映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主


Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 家族を想うとき(2019) | トップページ | パラサイト(2019) »

2020年8月13日

帳簿の世界史(2018)

Yjimage

- ジェイコブ・ソール著・文春文庫-

南カリフォルニア大学教授である著者が、主に複式簿記の歴史と、様々な国家や都市が会計の影響で興亡する様子を解説した本。文庫本を購読。初版は2015年で、文庫本は2018年の発売らしい。

実に興味深い本だった。視点が斬新だ。メディチ家やルイ王朝がどういう経緯で衰退して行ったのかを、帳簿の状況を元に解説という新しい視点を与えてくれた。ただ、偏っているとも感じる。帳簿だけで歴史を語るのは無理だろう。国力全般の中の、一要因が帳簿であると考えるのが、より常識的だ。 

ルイ14世以降の時代は、フランスの財政が厳しかったというのは教科書にも書いてあったと思う。革命の原因のひとつが財政破綻にあるという記載に記憶がある。ただ、それだけなら、他の国にも革命が起こりそうだ。多々ある理由のひとつに過ぎないはず。 

劇場主は簿記を学んだことがない。クリニックの会計も、税理士任せである。家計簿もつけていない。若い頃から毎月の使途不明金が10万円以上あった。そんな劇場主だが、家を新築した後や開業後の数年間の金欠状態を乗り越えることができた。劇場主がやったような、ひたすら節約するだけのシンプルな対応だけでも、かなりのことはやれる。

でも、複雑な経営になると話は変わる。複数の商人が金を出し合い、多数の船を航海に出し、沈没や海賊に襲われるなどのリスクを越えて収益に結び付けようという場合には、さすがに倹約だけじゃダメだと理解できる。しっかりした契約、船を失っても持ちこたえる財力、保険制度、海賊を撃退するための海軍、そして正確な帳簿が必要だろう。

不思議なのは、ギリシアやフェニキアだって広範囲で商売をやっていたはずなのに、取引に問題がなかったのだろうか? ローマのエリートたちにも軍の会計を学ぶ時期があったというから、おそらく各国とも、必要に応じた会計記録はやっていたはずだ。ただ、しっかりしたルールがないと、努力した挙句に破産してしまい、歴史の表舞台から脱落という結果になる。フェニキアやギリシアでは、それが普通に起こっていたのかもしれない。 

会計だけじゃなく、武力をどのように磨き上げるか、人口を維持し、生産量をどのように維持するかなど、たくさんの要因の全てが上手く管理できないと、ライバルとの争いに敗けてしまうはずだ。 会計のレベルが高かったイタリアの都市も、結局はドイツ地域やフランス軍の武力には敵わず、たびたび支配下に落ちていた。帳簿整理だけじゃ、生き残れないことも間違いない。 

大企業の不正経理がたびたび露見するが、劇場主には不正がどうやってできるのか、よく分からない。会計処理の時期を操作したりするらしいが、ずらしたら厳罰といった法規制はできないのだろうか? 裏帳簿を作る企業も多いと聞くが、露見しないでやれる理屈が分からない。今のようにIT機器が発達した時代、金の動きは瞬時に把握できるものではないのだろうか? 

たとえば国が管理する会計ソフトを配布し、全企業がそれに入力する。入力に不正があったら破産寸前になるほどの税金を取る、恣意的判断ができないようにする、そんな管理は企業の成長を抑制するのだろうか? 投資先や提携先を管理するわけじゃないので、出来ないことはないように思うが、たぶん企業側は自由度が減るのを嫌がるのだろう。

米国でも大統領が代わると新しい法案が通り、何かの規制が外され、好景気につながることが多い。そのあげく、大金持ちに資産が集中したりで不正が野放しになり、酷い被害が出て、また規制というサイクルを繰り返している。規制については、いじり続けるしかないのかもしれない。

2020年はコロナウイルスによって世界中の経済が影響を受けている。日本の財政がどうなるのか、不安に思う。でも、売り上げが激減した商店を救うために、とりあえず一時金を与えたり貸したり、税金を免除したり家賃を代行したりは必要だと思う。それも速やかに。

企業の支払いは、会計操作によってでも、遅らせる必要がある。そのために、法令の改正が必要かもしれない。そして、おそらく金の流通量を増やす必要がある。もし経済が年内に安定したら良いが、そのためには感染が緩徐なスピードで進み、店を再開しても大勢に影響ないようにする綱渡りが必要だ。国の帳簿はもともとの赤字が凄いので、他の国よりも悲惨なものになるかも知れない。

 

 

« 家族を想うとき(2019) | トップページ | パラサイト(2019) »

無料ブログはココログ