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2020年9月14日

記憶にございません!

Hit-me-anyone-more-time

- 東宝 -

首相の黒田啓介は記憶喪失になる。秘書官たちの協力によって、なんとか仕事をこなそうとするが・・・DVDで鑑賞。三谷幸喜監督作品。この作品は舞台用ではなく、最初から映画用の企画だったらしい。

主演は中井貴一。威厳のない人物を上手く演じていて、無理を感じなかった。良いキャスティングだったと思う。可能ならば、元々の態度を表現する映像では、政治家が実際にやりそうな、定型文を繰り返して煙を巻こうとする答弁をして欲しかった。ただし、そうすると現実の政治家を連想させるから、クレームがつくと判断したのかも知れない。  

作品全体として、大人しいコメディという印象。爆笑するようなシーンはなかった。流行りの漫才、コントほどの強烈さはなく、古めかしさを感じた。ただし、喜劇映画の場合は、テレビのコントとは笑いの質が違って当然だと思う。激しいコントを、続けて2時間も観ることは考えにくい。

それに映画の場合は、真面目なシーンも必要だ。この作品で親子や夫婦の関係が破綻している姿を描くことは、ストーリーのために必要だったし、テンポのためにも必須だったと思う。時間的な構成のバランスは良かったはずだ。 

でも個人的には、もう少し爆笑が欲しかった。「あのシーンは傑作だった」と多くの人に感じてもらえるシーンが欲しい。何かが足りない印象。万事につけ、激しさが足りていなかった。お色気も不足していた。

主人公を誘惑する野党の党首は、もっとグラマーで色気全開のアバズレタイプのほうが良かったと思うし、主人公もパンツ姿くらいにはなって欲しかった。あるいは、相手は女性ではなく大柄のオカマタレントではだめだったろうか?

周囲の人間が主人公に絡み、とことん人格批判を繰り返しても良かったと思う。セリフも動作も昭和のサラリーマン映画のようなものが多く、あまり新しさを感じない。今風の登場人物がもっといても良かったと思う。

この作品は安倍政権が続く間に制作されたが、安倍総理をイメージする内容ではなかった。そんな内容だと批判を呼んでしまうと自粛したのかも知れないが、それが最も面白さを欠く原因だったかも知れない。露骨なくらいの皮肉があるほうが面白いはず。ただ、一般的な政治の醜さ、質の低さを感じるエピソードは描かれていた。  

官房長官だった菅氏は、映画と違って、総理を替えるほどの権力は持っていないと思う。安倍総理のほうこそ、頭一つ抜けた実力者という印象がある。ただ、安倍総理が独断で権勢をふるう印象は受けない。ちゃんと党幹部の了解をとって段取りを踏み、集団で意思決定をやっている印象を受ける。

実際には選挙の際の助力などで圧力をかけ、かなり強引な取引もやっているようだが、安倍総理自身がそれを指示しているようには見えないし、実態は分からない。参議院広島選挙区のように、対立候補を持って来ると言われたら、たいていの政治家たちは官邸の意向に従うと思う。

政治家が自分の信念で動けるためには、相当な実力がないといけない。そのために、権力=主流派を奪い取ろうとする争いが必ず起こるし、多くの妥協の結果、信念を失ってしまうのも、誰だってあることだろう。質の低い権力闘争は、国家にとっては不毛な争いだ。

でも、選挙制度や政党政治の仕組みを変えるには、気が遠くなるような作業を要するから、現実には改善できないと思う。国民の多くが首相を尊敬し、子供が総理を目指すような国になることは、非常に難しい。  

可能性に過ぎないが、今回の新型コロナウイルスの流行は、政界の問題点を考える人を増やすきっかけになったかも知れない。政権内部の人間の愚かさが明確になってしまったので、さすがに自分たちの選択の間違いに気づいたはずだ。

飲食業や観光業に従事する人達の中には、政権に恨みを持った人もいるだろう。政治家と役人のすべてが大バカ者に思えたろう。質の高い行政府を作る必要性に目覚めたかも知れない。

ただ、そうでない人も多い。自分の家族や仕事に直接の影響がなければ、新しい政治を求めたりはしないのも、自然なことだ。直接害を受けた人間が首相を代えたいと思っても、同じ感覚になれない人には分からない。だから、根本的な変革には思い至らないだろう。

 

 

 

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