映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主


Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« キャッツ(2019) | トップページ | エンド・オブ・ステイツ(2019) »

2020年9月 8日

自分のことは話すな(2019)

Gentosha_20200724141701

- 吉田珠央著・幻冬舎新書 -

どのような生き方をするかで、人は悩むものと思う。劇場主のこだわりと言えるものは、口先で人を操り、自分の利益を追求する人間になるなという事である。実際には、金持ちに憧れるあまり、ついつい誘惑にかられることも多いのだが。

ただ、もしできるなら日々の仕事に精を出し、責務を果たし、家族や社会に貢献したいと考えてはいる。いろいろ学び、諭され、経験していく中でそうなったのだが、後悔したくないという怖れから、そんな考え方になったのではないかとも思う。

おそらく自分でソフトバンクやユニクロのような会社を立ち上げていたら、こんな考え方はできなかったろう。動く金額が大きければ、考え方も変わるはず。ショボい商売をやっているから、利益を追求できないのか?

今の劇場主の考え方が、現実社会で自分の利益に通じることはない。経済的、精神的にも損する道になる。死ぬときには自己満足に浸って穏やかに天国へ行けるかも知れないが、生きている間は辛いままだろう。商売や人づき合いの面での利益がない考え方だからだ。  

劇場主とは違い、若い頃から上司に引き立てられて出世街道を突っ走る人もいる。人物評価は最高、やり手で、管理能力や人間性、すべてにおいて高いレベルとされるような人物。高級官僚や代議士、大会社の社長などの中に、そんな人は多い。でも、大成功をおさめた人物だから優秀とは限らない。人間性も分からない。

大きなスキャンダルが明るみに出て、その本性がさらされてみると、意外なほどに普通の人間で、ただ野心や欲にまみれていただけと想像される場合が多い。逆に言うと、野心や欲があれば、普通の人間でも社会的成功を狙えるとも言える。それは悪いことじゃない。

暴かれた実態がとんでもない悪人、犯罪者の場合に、その人物が高い評価を受けている間、本質に気づかなかったのは・・・それは我々が口先や雰囲気に騙されていたからだろう。騙されてはいけない。そして騙すことも避けたいと、劇場主は考える。自分が悪徳にまみれ、人のことを言える立場じゃないのは嫌だ。

この本は接遇教育に近い内容である。接遇トレーニングの講師は、旅客機の客室乗務員出身の人が多い。この本の著者もそうらしい。

人との会話は難しい。劇場主もついダラダラと、家内への愚痴や自分がやった運動メニューの紹介などをしてしまい、ハッと気がつくと、相手がどう返事したらよいのか困惑している様子が見える。内容も思いやりもない話を会話と勘違いしている。このままではいけないと考えて、この本を購読した。

この本は、そもそも人の生き方を論じる内容ではなく、接遇の仕方を解説するもの。ある意味で本心とは関係なく、条件反射で応対でするための、そんな受け答えのトレーニングメニューに関する本だと思う。商売をするうえでの、マニュアルと思えばよい。条件反射に精通しても、人間性に影響するわけではない。

トレーニングによって得た能力で顧客を獲得し、社会的に成功するのは良いことだが、実態がクソ野郎のままというのは望ましくはない。我々は、おそらく接遇対応が優れた人物を信頼できると感じて選んできたのだが、結果として役立たずのクソ野郎を選んでいたのかも知れない。接遇の質と人間の質を勘違いする浅はかな判断がなされたのだろう。

ただし、口先の反射をおろそかにしていると、自分の評価を下げる結果になる。会話を軽んずるべきではない。中身も立派でありたいし、受け答えも一定のレベルでありたいと願う。   

今日、支持を集めて議員になった人達が、コロナ対策で右往左往し、見当違いの施策をやらかす姿を繰り返し見ている。もちろんコロナ対策は難しいが、人として信頼できない連中が多すぎる点が一番の問題だと感じる。

端的に言うと、クソ野郎に命令されて、自粛を続けないといけないのは腹が立つ。指示内容は正しいのかも知れないが、その前に指示する人間が信用できないので、「仕方ない、あんたが言うならそうする」という風な了解ができないのだ。

たぶん、昔からそうだったのだろう。第二次大戦の時代も、当時のエリート達が無茶な判断を下し続けたはずだ。当時の首脳たちは、選ばれた優秀な人達だった。彼らは毅然としていて、きっと素晴らしい受け答えをしていたに違いない。彼らが選ばれたのは、商売レベルでの人の評価と、戦略レベルでの評価を間違えていたからだと思う。

彼らを選んだ人間は間違っていたし、そんな人間を選んだ先達も間違っていた。評価を、間違い続けている。

・・・そんなことと関係なく、この本は成立している。この本に「真心」などの単語は出てこない。そんなものの必要なく、日常が営まれている現実を忘れてはいけない。

 

 

 

« キャッツ(2019) | トップページ | エンド・オブ・ステイツ(2019) »

無料ブログはココログ