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2019年11月 6日

未完の資本主義(2019)

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- 大野和基著・PHP新書 -

資本主義の今後に関して、複数の経済学者、ジャーナリストらに質問した内容をまとめた本。著者御自身は、専門的な学者ではないようだが、英語の力を生かして、様々な領域をレポートしている方らしい。 興味深い内容だった。

でも、ふと思うに、なぜ劇場主はこのような内容の本を購読したのだろうか? 一介の医師が経済学の知識を培っても、その知識を使う場所はないと思う。株取引もしていないし、会社を立ち上げるような能力も、余った資産もない。資本主義がどうであろうと、その将来がどうなろうと、流れに流されるまま、ただ浮遊するしかないのではないか? 

劇場主に限らず、たいていの人がそうだろう。社会のシステムをいじれる人は限られている。知識があっても、それが行動に結びつく人は少ないはずだ。劇場主が深く学習できたとしても、周囲から浮いた感覚を持ちながら、独りよがりにしか見えない感覚を持ちつつ、疎外感を感じながら生きていくしかないだろう。なんだか、不幸な感覚を持つために頑張っているような、損した気がしている。

それでも本を読むのは、やはり知識欲のゆえだろうか? 経済面の知識、観念は、人の生き方に影響すると思う。資本主義をどう考えるかは、場合によっては人権への意識、倫理感、生き方そのものに関わる場合がある。 

かって共産主義にのめり込んだ人達は、資本主義の悪い面に義憤を覚えただけの者も多かったと思う。共産主義のことをを詳しくは知らずに、命を賭けた連中も多かったはずだ。彼らは、資本主義を肯定的にとらえる人物は人道に反する悪い奴らだと、きっと考えていただろう。義憤が強すぎて、大量の粛清者を出したり戦争をしたりも、当然のこととされた時期もあった。資本主義は殺しの理由になる。

ただの経済的ルールが、生き方に関係してくるのは、まぎれもない現実だ。正しく生きるためには、経済のことも学ぶ必要があるのではないか? そんな微かな善き心がけから、ついつい買ってしまうのであろうか?しかし、正しく生きるのも大変なことだ。購読が役に立てば良いのだが・・・  

印象深い示唆がいくつもあった。何となく感じていたことが、自分だけの印象ではなかったと分かる。所得を保証することは、素晴らしいことかも知れないが、危険な賭けになると思う。安定した地域なら、良い面だけが出るかも知れないが、景気後退の時代に導入したら、経済を破綻させることはないだろうか? 

そして、この本に書かれていた内容は、まだまだインパクトに欠け、不十分な面があると思う。歴史的に考えると、イタリアあたりで始まった商取引の契約習慣が、スペインやフランス、イギリスへと覇権が移る中で、様々な法律や習慣が総合されて資本主義として成立していると思う。力のある地域がルールを決めたはずだ。

覇権が移れば、ルールも中心地域も変わるはずで、たとえば将来は中国共産党が定めたルールに基づいて、世界中の取引が行われなければならなくなる可能性は高い。民主主義とは違う方法でルールが決まるだろうが、もともと資本主義は民主的とは限らないのだから、何も不思議ではない。米国の資産家たちの意見で決まっていることが、共産党の方針で決まるようになるだけの話。もし本当にそうなると、資本主義の印象も変わって来ると思う。

覇権がどこに移るかは、様相を決める大事な要素だと思う。その観点が大きく抜けていた。

 

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