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2019年11月30日

寒い国から帰ったスパイ(1965)

The-spy-who-came-in-from-the-cold

- Paramount-

リチャード・バートン主演のスパイ映画。東ドイツの情報部をワナにかける作戦に従事するイギリス諜報員と、相手側との駆け引きを描いた作品。ジョン・ル・カレが1963年に原作を発表した企画が、はやくも2年後には映画化されていたようだ。スパイ組織の非情さを描いて秀逸だった。

ストーリーにひねりが効いていて、ラストまでどんでん返しが繰り返されるようになっていた。よく考えられた展開に感心する。劇場主は「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」で、ル・カレの存在を知った。アイディア、二転三転する展開にいつも感心する。

スパイ小説には、もとからあまり期待するものがなく、007シリーズのような派手な映画のほうが観ていて楽しく、あまり暗い映画は好みじゃなかった。それは多くの観客もそうなんだろう、一般にアクション中心の映画のほうが、圧倒的に人気がある。騙し合い、静かな戦いを描く作品は、普通はマイナーな路線だ。この作品も、何度も繰り返し見たいと思うタイプではなかったが、そこは仕方ないかも知れない。 

静かな作品だった。流行りの映画のような血まみれのシーンはない。ほとんどの時間は、主人公が誰かと話し合い、敵を欺くために演技をするシーンが続く。乱闘もない。途中で恋人ができるが、どこまで意図して付き合っているのかはよく分からない。あるいは彼女も敵から送り込まれたスパイでは?という疑いも劇場主は持ったが、それは今どきの設定で、この作品では違っていたようだ。

当時、イギリスの一般女性が東ドイツに招待されるなんてことが本当にあったのだろうか? 普通なら身の危険を考え、共産圏には行かないと思う。喜んでスパイになろうと考えるのは、よほどな闘士だけだろう。普通は弱みを握られて、のがれられなくなるだけではないか? 当時の英国の知識人たちの考え方が分からない。 

また、作品の中に東ドイツで裁判が行われるシーンがあり、すこし驚いた。当時、東ドイツで英国のスパイが逮捕されたら、裁判なしでの処刑か、裁判になっても即決で終身刑だったのではないかと思っていた。でも確かに、共産圏でも体裁は要るから、裁判は必要だろう。主人公が裁判中にあまり緊張しているように見えなかったのだが、あれで良かったのだろうか? 実際はどんなものだったろう? 

そういえば共産圏での裁判は、どんな形で行われるのだろうか?本当に公平で民主的な裁判なら、たとえば共産党に害となる人物でも、違法性が曖昧な場合、無罪になる事があるのだろうか? 一党独裁の体制の場合は、党にとって害がある人物が許される必要はないといった考え方で、簡単に有罪判決が下りそうな気もする。そうすることで党からの裁判官の評価が上がるなら、理屈をひねり出してでも有罪判決が出そうだ。裁判所が党から独立できていたのかどうか、その仕組みがよく分からない。 

最後に主人公の人間性が試される場面があり、劇的なラストになっていた。でも、画面が暗すぎたし、少し人物の映り具合が小さすぎて、表情が分からなかった。今なら、悲しそうな顔をアップで写すのではないだろうか?

 

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