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2020年3月18日

日中の攻防 2025 

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-青山繁晴・著 -

中国の野心や、それに対する日本の対応に関する著者の意見を主に書かれた本。

中国の野望は様々な本で記述されている。日本人のごく一般的感覚としても、中国政府の発表に不信感や恐怖を感じている人は少なくないと思う。なにしろ特殊な政治形態にあるので、目標を決めると断固として進み、効率が良い。経済発展も早かったし、新型肺炎に対しては病院を短期間で建てる、交通の要所を封鎖するなど、対応が早い。

いっぽうで軍事政権型の独裁政権なので、万事が強硬に進められる傾向があり、相手国の権利や自国民の自由を無視することも常で、覚悟しておかないといけない。理屈で何か考えられたら、心情や相手の都合は無視されても不思議ではない。何を決めて何をしてくるか、戦略的に考える必要がある相手だ。青山氏が強調する危機感は、劇場主も感じる。疑念が多い国である。  

メタン・ハイドレートについては最近よく聞く。NHKの報道番組でもよく目にする。日本のエネルギー戦略を大きく変える可能性があるのかもしれない。

問題は、①採取の方法が確立していないこと、②採取によって地球温暖化を進行させないか、③採算性、④地震にからむ安全性など、多々あると聞いている。近海にあるとしても、人間が潜れるような場所ではないはずだから、潜水艇や大掛かりな採取機械、さらにはロボットなどの助けがないと、事業として成立しえないものかも知れない。費用はかかるだろう。

したがって、今の時点では研究段階の話であり、あくまで将来の可能性を有する資源でしかない。中国が、そんな資源をどの程度狙っているのかは分からない。興味は持っていて、チャンスがあれば事業に参入し、出来れば利権を確保したいと考えているはずだが、それは中国に限らず、どの国もそうだ。米国もきっとそうだと思う。日本政府に圧力をかけて、石油メジャーの利権のひとつにしようとするに違いない。

日本の経済水域の境界を無視してでも入手したいと考えれば、どの国でもやって来ると思う。日本ができることは研究すること、事前に法律を整備し、圧力を受けても海外から利権を簒奪されにくい体制を準備することくらいだろう。力ずくで来られたら、完全に対応するのは難しいので、なるべく有利に行けるよう、そつのない準備が望まれる。青山氏はこの分野に熱心なので、彼が国会議員になったことは良いことかも知れない。  

以前から青山氏の顔は知っていた。テレビ番組に登場して、国家戦略や防衛に関して明解なコメントをしていて印象的だった。でも、明解さと正しさは、また別ものだ。どんな人物なのか、分かりにくいと感じる。今は参議院議員だが、元々は通信社に勤務して、研究所を立ち上げたりしていて、研究が本業と言えるだろうか? 通常の意味での学者ではない。 

「戦略の専門家」の評価は難しい。たとえば手術の専門家なら、手術数や成功率などをみれば力量は判断できる。でも国家戦略の専門家の場合は、指標が少ない。おそらく、過去にどれくらい予想を当てたか、仕事を担当したことがあれば具体的にどのような交渉をまとめたか、その結果どれくらい権益を守ったか、そこらの評価が指標になる。非客観的な、相対的な評価基準になる。

評価は数値化できるものではないので、意見が割れてしまう。能力は客観的に評価しづらい。素晴らしい論客と思えるた人が、実は嘘まみれの誇大妄想癖の人間だったと後になって判明することもある。青山氏の場合も分からない。中国が今後ひどいことをしてくるとしても、それは氏が正しいからではなく、誰でも分かっていることだ。評価の参考にはならない。

氏はまだ具体的に大きな成果を挙げたとは言えない人間だ。氏の個性のせいかも知れないが、口調の鋭さを特徴とするところがあるので、言い過ぎているのではないかと感じる。熱情にかられているのか野心的なのか、説得を焦っている気もする。勉強しているらしいとは思うが、論理の飛躍が気になる記述も多い。学者の文章とは性格が異なる。誤謬を生じやすい話の進め方に危惧を感じる。

そして断言する文章が多すぎる。世の中に明白なことは、そんなにないと思う。たとえば、日本の憲法を作った米軍の人間が、氏に本当のことを言うとは限らない。その人物は偏った思想の持ち主で、軍内部では異端児だったかも知れない。そのコメントが本当かどうかも、担保するものはないのだから、素直に信じたような書き方は好ましくない。人が何か言っても、本人が本当にそう考えているとは限らない。青山氏は騙されているのかもしれない。  

また青山氏の奥様が、まさにメタンハイドレートの研究者らしいので、研究費に関して利益誘導が生じないように、注意も必要であろう。氏が議員になったことで、既に利益相反の問題があると思う。研究の予算策定に関係することは避けるべきだ。夫婦の利益のために本を書き、議員になったなどと言われないように、身辺はきれいにして、疑われることがないようにして欲しい。

旧日本軍の参謀たちも、優秀で明瞭、上官から評価され、威勢が良くて口論では負け知らずだったはずだが、大きく間違っていたのであるから、人の評価には注意が必要だ。言論明解、勢いが良いことは、意見が正しいこととは別のこと。評価の基準から外さないといけない。もし仮に青山氏の見解が非常に優れ、様々なことを正確に予言していたとしても、どうせ中国と対決し続けることはできない。すぐそばにある国だから。

もちろん中国の出方には注意が必要と、劇場主も考える。日本の生き残りをかけての、工夫と忍耐が必要だろう。

 

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