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2020年1月17日

UFOが釧路に降りる(1999)

- 村上春樹著 -

阪神淡路の震災の後、妻はひたすら地震の報道映像を見ていたが、急にある日家を出て、それっきり実家に帰ってしまう・・・・村上春樹が雑誌「新潮」に発表した作品。同じように地震に関わる6編の短編がまとめられて本になっており、今回はそれを購読。  

阪神淡路大震災は平成7年、1995年のことだった。熊本ではまったく揺れなかったので、普段通り勤務先について他の職員がテレビを眺めているのを見て、仕事もしないで何ごとかと疑問に思ったのを覚えている。美しい大都市の神戸から多数の煙が上がっていて、高速道路が走るはずの橋脚が並んで斜めに倒れた映像を見ることができた。あれを、作中の妻も見ていた設定ということになる。

あれは、人間に対して何かの変化をもたらす映像だった。この地震は神の怒り? 驕慢な人間への罰? 浮かれた日本人への警告? あるいは、個人的なメッセージかも知れない。日々の生活で何かやり切れていないもの、考えや注意の足りないものがないか、再考を必要としているのではないか? そのような、生き方、考え方全般への影響が出るほどの大きな衝撃が、あの映像から感じられた。  

作中で主人公の妻は、あれを見て主人公との結婚生活を終わらせる決心をしたことになる。その気持ちは多少理解できる。主人公が酷い男だったわけではなさそうだが、もともと妻はなんらかの不満を持っていて、故郷に時々帰っていたというので、結婚生活に満足できてはいなかったようだ。そんな時に地震の映像が契機となって、結審するにいたったというのは、何かのきっかけがあるとしたら、地震が最も納得がいくという意味で、分かりやすい。

UFOが釧路の平野に降りるのを見て、その光景をひたすらしゃべっていた人が、ある日急に失踪してしまうという逸話は、要するに大きな衝撃が人の考え方を変えることがあるということを言っている。どうやら、この短編は、大きな衝撃が人の考え方に影響することをテーマにしているように思える。まだ他に大事な意味があるのかも知れないが、分かりやすいテーマはそれだろう。

本人が気づいているかどうかは別として、実際にあの震災によって何かの行動を起こした人はいるだろう。逆に何もしたくなくなり、救いようのない気分の落ち込みにはまってしまった人も、もしかするといるかも知れない。

 

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