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2020年3月15日

ジョーカー(2019)

Joker

- Warner Bros. -

コメディアン志望の男が世間から疎まれ、さげすまれ、ついに怪人ジョーカーになる様子が描かれた作品。DVDで鑑賞。トッド・フィリップス監督は、最近ヒット作を連発していて勢いがある。この作品も制作費の数十倍の興行成績をあげたらしい。  

インパクトのある作品だった。この作品の狙いはどこにあったのだろうか?映像表現のためだけの作品か、あるいは現状に対する告発の意図があるのか、少し曖昧だった印象。狙いが明確に分かる作り方だったら、もしかするとアカデミー賞につながったのかもしれないが、結局この作品は「パラサイト」に敗けてしまった。作品の意図、その伝わり安さは大事だと思う。  

この作品は、ジョーカーの置かれた状況に、観客が同情を感じるように作られていたと思う。劇場主は完全にその流れの通りに、主人公に共感することになった。観る人が主人公に共感できたら、それは映画の成功を意味する。だから、この作品は大成功していたと言える。

ただし、それは表現の面についてだけであって、その共感が観客に何をもたらすのかは、また別な話だ。 観客の心を癒す、楽しくなる、興奮する、観た人が勇気づけられる、あるいは深く反省し、生き方を変えるきっかけになる、などの影響力も大事だと考える。単純な見方をすれば、この作品は暴力を肯定し、無法者を称賛する内容だと批判されるべきかもしれない。教会関係者などからすれば、こんな映画は許し難いだろう。

主人公はたしかにひどい目に遭っていたが、それで人を殺して良いとは言えないはずなので、観客に間違った解釈をさせやすい描き方だったと言える。彼を取り巻く人間には酷い連中が多かった。現実社会もそうだ。でも、殺してはならない。

主人公が殺していたのは、自分に殴りかかってきた3人組の会社員、自分をはめた芸人仲間などだ。自分に優しかった仲間は殺そうともしていないし、追ってきた刑事達にも、自分からは何もしていない。基本としては、害を及ぼしてきた人だけを狙っている。

これは過去のバットマン・シリーズとは違う。バットマンの父親を殺したのも、ジョーカー自身ではなく、彼の信奉者だったとして描かれている。今作では、あくまで復讐の色合いが強い犯行だけに限定されていた。そこは同情を得るために必要な設定だろうと思う。だから許されるべきという主張にも思えたが、それはどうだろうか?  

やくざ者の行動を解説した文章を読んで感じるのだが、犯罪の最初は、復讐の意図で始まるケースが多いと思う。世間に絶望し、家族にも怒る。その怒りが暴発するような事例である。復讐しようとする際には、多くの人が罪への意識で心が苛まれるだろう。そこを乗り越える時は、犯人の脳の中では激しい興奮が起こっている。いろんな神経伝達物質が分泌され、冷静な判断ができない状態になって犯行を犯す。

おそらく、それは動物が襲われた時に陥る反応に類似したものではないかと思う。本能で、自分を守ろうとしているはずだ。そして、その後に成り行きによって新たな犯罪を犯したり、組織を作ったりしても、それらは生き残りのために動物がとる行動と同じではないかと感じる。本人は生き残りのために、仕方なくやってるんだと感じているはず。 

人を追い込んではならない。映画でもあったように支援事業を縮小し、自己責任を求める風潮は日本でも感じられる。小さな政府を目指すという言い方で、それを正当化してきた。でも、そんな考え方は不幸を生む。弱者には同情すべきだ。景気のためとはいえ、金持ちを優遇し過ぎてはいけない。

そして偽善は良くない。政治家も、信頼を裏切る行為は避けるべきだ。現在のトランプ政権には様々な疑惑があり、偽善の臭いを感じる。臭いだけでも有害だ。ジョーカーのように激しい怒りを感じる人がいたとしても、不思議ではないくらいだ。その点で、この作品には今日的な意義があるのかもしれない。

安倍政権もそうでないとは言えない。国民の信頼については、あまり重視していないように見受けられる。選挙に必要な人の支持を得ていれば、あとは意見を無視しても大勢に影響はない、そんな計算をしているかのようだが、それはクールな考え方ではない。それでは政権が栄えて国が混迷する。

 

 

 

 

 

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