッタの研究、および研究費確保のために苦闘した様子を綴った本。    

 

売り上げも相当あげたようで、高い評価を受けたらしい。単純に面白いし、ポスドクの立場の辛さの記述や、学術的な知見の紹介もあり、盛りだくさんの内容で、読み物としてよく仕上がっていた。書き手の姿勢が素晴らしい。 

 

若者らしい軽いノリで、最果ての地にも近いアフリカ西部に行く勇気、そこで目論見と違った展開によって苦しむことになるので、フィクションのようなストーリーが展開し、小説のようだ。しかも話が単調にならないように、学術的な話題を添えたり、オタク研究と言えそうな珍しい話もあり、読者を飽きさせない。本としてよく仕上がっていた。 

 

バッタの問題の大きさは、劇場主にはよく分からない。昔は日本でもイナゴの被害が出ていたそうだが、今は農薬の力なのか、まったく聞かない。アフリカでも農薬は大量に使われているはずで、昔ほどの被害はないように思っていた。農薬の害のほうが気になる。 

 

研究の進行具合もよく知らない。バッタの遺伝子研究は当然進んでいるだろう。バッタが変性しないようにする研究も、わりと簡単にできそうな気がするのだが、そういえば完成したという話は聞かない。バッタに限った薬が見つかれば、大騒ぎする必要はない。イナゴ注意報が出そうな地域に限定して薬を使う。他の動植物に影響のない薬を選ぶなど、対応策は決まって来る。理屈は単純で、やがては高度な対策が完成するはずだ。そうなったら、前野氏は職を失うかも知れない。でも氏のことだ、ちゃっかり他の昆虫をネタに、きっとまた本屋大賞級の書物を書き上げるだろう。  

 

イナゴが食べない作物を遺伝子操作で作ろうという研究は既にやられていると思う。米国の企業が考えないはずはない。現地では死活問題だから、開発されたら拡がると思う。作物は日本に運ばれても、加工食品に混ぜられたら管理は難しい。法的な対応が必要。でも、TPPなどの交渉によって、独自の規制は難しいかも知れない。

 

 

 

2017年8月 3日

パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊(2017)

Disney

- Disney -

ジャック船長の仲間だったターナーの子供が、ポセイドンの槍を使って父の呪いを解こうとする。そこに幽霊船が絡んで、ジャック達が苦闘する物語。劇場で鑑賞。このシリーズなら面白さは期待できると判断し、ビデオ化されるのを待つことはないと考えた、期待通りだった。

シリーズも長期化してきて、かってのような新鮮さは感じられなくなっている。登場人物達も、それぞれに年齢が上がり、かっては娘だったキーラ・ナイトレイも、もはやオバサンになっている。ヒロインは無理。

そこで今回は新たなヒロイン、スコデラリオ嬢が登場していた。かなり野性的で勇敢そうな風貌の女優で、この話にはうってつけだった。ヒーロー役には、エジプトの話でも主人公を演じていた若い役者のブレントン・スウェイツ君が選ばれ、こちらも適度に勇敢で適度に笑える。世代交代に向けた計画が進んでいるのかも知れない。

主人公のジャック船長は、もともとメーキャップが濃かったので、ジョニー・デップの年齢が上がっても問題ないようだ。彼は得をしている。次回作もすでに進行中らしいが、問題なく演じることができるだろう。

今作も実によくできていた。幽霊船の怖さの表現、亡霊達の姿を表現したCGも実に素晴らしく、立体感が上手く表現されていて感心した。また、ジャックが絞首刑になりそうでならない微妙な逃れ方、船の間を飛び移りながら敵から逃れる戦いぶりも、いつもながら退屈させないよう工夫されている。

プロットも実によく考えられていると、いまさらながら感心する。親子の物語、敵の恨み、冒険に向かわざるを得ない流れなど、観客が納得しやすいように設定されている。

今回気になったのは、魔法使い役としてスキンヘッドの囚人が急に登場したり、かってのように一貫して敵として存在する提督のような存在がいなかったこと。また、前作でペネロペ・クルス嬢が一回だけ共演したが、彼女のようなスターが使い捨てになるのはどうか?といった点。

また、魔法の元になる槍がなくなったら、今後は幽霊船などが登場できないのではないか?そうなるとシリーズが成立しないのでは?といった点。まあ、気にする必要もないだろうけど。きっと観客が納得できる新たな設定がなされるだろう。

 

2017年4月11日

博士の異常な愛情(1963)

Columbia

- Dr.Strangelove or..... -

空軍基地の司令官が発狂し、核攻撃を命令した。政府や部下が命令撤回を画策するが、事態はどんどん進む・・・・

・・・核兵器の恐怖を扱ったブラック・コメディ。原作本があるそうだが、キューブリック監督が大胆に作風を変えて喜劇仕立てにしたという。ピーター・セラーズやジョージ・C・スコットが大まじめに演じていて、それでかえって喜劇的になっている。演じられたのは古いタイプのギャグだが、アイディアにあふれる作品。

邦題は博士の名前から採られているが、その博士は脇役に過ぎず、ドイツ名を英語に直訳した際に名前がおかしくなり、笑われながらも嫌われるキャラクターを、そのままタイトルに使ったようだ。皮肉の意味だろう。軍事技術の専門家を象徴し、茶化したといったところらしい。でも、いかに茶化しても、この人物のような専門家は、必ず会議に呼ばれて意見を聞かれるだろう。

冒頭のクレジットが非常に読みづらい。適当に殴り書きしたような文字で、しかも構図がおかしいので、クレジットの意味を成していない。作品がいちおうコメディなんで、クレジットの部分は重厚に、真面目くさって表示しても良かったのではないかと感じた。斬新と言えば斬新だが・・・

映像の技術に関しては、さすがに古い。テレビのSFのレベルと、あんまり変わらないような気がする。当時の技術では、あれが限界だったのかも知れない。1980年ころから急速にCGが進化したのだから、技術面に関しては旧時代のもの。アイディアだけで勝負していたと言える。

アイディアは素晴らしい。その後のSF映画に、この作品に影響された作品は多いと思う。ちょっとした偶然や、ひとりの人間の狂信的な信条が、破滅の原因になる可能性は確かにあると思う。あるいは、様々な検討を重ねて作戦に落ち度がないようにしたはずなのに、想定外の事態によって最悪の結果が出る、それもありうることである。

米国の戦略会議の様子がおかしい。好戦的な将軍が、先制攻撃をしたがる。その理屈には一定の道理があり、説得力が感じられる。まるで戦前の日本軍の参謀のような理屈。でも、肝心な部分の配慮、深謀遠慮に欠けると、この映画のような結果が待っている。将軍になるような人物は野心があって、サイコパス的な性格を持つ人が多いはず。理路整然と間違う人物も多いだろう。将軍は自分の戦績が大事だし、技術の専門家は最新の武器を使って、その威力を誇りたいはず。

先日、米軍はシリアの基地を攻撃した。シリア軍が毒ガスを使ったらしいことに反発したようだ。まさか本格的に参戦する意図はないと思うが、もしロシア軍が基地にいた場合は、かなり怖ろしい事態に進展するかも知れない。あっさり手を引くとメンツがつぶれるから、より厳しく攻撃して優位のうちに撤退したいと双方が考えているとすると、どんどんエスカレートするかも知れない。破滅、破綻が来ないという保証はない。

破綻で思い出した・・・・東芝が危機的な状況らしい。

事業を分社化し、売却などによって乗り越えようと努力はしているそうだが、超優良企業だったはずの東芝が、こんな急展開で破滅の危機に瀕するとは、まさしく想定外のこと。劇場主は、まったく予測していなかった。経営会議では、いったいどんなことを話していたのだろうか?興味がある。各々の役員達の業績争いや、忖度合戦に終始し、大事な判断を間違っていなかったろうか?

原発事業には大きな危険が潜んでいる。それくらいは素人でも分かるが、それにしても急な話。劇場主の感覚で思うのは、自然エネルギーに賭けるなら許せるが、原発に賭けて失敗したのなら当然の結果なのかも知れない。判断の失敗には違いないのだが、金銭面以外を含めた総合的な面では違う。会計操作の問題もありそうで、企業倫理の観点からも自業自得ではという印象も浮かぶ。

でも、東芝で働いている人達にとっては大変なこと。会社の首脳部が、おそらくは運も悪かったのではあるが、結果的に無茶な事業に投資し、保身目的の粉飾をやって、それで逃げ切れると判断したツケが、部下達に回ってくる。社員達はちゃんと仕事していても、運によって今後、酷い目に遭うかも知れない。

営利企業だから当然のこと、大発展もあれば惨めな破綻も当然と言えばそれまでではあるが、東芝の製品や、スポンサーだった日曜劇場、サザエさんになじんできた者としては、感傷的にならざるをえないものがある。願わくば、惨めな破綻が来ないよう、祈るばかり。

 

 

2017年4月 8日

ハドソン川の奇跡(2016)

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- Warner  etc -

エンジントラブルにもかかわらず、奇跡の不時着に成功した機長。しかし本当は判断ミスがあったのではという疑惑が起こり、一転して彼は窮地に立たされる・・・・

・・・・DVDで鑑賞。この作品が劇場で公開されていたのかは分からなかった。2016年は地震で大江のグランパレッタが閉まっていたので、劇場公開作品はほとんど観れなかった。ただし、この作品が仮に上映されていても、観なかったように思う。マイナーな路線だったから。

完成度の高い作品で、話としてまとまっていた。極めて重大な事故ではあったが、実際の事故の緊迫した時間は十数分間程度に過ぎないから、サスペンスだけで盛り上がりを続けることはできない。演出でもって120分に延ばすしかないから、ほとんどの時間帯は静かなドラマタイムになる。そこで退屈させないのは、非常に難しいことだ。

この作品は、家族で鑑賞できる内容と思う。ただし、おそらく小さい子には、もうちょっと派手なアクションがないと受けない。でも恋人と観るのなら、かなり高級で後味も良い作品になると思うので、悪くはない選択。ただし、ちょっと退屈する人がいるかも知れない。

実際の事故後の公聴会はどんなものだったろう。映画の通りだろうか?それとも、英雄視されている機長に対して、検証委員が最初から好意的な態度で検証してくれたのではないか?・・・・そんな気はした。もし彼を排斥でもしようものなら、国民の多くから集中攻撃をくらいそうだ。

日本の事故調査がどのようなものかも、気になった。日本の航空機事故で、公聴会は開かれるのだろうか?日航機の墜落事件の時、どこで検討会が開かれたのかも知らない。圧力隔壁に問題があったとの報道は読んだが、もしかすると密室で、会社や役人だけで検討したのではないか?それに当時は、たまたま製造会社が直ぐに過失を認めたから結論に至ったような印象を受けた。正しい方法で検討されたのか?

繰り返し述べることになるが、日本的な悪例として思い浮かぶのは、原発事故の事後評価だ。検討会の人選の根拠が、そもそも不明朗だった。国会事故調のHPを見る限り、委員が過去に事故を予測していたとは書かれていないようだ。原発推進派の人間を集めた可能性も否定できない。検討会では、菅総理を始めとする当時のスタッフの対処を延々と批評しているが、焦点がずれている。総括されていない。あんな検討で、次の事故を防ぐのは無理だろう。

総理がどんなにバカでも、自動的に対処法が提示され、総理は「うん、分かった。仕方ないねえ、実行しろ。」と言えるようにしないといけない。政治家に原発のことが分かるはずがないからだ。事故対策は、政治家の出番がないところまで目指して、事前にマニュアルを作り上げることが一番大事。おそらく、もう一度同じ事故が起これば、さほど変わらない結果が待っているだろう。

確かに官邸もおかしかったと思う。官邸の正しい対応は、素早く専門家を集め、その指示に全面的に従うこと!と号令を出すことにあった。自分達の能力を超える事件に対して、自分達で対応しようとしたのは間違いである。実際には専門家達も為す術がなかったようだが、官邸は専門家会議の答申を代弁し、命じるだけに徹するべきだった。

そもそも事故は、起こってはならない。電源が失われる可能性を、ほぼゼロにしないといけない。大海に面するということは、20メートルくらいの津波を覚悟するということである。その程度なら何の被害もなく、M6強程度の地震も瞬時に対応できないといけない。福島第一原発は、明らかに立地が悪く、建て方も言語道断、計画の段階から事故は約束されていた。作ったこと、作り方が事故の主因である。さらに検討するなら、地震国に原発を作って良いかの問題であり、これ以外の結論を出してはならない。

第一原発で事故が起こったら、菅総理だろうと安倍総理だろうと、誰か原発の専門家だろうと、何も出来なかった。炉心が融解を始めた時点で、もはや勝負は決まる。それ以外の結論を出すようでは、検討会議そのものが失敗だ。将来の役に立とうと考えていない人間が検証したと断言して良い。今後の国家のことより、何か他の事を考えたのだろう。得意の忖度をしたのだろうか?

忖度する人、させる人、忖度を容認する人を選んではならない。大失敗を生む。サリー機長のように使命に忠実に行動し続けないと、必ず大失敗を繰り返すはずだ。

 

2017年2月28日

パーフェクト・ルーム(2014)

The_loft


- エロティック・サスペンス -

友人達が共同で購入した秘密の部屋。そこは愛人との密会に使われる・・・・が、ある日、部屋で女性の死体が発見された・・・

・・・リメイク作品だそうだ。DVDで鑑賞。

謎解きの要素が大きいエロティック・サスペンス路線と言える作品。まず冒頭に死体が出てきて、誰が殺したのか?という不可解な謎解きが始まる。密室に近い部屋だから、仲間以外に犯人は考えにくいが、実は侵入は可能だったのか?・・・といった流れ。

よく考えられたストーリーだった。色っぽい女優達が出演し、セクシーなドレス姿やプールで泳ぐシーンが見せ場になっている。タヌキ顔の女優さんは大変にスタイルの良い方だったが、イザベル・ルーカスというオーストラリアのモデルらしい。

彼女のキャラクターがよく分からなかった。肉食系で、多くの男に色気を振りまく恋多き女なのか、一途な愛を求めている女なのか、演出としては何か考えてあったのだろうか?ただスタイルが良いだけでは、印象が薄くなってしまう。

もうひとり、謎の美女も登場していて、こちらはレイチェル・テイラーという、やはりオーストラリア出身者だそうだが、彼女のほうは役柄と演技が合致し、個性が一貫していたと思う。だが、深く共感することは難しいかも知れない。彼女はあくまで脇役だった。

仮に悪女として演じていても、同情し、共感できる個性でないと、せっかくの美貌も意味が薄れる。やむをえず何かに荷担したのだと、最後に明かされるべきだし、ただの金銭的な仕事だったりはしないほうが良いだろう。

結局、この作品は家族で楽しめる可能性はまずない話になっていた。さすがに子供に、こんな映画は見せたくない。恋人と鑑賞するのも、ちょっと考え物だと思う。話題にすると、喧嘩の材料になりそうな気がする。

疑問が浮かんだ。人の手を切る場合、自殺目的ならば静脈が切れる程度の浅い傷になり、血が噴き出すことは考えにくい。でも、死んだ人の手を切る場合は、加減はしないのではないか?そうなると血が噴き出すから、動脈が切れたと気づくのではないか?

監視するためにパソコンを持ち込んでいたが、通常あのようなビルの場合、空調や配管の管理のために、あの場所に管理人が頻繁に訪れるはず。そうでないと、水漏れなどを管理できない。

そして、部屋はどうやって掃除していたのか?自分で掃除するには、部屋が広するように思えた。掃除人を雇ったら、直ぐに足がつくというものだ。逢い引きより掃除に時間を要していたのかも知れない。

そう考えると、パーフェクトルームの維持は大変だ。もっと狭い部屋のほうが楽になる。眺めの良いことは望ましいが、ベッドと冷蔵庫、シャワールームのある1DK~2DKくらいが現実的だったかも知れない。ただし、狭い部屋だとロマンティックな感じは薄れ、単に性行為に専念する場所になりはてるだろう。安いラブホテルのような感じだろうか?

まあ、逢い引き部屋など持ったこともないし、持つだけの甲斐性もない劇場主が心配しても仕方ない。文句があれば、広い部屋を買ってみろと言われそうだ。正直、若い頃は愛人が持てるくらいの大人物を目指していたのだが、どうやら甲斐性のない小市民で終わりそうだから、この作品のような話は夢のまた夢であろう。でも30代頃に、リーズナブル価格で良い物件があったら、どう行動したろうか?理性的に行動できたか?そこはミステリー映画なみの謎なのだ。

 

2016年11月19日

バイオハザードV:リトリビューション(2012)

Residentevilretribution

- 家族で? -

バイオハザードシリーズの第5作?6作? リトリビューションは報い~天罰の意味らしいので、アンブレラ社の行為によってゾンビが地球を支配している状況を差しているようだ。例によって、ミラ・ジョボビッチ嬢がヒロイン。

劇場公開されたと思うのだが、最初からゲーム映画なんぞ観る気にはなれないので関心もなく、宣伝の有無も覚えていない。そもそも第5作なのか?もっと作られたような気がしてならない。DVDも借りるつもりはなかったのだが、他に適当な商品がなくて仕方なくレンタル。でも、いつにも増して高度なCG表現には感心したし、アクションシーンの出来も相当良くて、それほど呆れることはなかった。

今回はゾンビ達の出番が限られていた。日本人ゾンビが中心となったシーンが少しあった程度。戦う相手はアンブレラ社のコンピューターに操られた兵隊が中心だったので、戦争映画を世界各地でロケしたような格好になり、それなりに良い方向になったのかも。ゾンビ顔ばかり長時間眺めても飽きる。

冒頭で長い時間の逆回し映像があったが、あれは思い切ったアイディアだった。迫力の面でも、観客の記憶へのつなぎの意味でも実に効果的。映像美を感じるシーン。

ただし、この作品は所詮ゲーム映画なんで、恋人と観るタイプの作品ではない。子供達だけで観るなら良いかもしれないが、家族でゾンビ映画を観る習慣がない我が家では、この作品を子供といっしょに観ることは考えられない。家族がゾンビ大好きな家庭は、存在するんだろうか?幼児がゾンビを観てウヒウヒ喜んだら、なんだか怖ろしい気がするが・・・

主要都市のモデルを舞台にヒロインが戦うという設定は良かった。同じようなアクションばかりでは飽きる。時にはカーアクション、時には怪物との追走劇、兵士との銃撃戦と、色々なパターンを場所を代えながらやる設定は正しい。ちょうどゲームのステージと同じ感覚で設定されたんだろう。兵隊もののシューティングゲームでも、ステージをクリアするごとに次の敵が待っている。ゾンビだったら次は大型の怪物、途中で昆虫の大群やピラニアみたいな魚、最後のステージでは撃たれても倒れない強敵といった具合。

ミラ嬢は実にタフ。この作品の前には確か出産をしているし、齢も40歳近くなってきたはずだ。スタイルも保っているから、相当頑張って節制しているのでは?もともと結構ボーイッシュな人なんだろうが、それにしても凄い。結婚相手も、出演作によって決めているのかもしれない。

元々はウクライナから移住し、世界をまたにモデルとして活躍した後、フランス系監督の映画に出演し、ついでに結婚。さらにシリーズ物に主演して、その作品の監督と結婚、ついでに出産という経歴。これは、やはりサクセスストーリーなんだろうか。肉食系もいいところだ。

ミラ嬢の表情が素晴らしいと思う。絶対的な強さではなく、恐怖や緊張感を漂わせる目が作品にも緊張感を持たせている。妙にタフぶって気取ってしまうと、観客の感覚とのズレが生じてしまうから、ミラ嬢の表情は作品をちゃんと理解しているからこそ出来るものだろう。

他のアクションヒロインは、女版のブルース・ウィリスのように目を細めたり気取ったポーズが目立ち、緊張感を持たせる意義を見失っている。ミラ嬢は独特のアクション・ヒロインであらせられる。出演作の傾向から考えるとゲテモノ女優に近いが、的確な演技はしていると思う。もしかして齢をとったら、素晴らしい名演技に驚く日が来るかもしれないと思う。悪役として、きっと長くやっていけるはず。

出演作の、どの映画でもおよそアクションの仕方は決まっている。刀や槍が飛ぶのをスローモーションで立体的に写しているし、ワイヤーアクションで空中を飛び、強敵から吹っ飛ばされた場合も数メートルは平行移動する。下着かボンテージ衣装に必ず衣装替えする。銃は二丁拳銃。いろんな要素を合体させて作ることがゲームの約束のようなものだから、それを映画化したら当然こうなるのだろう。

カーアクションのレベルは高かったと思う。バイクで追走してくる兵士は非常に運転が上手く、兵士が普段から運転の練習をしているのか不思議だが、おかげでアクションの迫力は出ていた。

このシリーズはいったいどこまで作られるのだろうか?おそらくミラ嬢の風貌に限界が来たら、いったん終了せざるをえないのではと想像する。その後も作られる場合は、スピンオフで他のキャラクターが戦うか、ヒロインを変えるか女優を変えるしかない。ヒロインが交代したら、よほど魅力的な女優でない限り、イメージ的に拒否反応が出ると思う。

 

 

2016年11月13日

パットン大戦車軍団(1970)

Patton


- 暴言 -

生粋の軍人パットンは北アフリカに赴き、現地の部隊を鍛え上げ、ドイツ軍を敗走させる。しかし、彼の言動が問題になり、左遷の憂き目に遭う・・・・

・・・・11月1日、衛星放送で鑑賞。激しい性格のパットンの、その生きざまを非常に強烈に描いた作品。ちゃんと史実を踏まえた話らしいのだが、娯楽的になるようにドラマ仕立てで展開する。大戦時期の生存者が多かった時代なら、この作品は自分達の時代の話として興味深いものだったろうと思う。でも、今日的には興味をそそられる内容とは思えない。家族で楽しめる内容とも思えない。

ギリシアあたりの演劇のように、冒頭で星条旗をバックに登場するパットンが格好良い。実際の訓示でも、役者がかった話し方をする人は多いが、特に軍隊の指揮官の場合はその傾向が強いだろう。話の内容、話し方に個性がよく出ていた。あの始まり方も秀逸だ。

強烈な個性の主人公は有名だったらしいから、映画化したいという動きは昔からあったようだ。作品になるまでに20年以上経っているのは、家族が嫌がったかららしい。確かに、ほとんど狂ったかのように戦場を好む性格は、ギャンブラーに通じる病的な面を感じる。

仮に本当に病気だとしても、その個性が生かされる場合はある。第二次大戦の場合、パットンのような軍人は最高の活躍を狙える場所だった。同じ戦争でも、ベトナムやイラクでは戦い方が違う。もしドイツ軍がゲリラ戦法で戦うなら、連合軍をもっと苦しめることもできたろう。大兵力の激突タイプの戦場なら、パットンは得意のはず。

「地上より永遠に」などの作品を観ると、米軍内部でも激しいイビリ行為があったらしい。昨今では、多くの女性兵士が襲われていると言う。殺気立つ組織では、規律は維持されにくいものだ。正当な指示なのか感情的な命令なのか、分かりにくい場合も多いと思う。

劇場主は中学時代に、上級生から理不尽なイビリを受けたが、彼らはどんな精神で、下級生いびりをやっていたのだろうか?本当のところは理解できなかった。

おそらくパットンは、理不尽なほどの訓練をやったに違いない。パットンの頭の中も分からないのだが、戦場においては、激しい訓練も必要だろう。耐えられないと大勢が命を失う。ただし、彼の指揮下にいた場合、兵士としては苦労し、生存確率も低めだったかも知れない。直感的なセンスに優れた有能な戦略家、勇気あふれる軍人だったようだが、かなり無謀だったとも思える。

パットンは、カエサルのような偉人と同じような気分でいたのではないか?そのような気分にいれば、マイナス思考をしないので、能力を充分に発揮し、戦勝を得る可能性が高まる。ただ、同じような感覚の軍人は各国どこでもいたはずで、相手だって同じだったかも知れないから、負けるときは当然負けるわけだし、戦績は運に左右されたケースも多いと思う。

それにパットンの場合、アイゼンハワーと知古でなかったら、左遷されて終わりだったかも。ただの暴言軍人で、名を残さなかった可能性が高い。運は大事だった。

さて暴言と言えば、次のアメリカ大統領がトランプ氏に決まった。五分五分の戦いと言われていたが、米国民の感覚は違っていたようだ。暴言を繰り返し、税金逃れをやっていても、今の政策を変えるべきと判断している。政権が交互に来ることは、権力が固定化しない点では良いこと。日本も、少しは考えたほうが良い。

ただ、米国民が真に深く考えていたのかは分からない。確実なのは、米国民のかなりの人が現状に耐えられない状態だったようだ。暴言やスキャンダルがあっても、現状を変えること、富の分配、職を確保するという基本的な利益を優先したのだろうと思う。とにかく政権交代が最優先だったからヒラリーだけは嫌だったはず。

選挙戦略として激しいアジテーションを採用した点は、優れた判断だと思う。注目を集め、期待させることは、選挙を戦う上で必要。しかし、それはヒトラーだってそうだった。ポピュリズムに近い、あざとさを感じる。

日本の選挙と同じように、テレビタレントが有利になった結果と言えるかも知れない。テレビの毒舌タレントは、毅然として誇り高い印象を人に与えるし、スキャンダルがあろうと悪いイメージにつながりにくい傾向がある。テレビで繰り返し親しんだ人物には、投票しやすいのだ。

優れた選挙戦略を採ったから、優れた政治判断をできるとは言えない。酷い結果を招くかも知れない。特に政権運営が長期になると、主張の一貫性は問題になる。選挙中の言動は記録に残っているから、やがて嘘つきと批判され、短命に終わる運命かも知れない。

白人中間層の利益を確保することは、候補者全員の公約だったと思う。ヒラリー候補だって、その必要性を認めていたはず。でも、資産家から寄付を集めていたら、イメージ的に嘘くさくなってしまう。ヒラリー氏は、その点で間違った戦略を採ったことになる。しかし、資金なしではサンダース氏に勝てなかった可能性が高い。最初から厳しい選挙戦だったわけだ。

 

 

 

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