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2020年1月29日

バイス(2018)

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- PlanB,Longride,etc -

元副大統領、チェイニー氏の伝記映画。クリスチャン・ベールが特殊メイクで本人になり切って演じていた。アダム・マッケイ監督自身の脚本らしい。

凝った作り方をしてあり、途中でエンドクレジットが流れ、映画が終わりそうになり、そのあと急にシーンが変わったら、政界に再登場することになって新たな物語が続いたり、語り手が途中で死んだり、よく言えば斬新だが、かなり乱暴とも言えるふざけた手法が目立った。いっぽうで、チェイニー氏の生き様を正確に描こうと努力した様子も感じられ、一方的な批判にならないように一定の節度をわきまえていた面も感じられた。 

マイケル・ムーア作品など他の映画でもあったが、存命中の人物を映画で描くという行為に驚く。ハリウッドでは、こんなことができてしまうのかと、感心してしまう。おそらく民主党支持者のスタッフが集まってできているのだろうが、訴訟沙汰も当然ながら覚悟しての事だろう。「訴訟したら、かえって宣伝になるので嬉しい、じゃんじゃん訴えてくれ!」といった態度でやっているのかも知れない。過去の判例もちゃんとあるに違いない。 

興行面を考えると、この種の映画はあまり大成功が期待できるものではないと思う。 ブッシュ大統領を描くなら違うかも知れないが、副大統領を主役にするのでは、観客の注目度が全く違うだろう。最初から金については諦めて、どんな作品を作るか、その特殊性に賭けて制作したのだと思う。あるいは民主党の応援の意味があるのかもしれない。  

俳優たちの演技、メイクは本当に素晴らしかった。過剰な演技をしてしまうと、単なるディスリ行為、悪趣味のブラックコメディになってしまうから、ある意味で登場人物に共感し、敬意を示しながら演じる必要があったのだろう。 劇場主は、チェイニー氏や、その家族に敬意を覚えた。 ただ運が良かったから道を切り開けたのではなく、覚悟と努力、権力を勝ち得る工夫もあったのだと考える。

努力は彼らだけの専売特許ではない。誰もが様々な努力をしている。そして得た豊かな生活を守りたいと考えているはずだ。そして国家としての米国の場合は規模が大きいので、守るべきものは多い。そして、守るために用意している軍事力や情報網、政府機関、法的な体制も非常に高度で強力だ。使い方次第では、権力者の利益のために悪用することも可能だし、敵となった相手にとっては、冷酷非情な結果をもたらすものとなる。正しい使い方がされないといけない。

法律をいじって合法的に権力を広げる行為は、非常に危険なものだと思う。日本でも、米国を真似たわけではないだろうが、乱用が目立つ。IRの導入、役人の人事をめぐる制度改正など、利益誘導型の動きはいろいろ行われている。権力や利益を求めて激しく戦っているのが現状なので、そこに倫理を求めるのは非現実的なんだろう。

それでも、権力者は力の行使を恣意的に行ってはいけない。国力を損なってしまうからだ。日本が平成の時代に国力を伸ばせなかったのは、国のことより自分のことを考えた為政者の悪影響の面もあると考える。米国の場合は、やはり湾岸戦争の後遺症が今も続いているのだから、当時のブッシュ政権には責任があるだろう。  

湾岸戦争は、今日では酷い侵略戦争だったと考える風潮が主流だ。開戦当時は米国世論が著しく盛り上がり、日本人にとっては理解しがたい印象を受けたのだが、あれは米国民の利益を守りたいと願う単純な感情の成せる業だと思う。守りたいものが大きいのだ。そこに訴えかければ、単純に盛り上がり、支持を集めて強権をふるえる伝統なのだろう。 

ある意味、太平洋戦争も同じ理屈で進められたのだと思う。日本が進出して中国や東南アジアの権益を独占したら、米国の権益を奪われかねない、米国の進出機会を見過ごしたと後で批判される。だから日本を経済封鎖し、圧力によって屈服させる必要がある。それは、米国にとっては当然のことであり、そう考えるのが自然だ。権益は競争して勝ち得ていくものであり、戦う時には米国がやりたい方法でやりたいだろう。 

今の北朝鮮に対してやっている行動も、基本的に同じ路線のようだ。北朝鮮にとって有利なのは、資源に魅力が薄いことだろう。石油資源などが豊富でないから、攻撃される可能性は低い。その点で自信を持って対処していると思う。イランには資源があるので米軍の攻撃は現実的だ。恐怖を持っていると思う。攻撃のために米軍がどんな理屈を編み出すのか、予想は難しいが、どんなことでもやって来そうに思える。

 

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