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2019年11月 2日

グリーンブック(2018)

Greenbook

- Universal,GAGA -

黒人ピアニストとイタリア系白人の用心棒の旅を描いた作品。実話に基づくという。2019年のアカデミー賞作品賞を取った。DVDで鑑賞。 

この作品が「メリーに首ったけ」の監督の作品だとは驚いた。すでに過去の人のようなイメージだった。ナンセンスギャグ専門の映画人ではなく、こんな企画を成立させるセンスを持っていたとは、全く予想もできなかった。 

脚本が素晴らしかったのだろうと思う。物語としては、過去にも似たような展開の話はたくさんあった。パターン通りだ。黒人がドライバーだったり、刑事役だったり、互いに喧嘩腰の冷たい関係から、徐々に友情をはぐくむ流れは珍しいものではない。でも、この作品はエピソードの選択が良いので、二人の関係が進展する様子が自然に感じられたことと、演じていた俳優の演技力、演出が素晴らしかったことなど、様々な要因が有効に働いていたようだ。

音楽も素晴らしかった。実に効果的だった。クラシックの曲をバーで弾くときも、コンサート会場でジャズを弾くときも、音も指使いも曲も、実に素晴らしい出来栄えで、感動を覚えるレベルだった。中途半端な出来栄えでは、ピアニストへの敬意は生まれない。感動レベルにできることが大事だった。

コメディタッチであることも良い効果を生んでいたと思う。黒人迫害の酷い現場をリアルに強調し過ぎたり、二人の友情を強烈に描きすぎていたら、観客には嘘っぽいか、見るに堪えない、あるいはつまらなく感じられたのではないか? 多少のあざとい演出は必要だと思う。  

主演のヴィゴ・モーテンセンは、「ロード・オブ・ザ・リング」の頃とは役柄を大きく変えていたが、野人のような顔つきが、この役柄にはぴったりはまっていて、粗野で凶暴だが、家族思いの人物を上手く演じ切っていた。モーテンセンは、もしスターになれなかったら、おそらく一生悪役を演じるか、あるいは全く売れないままま終わってもおかしくないような俳優だと思う。ほとんど偶然に近い幸運と、独特な風貌のおかげで、奇跡的に名優の域に達しつつあるようだ。

日本でも欧米でも、時々変顔というか、個性的な顔の俳優が大スターになる事があるが、声の質や役柄、その個性が必要とされる作品があるかどうかなど、いろんな要素が必要な気がする。名優になれる条件があるのに、合う作品がなくて知られないまま終わる人も多いに違いない。  

そして、最近いろんな映画で見かけるマハーシャラ・アリは、存在感抜群の俳優だ。彼が演じていたのは実在のピアニストであるドン・シャーリーだが、劇場主は名前に記憶がない。雑多なレコードを聴いてきたから、きっと聞いたことはあるはずなんだが、名前は知らなかった。本人の写真で見ると、映画のイメージとは全然違う。この作品の中でのシャーリーは、あくまで虚像なんだろう。  

黒人の観客から見ると、主人公は黒人ピアニストのほうであって欲しかったかも知れない。視点の偏りは気になるだろう。差別で酷い体験をした人は、ほんのり心温まる演出には嫌悪感を感じるに違いない。黒人の視点で描けないのか、描くとして、商業的に成り立つ描き方はどのようなものか、そこらは難しい問題だと思う。

トランプ大統領の時代に、こんな作品が賞をとるだけでも意味があると思う。

 

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