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2020年4月 3日

ベン・イズ・バック(2018)

Ben-is-back

- ピーター・ヘッジズ監督 -

クリスマスイブの日、薬物依存患者の息子ベンが突然帰ってきた。しかし家族の平穏は損なわれ、母親は息子を探しまわる羽目になる・・・・DVDで鑑賞。薬物依存症の問題点を上手く表現していて秀逸な作品だった。 

令和2年中に映画館に行くことはないだろう。コロナウイルスの流行のせいだ。こんな時期には、ビデオを観るしかない。ゲームにはまったりしたら、時間がいくらあっても足りない。映画なら、使う時間に限りがある。なんとか日常の仕事をこなしながら生きて行ける。やはり映画しかない。 

オピオイド危機を扱った映画と言えると思う。オピオイド以外にも、米国には様々な薬物があふれ、それぞれの問題が非常に深刻であると聞く。この作品は、母親を主人公にして描き、中毒患者を中心に描いていないことが特徴だと思う。中毒患者が主人公の映画なら古くからある。息子のほうを主人公として描くこともできたろうが、病的な面を描く場面が多くなると、観客が辛くなりすぎる。家族のほうを主人公にして、ホームドラマ扱いにしたほうが、鑑賞する側としてはやりやすい。

主人公のジュリア・ロバーツは、若い頃の美しさは感じられなくなって来たが、今は役者としての魅力が増している。見事な母親ぶりだった。強さや弱さ、考えの深さや浅さが同居しているようなリアルな母親像を演じていた。もっと賢い人物、あるいは軽薄な人物だったら、どこか母親を軽蔑する感情が生まれていたかもしれないが、この母親は懸命に、真摯に生きていることが感じられたので、嫌悪感が生まれる要素はほとんどなかったと思う。 

いっぽう、息子を演じていたルーカス・ヘッジズ。ヒネた若者役を演じると当代ナンバーワンの役者だが、今回は病的なイメージが不足していたように思えた。演技力は充分でも、本当の病人を感じさせるほどではなかった。おそらく、もっと痩せていたほうが良いし、メイクでも工夫ができたはず。目の下にクマを作ったりは、簡単にやれたのではないか? 

病的な人間を演じる場合は、極めてノーマルで快活を装うかのような仕草が欲しい。完璧にノーマルに見えて、どことなく違和感を感じる、やがて明らかに異常と分かる、そんな演出が常道だろう。今回の息子役は、栄養状態が良すぎるし、病的な印象が薄いと感じた。   

薬物依存症に陥ると、患者は実に上手い嘘をつく。たまたま落ちていたもので、自分は拾っただけ、そんな分かりやすい嘘だけじゃなく、巧妙な嘘でも考えつくもののようだ。必死だからだろう。映画なら、観客が見事に騙される嘘を表現できる。今作でも、上手い嘘が何度か描かれていた。もっと派手な演出をしても良かったと思う。  

オキシコンチン・・・劇場主も処方経験は多いが、嫌いな薬だ。通常は連用のための処方はしない。今はデュロテップ貼布剤など、飲まなくて良い薬があるから、末期がんの患者に無理やり処方する必要はないと思う。わざわざオキシコンチンを処方するのは、保険の規定のせいで、最初はオキシコンチンなどを使うように規定されているからだ。

ひょっとして、米国政府を通じて日本政府にも、製造元のパーデュ・ファーマ等の強い影響力が及んでいたのかも知れない。あるいは学会のほうに力が働いたか? 実際には、最初から他の薬剤を使っても、注意していれば問題は少ない。オキシコンチンのほうが、成績が悪いイメージもある。

日本では医薬品に限定されているデュロテップも、海外では麻薬として合成されているらしいので、もっと抽出しにくく、純粋に医薬品としてしか使えないような薬品が開発されると良いと思う。依存性が低くて、痛みだけが除かれる薬が欲しい。リリカやトラムセットなどにも期待したが、実質は宣伝とは少々違っていた。

痛みを取ることは、幸福な感覚に近いものに通じるようだ。睡眠剤も幸福感につながるが、依存を生じる。純粋に痛みを軽減し、中毒量が非常に多い薬物はできないものだろうか? 良い薬を開発すること、犯罪組織の摘発、法制度の調整、処方医や患者の意識改革、それらが必要だ。

 

 

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