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2020年5月17日

Girl/ガール(2018)

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- ルーカス・ドン監督作品 -

バレリーナを目指す主人公はトランスジェンダー。厳しい練習と、性転換治療、自分を見る周囲の目に苦しむ・・・・DVDで鑑賞。 

この作品はカンヌ映画祭で賞を取っている。夢を実現しようと努力するヒロインの姿は、多くの人の共感を得るものだと思う。主役は、実際には既に有望株として知られる男性ダンサーらしい。体型は非常に美しく、中性的で、女性役にもそれほど違和感がなかった。

でも背筋に関しては、女性では滅多にないくらい発達しており、その点だけは、あえて見せる必要がなかったのではないかと感じた。それに、やはり女性のダンサーが演じたほうが、より可憐で薄幸な少女の雰囲気が出て、善き効果が得られたかもしれないと思う。

また、恋愛に関するエピソードの扱いが小さめだった。男性との交際では、現実には多くの障害があると思う。それにもっと比重を持たせると、より心に染み入る物語になったのではないだろうか?相手や本人の戸惑いは、性をめぐる認識のありかたが難しく、現実にも大きな問題だと思う。 

音楽の使い方にも疑問を感じた。前半部分では、美しいダンスを見せるシーンでも、音楽がほとんど流れない。せっかくの美しい踊りのシーンなら、ヒロインの希望を表現し、美しさを強調するためにも、もっとBGM的な音楽を流すべきだと思った。シーン同士の連携というか、編集の仕方にも問題があったかも知れない。シーンごとにブツ切りのような繋げ方だった。 

この作品には、トランスジェンダーの方達から多数の批判が寄せられているという。おそらく、彼らからすると微妙な感覚の違いがあるに違いない。しかし、実際にトランスジェンダーの感覚通り忠実に描くとしたら、シスジェンダーの理解を越えた描き方になる可能性もある。何を言いたいのか、理解できないかもしれない。

いっぽうが素晴らしい表現だと感銘できるような表現は、他のほうにとっては「理解不能で異常な表現」かも知れない。芸術的に描くほど、受け入れられ難い一種の陶酔に近い出来上がりになるだろう。両者にとって素晴らしい表現は、なかなか難しい。あくまで作品として成立することを優先するなら、シスジェンダーの作り手が、それなりの感覚で作品を作るのも仕方ないかなと思う。

ホルモン治療を受ける場合、将来の癌の発生率に注意し、納得しておく必要があるようだ。乳癌家系の人の場合、女性ホルモンの投与は癌の発生の可能性を上げると思われる。子供の頃に、将来の癌のことを説明されてもピンと来ないかもしれない。後になって、本当に癌が発生した時に、理解できなかった自分の判断を悔やむことになるのだろうか? 

劇場主の身近にトランスジェンダーの方はいない。おそらく、隠されていて気づかないでいるだけではないかと思う。劇場主のように魅力的な男には、男女を問わず惚れてしまう人も多いはずだが、打ち明けられないだけだろうか・・・というのは全くの冗談だが、心の奥の想いを話すという行為は、誰でも怖さを感じざるを得ないものだ。

特に、性的マイノリティーの個性を持つ方達は、身の危険や迫害を覚悟しないといけないから、強い緊張を要することになるだろう。激しい攻撃が待っているかも知れない。劇中でも、学生仲間の女子たちから性器を見せるように強要されていた。あれは、男性仲間でも同様だろう。暴行される危険性も高い。命を失いかねない暴行や、人としての誇りを損なう可能性・・・それを考えると、同情を禁じ得ない。

そんな恐怖に耐えて生きて行かないといけないなんて、なんと辛いことだろう。でも、自分の心と体のバランスが取れない状態を続けるのは、これまた耐えがたいことだろう。自分が何者で、何を求め、今後どう生きていきたいのか、実際にどう生きて行けるのかイメージできて、悩まずにおれたら、それだけでも幸せだろうに。

 

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