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2020年6月16日

内閣官房長官(2020)

Mdn

- 大下英治著・MdN新書 -

現在の内閣官房長官、菅義偉氏の活躍を解説した本を購読。予想と違い、かなりの礼賛本で、批判めいた言葉はなかった。菅氏を直撃!と書いてあったが、何も攻撃していない。確認してから買えばよかった。 

著者の意図が分からない。普通の物書きなら、ある程度の批判も書くと思うのだが、それがない。客観性は気にしていないようだ。この本によって菅氏の活躍を知ることができたとは思うが、あまりに批判がなさすぎるので、誇張や忖度が入っている可能性も高く、内容を信頼して良いのか分からない。 

菅氏の様子をテレビで拝見すると、隙のない回答ぶりに感心する。無駄な言質を与えることがなく、それでいて言える部分は簡潔で明瞭に話す。それが過去の官房長官達より際立っていて、好感を持つ。そのぶん、人間味は感じられない。感情が感じられない点で、外国の政治家と比べると魅力はないのだが、官房長官という役目を考えると、魅力のあるなしよりも冷徹であってくれたほうが良い。

菅氏は、今の職務に最適な方だと思う。菅氏がたたき上げの政治家であることは知っていた。世襲議員が多いのは良くない。無能な人が多いからだ。ただし秘書上がりの人も、非常に良いとは言えない。利権の調整などの実務を習得できても、それは本来の政治活動ではない。それだけでは足りないものがあると思う。

氏が加藤の乱に参加した議員の一人であることも何かで読んでいた。あの時期に、加藤氏が党の行く末を案じて行動しようとしたのに、党側の逆襲に遭って惨敗したと見えて、残念に思えた。

当時も今も、日本をドラスティックに変革する必要はある。‘乱’のような大きな変革が望まれると思う。既得権益にメスを入れ、政治体制も経済界の在り様も変えないと未来はない。当時の森政権は、その点で見込みゼロだった。あの時点では加藤氏に賭けるべきではなかったのか? 小泉氏や安倍総理も改革をとなえたが、意味ある改革と言えるだろうか?

菅氏も結局、加藤氏を見限ったのではないかと思う。加藤氏に、そもそもの求心力、胆力が足りていなかった。菅氏があの時、加藤氏と最後までいっしょに行動していたら、今のような立場には立てていなかったはずだ。会派を渡り歩いた結果で実力者になったのだから、立場の一貫性に関しては疑問が残る。  

ただし、自民党がそもそも利権集団であって、政治集団ではないと考えるなら、派閥を渡り歩いても問題はない。権力中枢を目指した合理的な行為だ。 何かの法案を通したいと思えば、権力中枢の側に行かないといけない。その位置から官僚を脅さないと、誰も動かない。現実的行動だったと思う。

スキャンダルや災害、外国とのトラブルなどで、中枢は予想外の移り変わりをする。まさか返り咲くとは思えなかった政治家が長期政権を維持し、有力候補が中枢から排除される、権力争いと足の引っ張り合い、それに事故やスキャンダルが多発し、経過を予測するのは難しい。菅氏の判断は正しかった。運もあったのだろう。

菅氏の実務能力は素晴らしいと思うが、秘書タイプの人間で、指導者タイプの人とは感じない。実直な印象を受ける。それに菅氏が様々な法案に関わり、自分の生活を犠牲にして活動し、たとえばスマホの通話料や拉致被害への対応に改善があるとしても、日本の長期的衰退を止めることができるとは思えない。菅氏に、未来への期待感を感じさせる力はない。  

実務をこなし、手続きに則って細かい改善を目指すのは民主主義の中での正しい方法である。ただ、情勢の変化が激しい場合は、ドラスティックな対応も必要。IT社会への対応、中国の台頭、少子化などは、細かい手続きに終始して良い余裕のある問題とは思えない。コロナへの対応だって、もっと瞬発力が要求されたと思う。 

日本の政策では、まず少子化のスピード調整が必要と思う。それを達成できずに、他に何か達成しても、ピント外れの成功に過ぎない。長期的に見て、日本が衰退しないと多くの人が認識できる必要がある。その絶対条件に目途が立っていない。手続きに終始した細々した政策の効果は、このままでは霧消する。菅氏を含め、自民党の近年の活動すべてが、まだ意味を成していない。

菅氏の実務能力を褒めるより、必要なことが何か、考え直すべきだ。

 

 

 

 

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