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2020年6月18日

ホテル・ムンバイ(2018)

Hotel-mumbai

- アンソニー・マラス監督 -

ムンバイの高級ホテルにテロリストが籠城し、多数の死者が出る中、客の多くを救ったスタッフの行動を中心に描いた作品。DVDで鑑賞。

緊迫感が上手く表現された作品だった。興行的な面で大成功ではなかったようだが、作品の質は高いと思う。テロのシーンが非常にリアルで、客もテロリストも警察も、それぞれがどんな考え方で行動していたのかがよく表現されていた。

テロリストに対しては、好意的に描きすぎてもいけないし、無感情の怪物のように描いても事実と異なり過ぎるから、適切な線で描くのは難しい。人によって評価は違うだろうが、この作品の描き方は適切ではないかと感じた。

だが、おそらく関係者にとっては、生ぬるい描き方に写るかも知れない。逃げ惑った当事者にとっては、恐怖の描き方が不十分に感じられたか、あるいはトラウマが酷すぎて最初から観る気になれないほどかも知れない。 

主演は「スラムドック&ミリオネア」のデーヴ・パテール。弱い立場の青年を演じると、非常に味が出る俳優だと思う。殺されていく宿泊客たちも、それぞれが生き残ろうと努力している姿が描かれているので、「このままハッピー・エンドに向かうのかな?」と劇場主は思ってしまったが、ストーリーは甘くなかった。

現実もそうだったんだろう。殺された人質も、もしかすると見逃されるのかな?と、淡い期待を抱きながら殺されたはずだ。悲しい流れだったが、変に観客の期待に従いすぎるのも良くない。現実に近い形で描くことは、正しい判断だったと思う。 

今後もテロは繰り返されるに違いない。コロナウイルスが流行っている間、遠慮してくれるなら良いが、テロリストたちにとってコロナは関係ない事象だろう。 

あるいは、コロナショックによって起こる経済危機が、今後のテロの誘因になるかも知れない。景気が悪化すれば、弱者が先に職を失う。先進国に出稼ぎに行っていた人達が解雇され、社会不安が強まれば、犯罪やテロが増える可能性は高い。今後は国境管理も強まるかも知れない。

グローバルな人の動きが、今回の感染を広げた原因のひとつであることは誰の目にも明らか。当然、皆が思うだろう、国境を管理して病気が入るのを防ごうと。国境管理が強まり、人の往来が減れば、仕事を求めて移動していた人達が貧しい地域に押しやられる。豊かな国の不当な扱いに我慢できなくなる。これもテロを引き起こす理由になりうる。 

EUが目標としていた理念も、弊害が明らかになってしまった。EUの首脳や各国の政府が何を言っても、今回の惨状を引き起こした社会の仕組みを変えないといけないという強い圧力の前には、立場が弱い気がする。右翼政党の勢いが増し、国ごと地域ごとの対立が深まり、紛争の火種になるかも知れない。

 

 

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