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2019年10月 5日

セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!(2017)

Sergio-and-sergei

-MEDHIAPRO-RTV Commercial-ICAIC-

ソ連の崩壊によって宇宙ステーションに取り残されたセルゲイ飛行士と、経済的に困窮するキューバの大学教授は、ともに無線の趣味を持っていて通信がはじまった・・・ DVDで鑑賞。

モデルとなったセルゲイ飛行士は、実際にもソ連崩壊の前後の機関、宇宙に滞在していたらしいが、単独の任務ではなく同僚もいたようだ。まったく取り残されたわけではない。しかし、滞在期間が延長されたのは本当だそうで、精神的に不安だったのは間違いない。

彼が本当に地球の民間人と交信していたのかは分からない。宇宙ステーションには機密事項も多かろうから、勝手に外部と通信するのはルールに違反しているように思うが、何かの理由で許可されていたのかも知れない。いずれにせよ、この作品は事実関係を詳細に追うタイプの映画ではなく、何事も過剰に制限され、自由と豊かさが損なわれた社会を皮肉交じりに描くことが目標だったと思える。かなりのフィクションが混ざっているから、あくまで娯楽作品と考えたほうが良いだろう。 

アイディアが良かった。宇宙飛行士と地球との通信には夢がある。しかも、キューバの窮屈な社会で、監視された人間が隠れて行動するという設定には、観客をハラハラさせる効果がある。監視する人間のキャラクターによっては、怖い映画になる場合もあるはずだ。この作品ではしつこいが、どこか迫力に欠ける人物が監視役になっていた。監視係の側も機材が不足していて、自分で自転車の車輪を回して発電しているところが笑わせる。計画停電が多かったはずだから、実際にそんな諜報係がいたのかも知れないが、あの設定が作品の雰囲気を決めていたのかもしれない。その監視役は、ラストで大いなる旅に出てしまうが、さすがにやり過ぎだったような気もした。

主人公の大学教授役はトマス・カオという俳優が演じていたが、特別に演技が上手いとは感じなかった。でも、実在感のある俳優だった。脇役に良い雰囲気の俳優がたくさんいた。米国の末端諜報部員を演じたロン・パールマンは、独特の風貌をした俳優で、アクションもののTV映画の宣伝で見たことがある俳優だが、今回は全く違った味のある演技をしていた。 

主人公の家庭の生活費が足りない中で、質屋に物を持って行ったり、密造や内職に精を出すシーンを、興味深く観た。封鎖の中で生きる人達は、盗みを働いてでも、何とか生き抜こうと工夫をこらすことだろう。 つい最近まで、日本でもあった話だ。今の日本はたまたまグローバル経済の恩恵を受けているが、戦前は封鎖を受ける側だった。物を作って輸出して成り立っていた事業が、金融取引を止められるだけで成り立たなくなってしまうと、会社はあっさり倒産させられることになる。いかに努力、工夫して物を生み出しても、その努力が報われなくなるなんて、その会社の人間の情けなさ、怒り、悲しみには想像を絶するものがある。 

大がかりに産業を破壊され、町の経済の構造や規模を変えられてしまうと、戦うか降参するか、ただ耐えしのぶしかない。戦争への誘惑が忍び寄ってくることだろう。米国相手だと、勝ち目のある国は当分の間はない。イランなども酷い状態らしいが、耐えられる限り、耐えているのだろう。 中国も、今は厳しい攻勢をかけられている。だが、中国は市場規模が大きいので、耐えているうちに米国の攻勢に免疫を得る可能性はある。封鎖が不完全になれば、米国流の攻撃も力を失うはずだ。中国が耐えきったら、他の国は中国に支援されて乗り切ることを考えるから、経済封鎖という手段は使いにくくなる。

 

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