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2019年11月22日

危機と人類(2019)

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- ジャレド・ダイアモンド著 日本経済新聞出版社 -

フィンランド、明治維新時代の日本、クーデター時期のチリ、インドネシアやアメリカなどを題材に、国家の危機に際しての対応の仕方を論じた本。映画にはならない内容だが、テレビの特集番組の材料にはなりそうだ。 

日本人にとっては特に明治維新が大きく扱われている点で、分かりやすいと思う。そもそもの語り口も非常に工夫されていて、個々人が人生で体験する危機をまず述べ、それと同じような視点で国家としての対応を考える内容になっている。

フィンランドという国の立場は、劇場主も今まで大きく勘違いしていた。共産主義に勢いがあった頃は、ソ連の支配下にあって、何も主張できない国、形だけの独立を維持している小国というイメージを持っていた。日本も米国の支配下にあるので似たようなものだが、情報が少なかったこともあり、より支配度が強く、意見さえ言えない国だろうと感じていた。ソ連崩壊後はどうなっているのだろうか? あまり評判を聞かなかったが・・・・

いやはや、とんでもない勘違いだった。独立を維持し続けた、偉大なる国家だったと言えるようだ。生き残りに失敗した国も多かったのだから、フィンランドの生き延び策は称賛に値する。長期にわたって難しい対応を迫られ、それを切り抜けていたことに、あらためて感じ入った。

でも、フィンランドの位置がもっとドイツよりだったとしたら、おそらく策の如何に関わらず、エストニアやポーランド等と同じ運命になったと思う。ドイツとソ連の間の戦いに巻き込まれて、いかに素晴らしい政策を繰り出そうとも、覇権争いの場になったはずだ。少し位置が違っていたことが、生き残れた最大の理由ではないかと思う。ソ連にとって価値が低かったから攻撃の優先順位が下がり、攻める対象にならなかったのだろう。

それでも、抵抗することに成功し、綱渡りのような対応で独立を維持できた点は、本当に素晴らしい。 現代の日本も、見ようによってはそうかもしれない。無条件降伏という危機を乗り越え、米国の強い力の下にはあるものの、経済的に安定していて、戦闘がなくて安全な状態が長く続いている。

もし共産主義勢力の側に一時的にでも入っていたら、ソ連と米国の間の代理戦争の舞台になっていたかもしれない。そんな怖ろしい対応をとらなかったことが、結果的に幸いだった。右翼や政界、財界の先達に感謝しないといけない。 

今後は中国やロシアとの対応が問題になるだろうが、切り抜ける方法がないとは思えない。原則に従い、臨機応変に対応すべきだろう。かっての軍部のような過ちは、もう犯してはならない。 

インドネシアの例は、日本とも関りが深いから、興味がある。インドネシアへの日本軍の進出は、独立の機運をたかめる要因にはなったはず。スカルノの時代が長く続いたら、日本との関係もより深まっていただろう。人材育成などで協力ができて、今頃は中国に迫る巨大市場として、日本の経済にも良い相手になっていたかも知れない。でも、それが遅れたとはいえ、これからも発展しそうな国なので、単に交流のスピードが違っただけとも言える。

この作品の後編には、今の日本がかかえる問題点も述べられている。人口問題は、やはり負の要因と書かれている。普通に考えればそうだ。これだけ明らかな問題なのに、対処が先送りになり、しかも選挙で争点にならないのが非常に不思議だが、政党の能力不足、政治家や役人たちの意識の低さ、国民が国への信頼を失っていることなどが、問題解決の足を引っ張っているように思う。

11月17日のニュースで報道されていたが、アンケートで「政府を信頼する」と答えた人の割合は3割程度だったようだ。これは各種の統計で、およそ一致している。信頼されていなくても、とりあえず革命が起こる気配はないし、法律が無視されることも少ないから、国民の気質やモラルは大したものだと思う。

でも、信頼は大事だ。政府が利権や名誉など、自分たちの利益を度外視して、国民のために働いてくれているという姿を見せないと、見放されて何も対処しないという状況が続くだろう。真面目で優秀な人間が、選挙や人事で排除されていることを感じるようでは、大失敗が待つと予想される。問題点を認識し、分析し、優先順位をつけ対応する、その原則から外れている。

 

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