映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

カテゴリー「お」の56件の記事

2018年7月12日

オリエント急行殺人事件(2017)

Murder_on_the_orient_express


- FOX -


アガサクリスティ原作の推理小説の映画化作品。前回は1974年にアルバート・フィニー主演で制作されていたが、今回はケネス・プラナーの監督、主演で作られていた。  


制作の意図が最後まで理解できなかった。もしかするとCGを使って列車の移動の様子を迫力たっぷりに描こうという狙いがあったのかもしれない。さらに、列車の窓の中と外で視点を自由に移動することも、今なら可能だ。クレーンやドローンを使って、視点をダイナミックに変えて表現したい、そんな技術的な欲求があったのかもしれない。   


有名俳優を集めれば、前作と同様の集客効果も期待できる。そのような内容を提示して企画が通り、予算が集まったのだろうか? 列車の動きの迫力に関しては、前作より断然素晴らしかった。迫力がありすぎて、あんなにスピードを出したまま雪山に入ったら、簡単に脱線するだろうという不自然さも感じたくらいだ。いっぽう駅の雑然とした雰囲気や、機関車の煙が立ち込める様子などについては、前作のほうが懐かしいような感覚が感じられ、この作品のほうが演出臭い印象を受けた。  


ケネス・プラナーとアルバート・フィニーでは、個性の面では断然後者のほうが際立っている。小説の表現から考えると、ポアロは小柄で偏屈で、異常な人格の持ち主と思えるが、この作品のポアロは普通の学者のようにしか見えない。もっと特殊なメーキャップしても良かったのではないだろうか?


最後に推理を披露するシーンも、原作とは違っていた。さながら最後の晩餐の絵のような長いテーブルが用意され、寒い外で、おそらく現地の人達にも聞こえそうな大声で話がなされていた。あれでは現地の警察に逮捕されてしまいそうだ。列車の中でもよかったのではないだろうか?風邪ひくかも知れないし・・・  


「ナイル殺人事件」の予告みたいなシーンが最後にあった。もし、この作品に大変な人気が出て、今後の予算が確保されるなら、続編ができるかも知れない。でも劇場主は、次回作を見たいとは感じなかった。よほど斬新なことをしない限り、期待感を持って鑑賞することはできない。有名な作品をリメイクするのは勇気が要る。それをやれと言われても、どうやったら良いのか分からない。 


おそらくCGの技術だけでは難しいのではないだろうか?  悪役が善玉に変わるくらいの、大胆な変化が望まれる。もし今回の悪役が弱々しい風体で、必死に命乞いをしているのに無残な殺され方をするとしたら、犯人達と悪役のやりとりは非常に現代風になるかも知れない。イスラム国をめぐる報道映像を思い出したりして、見ていて辛くなるだろう。誰からも好かれていたアームストロング大佐が、実は戦地で悪役氏の家族を犠牲にしていて、その復讐が根底にあったのだとしたら、どっちが正しいのか分かりにくくなる。犯人たちは激しく後悔するラストになり、観客もどう考えてよいのか分からなくなる。   


そんな、よく分からない事態こそ現代風ではないか。でも、それは興行的には最悪の選択になりそうな気もする。

 



2018年6月27日

「お金」で読み解く日本史(2018)

Sb

- 島崎晋著・SB新書 -

 

日本人が金銭に関してどのような感覚を持っていたのか、その歴史は気になる。かなり浅ましい行為が日常繰り広げられているのを目にすると、日本人の金に対する狂乱ぶりが諸悪の根源ではないかと思うことがある。狂乱する人間には劇場主をも含めないといけない。日頃の買い物でも、1円でも安く手に入れ、給与を1円でも少なく支払い、1円でも多く貯めたいと、日夜ギリギリの戦いを展開しているのが現状である。 

 

家内が最大の敵で、使うこと、夫から奪うことしか考えていないのではないかと思える狂乱ぶり。どうしてもっと落ち着いて、互いの信頼関係を重視してくれないのだろうか? その謎を解き明かす目的もあって、この本を購入した。しかし、残念ながら本には家内の行動の謎は書かれていなかった。 歴史家をもってしても、彼女は謎なのだろう。  

 

この本の優れたところは、その主眼、視点にあると思う。日本人の金銭意識は、おそらく国の歴史を決めて来たはずだ。よくも悪しくも、金銭への欲は集団の意志を左右し、大きな流れを決める。人々の欲を知るのは大事なことだろう。 

 

今の日本は、上から下まで目先の金に目がくらんで、長期的な展望を失っている気がする。 展望を見出しきれていない・・・そんな状況から抜け出せていない閉塞感がある。 

単純な言い方をすると、中国が世界の工場となって価格破壊が起こってしまったので、生産拠点を移さざるを得なかった。それが大きな流れだが、あれも諸外国との競争に勝ち、金を得るためだったはず。でも、そうすると生産しないで金を得るしかなく、基本的には国内の景気を良くしようがない。一部の会社だけしか儲からないだろう。生産が減っても、トリクルダウン方式に社会全体が豊かになれるものだろうか? 企業や経済学者たちは間違っていないだろうか?  

 

そして人口が減るのも自然な流れだろうが、一気に減るとかなり悲惨な状況になる。でも、その対策のための予算は少なく、景気対策のほうが重視されている。正しい戦略を考えているとは思えない。目先のことに目がくらんでいないと誰が言えるだろうか? 生産の場は、子育ての場にもなる。一部の会社が巨大化しても、低収入で子育てを諦めた家庭が増えたら、その社会は不健全だと劇場主は感じる。だが学者や役人たちは、そう考えていなかったようだ。

 

そもそも、この本は読者の納得を期待していないような印象を受けた。歴史家という人種は、データの記載にはこだわらない性格なのだろうか?この本は根拠に相当する分を省いたまま解説が進んでいる。あるいは、たまたま氏がそんな考え方なのか、新書の性格を考えて分析めいた書き方を排除し、根拠不明のまま断言を繰り返す文章にしたのか? 

 

著者は経済学者ではなく、学者と言えるかどうかも微妙な方らしいので、分析を省略したのは当然かも知れない。読みながら、納得できないまま前に進まざるを得ない印象を受けた。この本が論文ではなく、随筆に近いものなら、いちいち根拠を述べる必要はない。そんな考え方もあるんだろうねで、軽く読み流せばよかったのだろう。評論家の多くが、そんな人たちなのかも知れない。   

 

政治家だって似たようなものだ。政治家たちは声が大きいし、確固たる信念を持って活動しているかのように見えるが、根拠のない思い込みによって誤った行動をとっているだけなのかも。正しくなくても、けして譲らないなら立派に見えるものだ。政府首脳の答弁や、ラフプレー後の日大アメフト部の元部長さんの会見映像を見て、そう思った。あんな人達が指導者では、今後に希望を持つのは難しい。    

 

希望を持てないなら、もう国に期待はできない! 日々の金儲けに熱中しよう・・・あらま、また狂乱してら。結局、この本からは何も学べなかったというのが結論。   

 

 

2018年5月28日

オンリー・ユー(1994)

Only_you

- TriStar -

 

マリサ・トメイ主演のラブストーリー。DVDで鑑賞。共演はロバート・ダウニー・Jr。今やマネーメイキングスターの彼だが、この当時は若手コメディアンのひとりに過ぎなかった。

 

ロマンティック・コメディだった。軽い調子の男が、なんとかヒロインと結ばれようと工夫する流れが面白かったし、舞台がイタリアの観光地だったので、美しい背景の中で展開する話には夢を感じられた。共演者はよく見る女優だが、他の作品では普通の母親役を演じていることが多い。この作品ではかなり大きな存在で、魅力のある良き女友達を演じていて好感を持った。

 

この作品の宣伝や批評を見た記憶がないので、たぶん大ヒットではなかったと思う。特徴に欠ける印象もある。爆笑できるタイプの作品でもない。夢がかなうかどうかという点に観客がワクワクできるという魅力にとって大事な点が、あっさり捨てられてもったいない気もした。

 

今でこそ大スターのロバート・ダウニーだが、この当時はスター候補に過ぎなかったはず。30歳前で、その後にどんなキャリアをつむことになるのか、本人も分かっていなかった時期だろう。ただのヤク中のマイナー俳優で終わっていた可能性もある。

 

この作品でも独特のとぼけた雰囲気が感じられるが、今の彼のキャラクターには、おそらくだが、彼がヤク注だったことが好都合に作用している。奇人変人を演じるには、ぶっ飛んだ個性が観客のイメージにも浮かんだほうが良い。本物のヤク注だった彼は、奇人ぶりも本物に写る。それが著効している。ジョニー・デップにも共通するものがある。彼の本当の演技力、魅力は分からない。この作品で特に彼のファンになる人がいたかどうかは疑問に感じた。でも確かな個性は感じる。それが大事なのかも知れない。 

 

日本のコメディアンたちの中にも、一定のキャリアを積んで、何かの魅力が培われて初めてメジャーなタレントになる人がいるが、ハリウッドでもそうなのかもしれない。この当時のロバート・ダウニーは、若すぎてトボケぶりが中途半端に感じられたのかもしれない。 

 

マリサ・トメイ嬢については、この作品で大勢の人がファンになってもおかしくないと思う。女性からどのように見られるのかは分からないけど、男性から見れば華奢な体形に、美しく笑顔が素敵なタレントで、恋愛もののヒロインにはうってつけのように感じる。その後も長いキャリアを維持しているし、助演女優賞をいろいろ取っている。

 

でも、常にヒロインを演じられたわけではなかった。魅力的だが大スターにはなれていない。あくまでまともな個性であるから、キャラクターが重要なハリウッドでは、高額の出演料を要求できるような存在にはなれなかったのかもしれない。個性が大事なんだろう。

 

2018年2月24日

オマールの壁(2013)

Photo

 

- Hany Abu Assad -

 

占領下にあるパレスチナに暮らす青年。逮捕され、スパイになることを強要される。バレたら即座に殺される運命。彼は生き抜くことができるだろうか?

 

DVDで鑑賞。作品の権利関係(映画会社など)はよく分からない。撮影の舞台は中東の町で、おそらく本物のパレスチナの壁も使っていたはずと思うが、占領下の日常が非常に上手く表現されれていた。よく撮影許可が下りたものだと驚く。明らかにイスラエル軍を非難する内容であるから、妨害が入らないことは考えにくい。こっそりタイミングを見計らって撮影したのか、あるいはまったく違う他の場所にセットを作ったのか?

 

主役の若者は米国で活躍していた本職の役者らしい。自然な演技をしていた。激しすぎる感情表現は、作品のレベルを下げてしまう。この種の映画の場合は淡々と演じるほうが良い。リアルなドラマができていたと思う。パレスチナ出身でも、欧米に渡って活躍する人は多いらしい。現地では自分の能力を伸ばすことは難しいので、欧米での活躍に賭けるのだろう。

 

スパイになった人間は、仲間をだまして自分が生き残る道をただ歩むしかない。この作品の優れている点は、スパイたちが考えそうなことをストーリーに上手く反映していた点。特に複数のスパイが組織に紛れ込んでいたらどうなるか、そこがよく考えてあった。加えて現地での恋愛の問題も絡むから、話が複雑になって面白かった。ただ戦いの話ばかりよりも、恋の話があったほうが断然いい。

 

スパイを作ることは、実際に簡単だろうと思う。家族や恋人をネタにすれば脅迫して従わせることは可能。自殺する者もいるだろうが、スパイになる者もいるはず。関係を維持し、出し抜かれないようにするのは難しいだろうが、入念に検討してスパイ同士が互いを見張るようなシステムを作れば、かなり有効な情報網を作れると思う。

 

だから一度でも逮捕された人間は、基本として組織に復帰させてはいけない。いかに優秀な戦士でも、家族を人質に取られたら裏切らざるを得ないと考え、少なくとも情報を与えてはならない。そこを徹底して、おそらく本当の抵抗組織は維持されているに違いない。

 

占領地の実際の様子は、日本からは分かりにくい。紛争が起こって銃撃戦になればテレビの映像などで状況を知ることができるが、日常生活にどんな形でどの程度イスラエル軍が介入し、どう管理されているのか、そこが分からない。実際も、この作品に描かれていたような悲惨さなのかも知れない。

 

占領下にある若い男女は、自分たちの結婚、人生設計についてどう考えているのだろうか?この作品では、そこを考えざるを得なかった。結婚しても夫が直ぐ殺されたら、残された妻は生活が大変になる。日本での結婚でさえ不安を感じるくらいなのに、支配下地域の若い娘は相当な覚悟がないと結婚に踏み切ることは難しいだろう。いっそ脱出して米国での未来に賭けたい、そう考えるのが自然ではないか?そしてイスラエル側も、現地の人口が減ることを望むだろう。でも、やがて米国で育ったパレスチナ人が、祖国の復興を望んで数百万人単位で入植してきて、話がさらに厄介になるかもしれない。

 

パレスチナ問題の解決は、現時点では誰も方法をあみ出せていないと思う。トランプ大統領が介入しようとしているそうだが、問題の複雑化を生むだけかも知れない。旧約聖書の時代から、占領によって決着をつけてきた歴史がある地域だから、より武力があるほうが他を圧する状況が、ただ続くだけと考えておいたほうが良いのかも知れない。

 

 

 

 

2018年2月 3日

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 (2013)

Locke

 

- Shoebox Films etc. -  

 

仕事を終えた現場監督。彼は不倫相手の出産に立ち会わないといけない。そうしないと、彼を捨てた父親と同じような人間になるからだ。しかし、仕事と家族を失いかねない状況で、彼は苦悩することになる・・・

 

DVDで鑑賞。本格的な映画というより、舞台向きの戯曲といった印象。出てくるのは主人公だけで、あとは声の出演のみ。これは完全に舞台向きの設定だと分かる。おそらく元々は舞台を想定して作られたが、誰かが気に入って映画化したのではないだろうか?あるいは、監督自身がアイディアに乗ってしまって、後先考えずに制作を進めたのだろうか?

 

結果的に、この作品は興行的に良い成績はおさめられなかったらしい。広く大勢の観客に受ける内容ではなかったから、仕方ないかもしれない。でも、出来栄えは素晴らしかったと思う。まず、アイディアが素晴らしかった。絶体絶命に近い主人公の境遇、なぜ主人公がそんな行動をとらざるを得ないかという設定、主人公に絡んでくる会社の上司や部下、そして懸命の工夫によってトラブルを回避しようとする経緯、それらは教科書にしても良いくらいの完璧さだった。カメラの配置、直接主人公を見せるか、何かに反射して映すかなどの工夫も素晴らしかった。

 

一人芝居をやっていたのはトム・ハーディー。腕力自慢のタフガイを演じることが多い彼だが、役柄が違っても実にうまく演じていて感心する。厳しい状況でもときおり笑顔を見せる演技がリアルさにつながっていたように感じた。人はやばい状況で、逆に笑いが増えることがあるから。

 

優れた作品ではあった。しかし、これは映画である。映画向けに検討しなおすべきではなかったか?車内だけで物語を進めようというのは実験的で、芸術的な面では良いかも知れない。面白い趣向だと感じてくれる人は多いだろうが、映画の場合は家族を含めて大勢の人達が同時に観ても、ある程度の共感に誰もが浸れることを目指さないといけない。最初からビデオ屋に直行するような企画では、さすがにマイナー過ぎて感心できない。芸術性、特異性とともに、一般性も目指すべきと思う。

 

そのために、おそらくだが他の人物も登場させたほうが良かったのではないだろうか?回想シーンや、主人公の頭の中を映像化するようなシーンでも良い。どうしても一人芝居のスタイルにこだわるなら、画面を分割して他の人物を小枠で同時に映すとかしても良い。相手の顔だけは映して、相手がいかに怒っているか分かりやすく演じてもらうだけでも効果的だろう。声の出演だけでは、映像の迫力の面で苦しいことは間違いない。

 

 

 

2017年8月12日

大いなる眠り(1978)

The_big_sleepua_2

- United Artists -

ツタヤのDVDで、なぜか目立つところに置かれていた作品。新たにビデオ化されたのか、権利関係が変わったのか、理由は分からない。

ツタヤは、「今月はこの作品を売り出すぞう!」といったキャンペーンをやっているのかも知れない。おそらく仕入れを定期的にやって、見逃されていた人気作品を再度売り込みたいのでは?

観ていて、これは「三つ数えろ」のリメイク版だったと気づいた。リメイク版があることは知っていたが、ロバート・ミッチャムが主演した作品があったことを忘れていた。しかし、なぜリメイクしようと思ったのか?ミッチャムの希望か?

この作品は、舞台がイギリスになっていた。舞台が異なった理由はよく知らないが、やはりオリジナル版との違いを出すためだろうか?でも将軍が、イギリスでは優雅に暮らせるのか?それは設定として無理があるような気もした。もともとの大金持ちが将軍までやれば別だろうが、普通はそこまではいかないのでは?

ボガード版は理解に苦しむ作品だったが、リメイク版でも難解さは相変わらず。ストーリーがかなり複雑で、納得に苦しむ部分もある。難解なために、謎解きの魅力はあると思うものの・・・

女優さん達は今風だった。ヌード写真を撮られる役は、キャンディ・クラークという方が演じていて、70年代の女優の雰囲気の衣装、ヘヤスタイルだった。時代設定として、70年代を考えていたのだろうか?

ポルノ女優のようなキャラクターは、作品の中では重要だと思う。ヌードを見せるサービスで、主人公が困った様子でも見せたら面白くなるし、男性客を惹き付けるためには、ヌードを宣伝に一瞬でも使わないといけない。少し出し惜しみしていなかったろうか?

もう一人のサラ・マイルズ嬢の魅力はよく分からなかった。彼女は絶世の美女タイプの女優ではなく、悪女の雰囲気が漂うローレン・バコールタイプでもない。個人的には、演技力はそこそこでも良いから、色気たっぷりに主人公に迫り、色仕掛けで悪さをするような女優のほうが良くなかったろうかと思った。

オリヴァー・リードやエドワード・フォックスといった懐かしい役者達が出演していた。イギリスの会社が中心となって作られたかららしい。だからといって舞台をイギリスにしないといけないのだろうか?

「三つ数えろ」とは微妙にストーリーが違った。ラストでついつい銃の乱射シーンがあるものと期待してしまったのだが、英国流に終わったようだった。拍子抜けに感じた。

 

 

2016年11月25日

お買い物中毒な私!(2009)

- 20-40代女性 -

高級ブランド品あさりのために破産寸前の女が主役。ファッション雑誌のライターを目指して就職活動をしているうち、経済専門誌で一躍有名になってしまうが、そこに借金取りが現れ・・・

・・・・緑のスカーフというペンネームが印象的な小説が原作だったのではないかと想像した。

この作品の観客として考えられる対象は、20-40代くらいの女性だけではないかと思えた。女性でも、もっと上の世代にはあんまり共感を与えにくいのでは?子供、男性、老人には、それほど面白い作品とは思えない印象を受けたのだが、よく解らない。

ヒロインを演じていたのは、「華麗なるギャツビー」で不倫妻を演じていた女優。ギャッツビーでの女と比べたら、この作品ではずっと上品な役柄だったが、それでも何かのあざとさ、軽さを感じた。良い意味では庶民っぽい。

彼女の演技力のせいかもしれないが、もともと上流階級をイメージさせる顔立ちではないのかもしれない。彼女の衣装も、本当にブランドものかと疑いたくなるような趣味のもので、他のラブコメとはパターンが違っていた。

ラブコメのヒロインにも色々なパターンがあると思う。とことん可愛らしい女優や、ライバル心を燃やすガッツを見せるタイプ、スタイル抜群だが何か精神的な欠点がある、そんなキャラクターが多い。このヒロインは、中毒がその欠点だった。

買い物中毒は実際にも多いと思う。特にカード支払いが多いアメリカの場合は、決済の失敗により破産宣告を受ける人も多いのでは?日本人の田舎者より賢いように思えるアメリカ人でも、経済的な状況を把握することは難しいと思う。給与が減ったりすれば、一気に困った状況になるだろう。

ヒロインの場合は派手な買い物をしすぎただけで、解雇や減給が破綻の原因ではなかったようだが、破産というのはコメディになりにくい設定だと思う。この作品では軽く問題解決していたようだが、実際のことを考えると大変だろう。

この作品の中で、ショーウィンドウのマネキン達が動くシーンは良かった。単純だが効果的で、動きにはバレリーナを思わせる優雅さがあり、しかも彼女らは美しい衣装を着ているので、センスの良い画像に思えた。

ヒロインの相手役は、こんな役柄がピッタリの印象の俳優だった。女優の相手役として映えるタイプの、独特のナイーブな個性の持ち主のようだ。

 

2016年10月14日

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976)

- 飲み屋の善き女 -

衛星放送で鑑賞。シリーズ17作目という。

冒頭でサメを釣る話が出てくるが、かなり残酷なシーンもある。大人としてはギャグ的で笑えるが、おそらく外人の感覚ではグロテスクと感じそうな印象。この作品は夏休みを意識して公開されたかどうかは知らないが、あれを小さな子供が笑って観れたかどうか、少し疑問にも思った。

あらためて考えてみると、当時のギャグの中には、かなりの差別意識やブラック・ユーモアの要素があった。ドリフのギャグでも、明らかに卑猥なものが結構あったし、今ならネットで集中攻撃を喰らいそうなセリフも、ネットがないのを良いことに、堂々とやっちまっていた。

あの頃は、自由な雰囲気が今よりあった気がする。団体行動においては、今より厳しい規律があったと思うが、娯楽の世界に限れば、抑圧を発散させようというかのように、随分と激しい笑いがあった。一種の冒険精神のようなものだろうか?

この作品のヒロイン、太地喜和子が抜群に素晴らしい。宴会において中心となる、飲み屋の元気な女の雰囲気が充分に出ていた。身の上話の場合は一転して不幸そうな、いかにもありそうな感じが分かるし、様々な調子で演じ分けができるようだった。彼女が出たドラマはテレビではよく見ていたが、印象が強かったわけではない。でも、この作品の彼女は、もはや芸術的でさえある。

よくは分からないが、不幸を経験しているから、飲むと一気に陽気になるのか?あんな飲み屋の女、以前は時々それらしい人を見る機会もあったが、昨今は飲み屋街にいっさい行かないので、知り合う機会もない。宴が盛り上がり、楽しい飲み会になるので、客としては最高の店員になる。

そう言えば、熊本地震で建設関係にお金が流れているので、飲み屋の中には景気が回復した店もあると聞く。建設労働者は飲み屋が好きらしく、業界内部で動く金額も大きいから気持ちも大きくなるのだろう、盛り上がっているらしい。街のためには良いことだ。大地喜和子みたいなホステスが、頑張っているかも知れない。

岡田嘉子も出演していて驚いた。小学校の頃だったか、一時期日本に帰ってきて、その時の報道で亡命の経緯を知った女優さんだが、とてつもない経験をした経歴が、いかにも何か過去にあったのだろうねと思わせる雰囲気につながっていたかも知れない。

宇野重吉も左翼系の劇団員だったらしいので、詳しくはないが実際に岡田嘉子とは交流があっただろう。少なくとも、当時の一定以上の世代は、彼らのたどった道を知っていたはずだから、感じるものがあったに違いない。

今回の寅さんの恋は、途中から恋よりも金のほうに注意が移ってしまい、なんだか曖昧なままに終わってしまったようだった。大地は、シリーズでその後の出演がないようなので、非常に惜しい気がする。その後も恋模様があったら、いろいろ話が発展しそうだ。

2016年9月11日

黄金のアデーレ 名画の帰還(2015)

Woman_in_gold

- 不利を承知? -

ヘレン・ミレン主演の伝記的な映画。DVDで鑑賞。

クリムトの絵の裁判のことは、報道を読んだ記憶がある。でも、特に興味を惹くものではなかった。絵の歴史のせいかも知れない。古典的な作品なら、もっと興味を持ったろう。この作品も、子供の興味を惹くような内容ではない。子供や若者は退屈するだろう。

クリムトは日本の屛風画の影響を受けているそうだ。西洋美術の解説書を読んで知ったのだが、たまたま本人が職人の家に生まれ、日本の金箔絵画の手法を再現できた関係で、写実的な人物像と、幾何学紋様の背景を組み合わせることができたのだろう。アデーレ像は、日本人の感覚では、ちょっとシュールな印象を受ける。

この作品の前に、BBCはドキュメンタリー映画を作っていたと言う。それが、この作品の成立に重要な働きをしたようだ。番組を観た人が、これをドラマチックに再現したいと考え、映画化されたという。でもドキュメンタリーのほうが、テーマにふさわしいように思う。

ヘレン・ミレンは英国女優だから、主役にふさわしかったかどうか、少し疑問も感じる。リアルさを徹底したいなら、オーストリアにゆかりのある女優のほうが、なんとなくだが、迫力が出る。彼女はロシア系らしいが、オーストリアにゆかりがないのでは?でも、演技やセリフの発音に関しては、日本人が気づくほど妙な点はなかった。

弁護士役のライアン・レイノルズは今回、非常に素晴らしい。坊ちゃん風で真面目そうな印象、どこか抜けていて人が良さそうな表情は、こんな役にはピッタリだった。切れすぎる印象の俳優では、役柄には向かない。観客の共感を生みにくいと思う。実際の弁護士氏は全く違った強面の人物かも知れないが、この映画のキャラクターは、ストーリーに個性が合致していた。

実在の人物、マリア・アルトマンの運命には驚愕する。豪商の一家に生まれて、有名な芸術家と接する機会があり、やがてナチスに追われて米国に渡り、名画の権利を争う運命とは、いかにも映画的、まったくもってドラマチック。

しかも、絵画の一部はヒトラーの別荘に行ったとなれば、当然ヒトラーが鑑賞したはずだし、首飾りが幹部の奥さんの手に渡ったなど、驚きの経緯。この映画のホームページによれば、ヒトラーのお兄さんによって、彼女の叔父は海外に逃げることが許されたという話もあるそうだ。

アデーレの絵は有名だから、それを米国に持って行くとなると、国宝を失うような感覚がオーストリア側に生じると思う。権利関係の法的な面はともかく、心情的に国家の財産が奪われるような感覚になるはず。そんな感覚の強さに関して言えば、凄く歴史のある芸術品なら、それが強固な感情になり、いかな名画といえど歴史が浅いなら、権利関係を優先・・・そんな判断が、一般的ではないだろうか?

だが、奪われた側からすれば、時代がどれだけ経とうとも、強奪を許すことはできない。権利が優先であろう。「ミケランジェロ・プロジェクト」も、その基本的な認識で、この作品とつながっている。アイディアは、同じBBCの番組から得たのかも知れない。

日本軍がどれくらい強奪をしたのかが気になる。日本ではあまり報道されないから知らないが、実際には中国朝鮮の骨董品の中に、強奪したものも多いのではないか?取った人物を特定できないように工夫されたら、買ったものか取った物か、すぐに曖昧になる。そして返還に応じる場合には、そのための法律が必要だろうが、この映画で使われたような法律は、日本にあるのか?

日本を舞台にした作品は、ちょっと作りにくい。いつか菅総理の時代に何かを返還しようとして、右翼か学者が問題視した事件があったが、あれは法的にはどう扱ったのだろう。総理だからといって勝手にやって良いはずはない。強奪品を返還する際の規定は、どうなっているのか?そもそも規定があるのか?

逆のパターンで、今も法廷闘争になっているそうだが、対馬の寺の仏像が韓国人に盗まれた事件があった。大昔に日本側が盗んだ可能性はあるものの、倭寇の時代のことは証明が難しい。事実関係の確認なしに奪い去った韓国人の行為は、窃盗に相当してしまう。倭寇の行為を正当化するわけではないが、法的な手続きをやって欲しかった。韓国の裁判所は、最終的にどんな判断をするのだろうか?

感情がともなう問題は、法律だけで仲裁、解決するのは難しい。でも、そうすべきと思う。強奪、盗難、実力行使で事を決するのは、歴史的に考えると正当化されるべきではない。問題点は、その際のルールが有力な勢力が決めたものになる点。多くは欧米によって、勝手放題のルールができる傾向はある。決め方に問題はある。でも、無駄な争いを避けるために、なんらかのルールは必要だろう。

法に従えば良いとは限らない。‘米国市民の権利は、外国に要求することができる’・・・これは無茶な法律だと思う。武力、国力が充分にある米国だからこそ実効性もあるが、小国にこんな規定があっても意味がない。米国政府が後にいたからこそ、アルトマン側は外国との交渉が可能になったのだが、こんな規定のある国はそうないのでは?もしオーストリア側に同じ程度の権利を持つ相続人がいたら、どう判断すべきだろうか?国の力関係で決するのか?

エジプトのミイラも、大英博物館に行ったまま、返還されそうな気配がない。パリのオベリスクもそうだ。それが、残念ながら普通一般の状況。英仏がとんでもなく没落したら、状況は変わるだろうが・・・

そもそも当時のオーストリアの狙いがよく分からない。投資を呼び込む必要性から、諸外国の要求を飲んだのか?あるいはユダヤ系の圧力で、やむなく審査会を開かざるをえないと判断したのだろうか?心から出た、自発的な行為だろうか?その際に、米国の無茶な法律が自分たちを不利な立場に追いやると、考えつかなかったのかも知れない。結果として、悪役に回ってしまった。でも、不利を承知でそうしたとしたら、勇気を称えたい。

 

 

2016年9月 2日

男はつらいよ 奮闘篇(1971)

Syochiku_2


- マンネリなし -

シリーズ7作目という。8月9日、衛星放送で鑑賞。

寅さんシリーズは数作観たが、この作品の質の高さは今まで鑑賞したものの中で一番と思った。他の作品ではオーバーな動作が目立ったり、年齢的に完全に役は無理と感じたりするものもあった。この作品では、それがない。時代も合っていた。この当時はズッコケヒーローが色々いた。モーレツの裏返しのズッコケに、人気があったのだろう。

ヒロインの榊原るみは、劇場主には歌手かテレビタレントのイメージが強いが、この作品では素朴そうな表情が素晴らしく、役柄を充分に表現して実力のある本職の女優のように感じた。小さい頃から劇団で活躍していたそうだから、現場でもまれた演技力だろう。大スターが軒並み出演している印象のシリーズで、彼女の出演は例外的だったかも知れない。

このヒロイン像も変わっている。知的障害者のヒロインとは、ともすれば憤慨する客だって出てきそうな話。障害はあっても愛想は良い娘であること、演じる女優の可愛らしさ、そんな条件がうまく揃わないと、恋物語が成立するはずがない。主人公とどのように別れるかも、描き方が難しい。

この作品では涙のお別れシーンが結局なかった。そこらへんを考えてのことだろう。喜劇で別れのシーンは基本的に難しいものだろうが、この作品の演出の仕方は、実によく考えてあった。

寅次郎の母親役のミヤコ蝶々も実に味のある役柄だった。息子が情けない能なしぶりを示すのを見た時の反応、古里で無理をして金をかけて裕福な姿を見せようとする姿、そしてそれを慮る店の皆々など、細かいセリフの内容、設定に感心する。

7作目くらいは、一番乗っている時期かも知れない。シリーズが数十作に及ぶと、さすがにマンネリ化が生じるだろうが、この頃は新しいアイディアをどう盛り込むか、いかに過去の作品とつながりを維持できるか、パターンをちょっと変えられるかなど、やってて楽しい部分も多かったと思う。作り手も歳をとる前でないと、体力的能力的な無理も来るだろう。

寅さんの個性はどのように考え出されたのか知らない。監督が中心になって考えたのか、渥美清の元々のアイディアなのか?本職の芸人だった渥美清は、おそらく長いことかけてテキ屋の口上、仕草などをモノにしていったと思うのだが、本職とは微妙に質が違う気がする。本職は、もっとガナリ声で迫力があることが多い。一日中声を張り上げるから自然とそうなる。渥美の場合は、まるでインテリ青年のような声でやるから、その違和感がおかしい。

そういえば最近、祭りでテキ屋の口上を聞くことがなくなった。露店はたくさん出ているが、皆静かに座っているか、ただいらっしゃいなどと言うばかり。子供達相手に即興でのやりとりがあれば楽しかろうと思うのだが、どうして今は見かけなくなったのか?

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |