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2020年6月24日

チーズはどこへ消えた?(2000)

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- スペンサー・ジョンソン著・扶桑社 -

迷路の中でチーズを探すネズミ2匹と、小人2人。彼らは、あるはずのチーズがなくなっていることに気づいた。さて、どうすべきか・・・・B6判の小型書籍を購入。古い本だが、続編が発売されたので本屋に並んだようだ。

自己啓発本、ビジネス本に属する書籍。でも童話にも近い印象。有名な本だから、タイトルは知っていた。「1時間で読めて、10年間役に立つ」と表紙に書いていあったが、確かにその価値がありそうな気がする。特に、挑戦している間に心理的に良い状態になっていく点が上手に描かれていた。 

作者は心理学者で、医学研究者でもあるという。複数の研究機関に所属しつつ、著作家としても活躍された方。この本は、着想や構成の仕方、表現の手法などに抜群のセンスを感じる。

本の厚さ、文章量も良く考えてあった。詳しい心理描写を加えて、読みごたえを深めようと考えることもできたはずだが、厚みの薄い本に留め、エッセイや童話のような雰囲気を保つ方を選んで、善き読後感を生むのに成功していた。

他の描き方もありえた。たとえば、その場に立ち止まって待った人の心理を詳しく描く方法もあった。話は暗いものになったろうが、問題点をより浮き彫りにする効果はあったかもしれない。

小人の二人の個性の違いは分かったが、ネズミ二匹の個性については、それほど重視して掻かれていなかったようだ。ネズミの二匹にも、もう少し違いがあってはいけなかったのだろうか? あせり過ぎて暴走するネズミがいるとしても良かったはずだが、そうすると話の論点がぼやけると考えたのだろうか?  

劇場主は、これまでの人生で迷いや怖れのために挑戦を止めたことがある。思い切って留学したり、都会の大学を目指したり、中央の病院に実習に行ったりしたら、人生はだいぶ変わっていたかもしれない。ただ、体力面の自信に欠けていた。

学生時代に腰のヘルニアを起こし、長時間の立位、座位が厳しいので、猛勉強や激務は難しいことになり、自分が最先端を目指せるイメージが湧かなかった。そもそも机につくことすら苦しい状況で、思い切りようもない。だが、頑張らない理由を探していただけかも知れない。

健康に自信がないと、日々の仕事をこなすことが、とりあえずの目標になってしまう。チャレンジする道は、自分の道ではない・・・そのイメージに従ったが、あれで良かったのかどうか分からない。思い切って挑戦して大きく挫折しても、得るものはあったかも知れない。  

「座して死を待つべきか?」・・・競争の激しい業界では、旧来のやり方が通用しなくなることも多い。家電業界は、まさにそれだ。かつて、日本には優れた製品が多かった。SANYOや三菱電機の家電製品は、つい最近までいろいろ利用させてもらったが、どれも長持ちして、衣類乾燥機は昨年まで、およそ30年間もお世話になった。冷蔵庫も20年くらい故障がない。

しかし、いまや売ってある家電は外国製が多い。製造コストの競争にさらされたし、国内需要の縮小などで良い要素がなかったから、白物家電企業が縮小するのは当然だ。あるはずの収益が消えた彼らはまさに、会社をどうするのかの厳しい判断を迫られたはず。

三菱電機は高性能分野に絞って、今も家電を扱っている。企業向け、高性能、大型で特殊、宇宙や防衛がらみなどの特徴ある領域に絞って生き残っていると思う。完全撤退した分野もある。携帯電話などは、さっさと見切りをつけたようだ。

内部では激しい論争、人事異動があったはずだが、今日まで会社を維持できているのは、すぐれた経営判断があったからだと思う。彼らに、この本は必要ないかも知れない。だが、彼らが果敢に新規分野に挑戦し続けていたら、どうなっていたろうか? アイフォンより優れた通信機器を作る能力はあったはずだ。どう転んだか分からない。 

「果敢な挑戦」・・・果敢すぎる挑戦が裏目に出ることも多い。待ったほうが正解だったということも多いのではないか? その場合、正解が印象に残りにくいだけで、実は挑戦の失敗のほうが圧倒的に多いのかもしれない。たとえば飲食店の開業は、8~9割が失敗すると聞く。挑戦すれば成功するわけじゃない。 

要は、事態をどうとらえ、適切な対応をとれるかどうかだ。素早く、正確に状況を把握し、行動に移る決断ができるかどうか。さまざまな能力が必要だ。

今年のコロナショックの経済的影響は大きい。もし今年飲食店を開業していたら、いかに腕が良かろうと絶対に閉店せざるを得ない。外出を自粛されたら、新規の開業は無理だ。新規でなくても、外食、宿泊、旅行関係の業種は、よほど基盤がしっかりしていないと立ち行くはずがない。今後もすぐに客が集まる保証はないから、廃業する店も多いだろう。それも立派な判断だと思う。

極めて厳しい時代には、チーズの求め方を考える必要がある。そもそも求めるべきか、考え直す必要も出て来る。この本は、2000年頃にIT業界に対応、あるいは挑戦する人達のバイブルになったのかもしれないが、今回のコロナショックの時期に通用するとは限らない。

 

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