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2019年8月14日

風の歌を聴け(1979)

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-村上春樹・講談社文庫 -

文庫本で購読。村上春樹、最初の長編小説らしい。ハードボイルド小説の日本版、あるいはハードボイルド映画の文学表現といった趣の描き方。映像が見えるような気がする作品で、観たことはないのだが、実際に映画化されたらしい。なので、この劇場で評価しても良いだろう。

クールな人間たちが、洒落たジョークや皮肉を語り合い、男女が気取った会話を交わす、イカシタ・・・という表現はもう流行らないが、そんな小説だ。でも文学的な価値、意味合いはよく理解できない。何か比喩的な意味があるのかも分からないストーリー。おそらく、いかに洒落た雰囲気を表現するかに重点があって、社会の問題点を突くとか、普遍的な男女の問題を論じるとか、重いテーマは一切ないだろうと思うのだが、よくは分からなかった。若者らしい無鉄砲で不安定な考え方は、うまく表現されていたように思う。 

ハードボイルド小説は、何度か読んだことがある。たいていは映画化された作品の原作だ。夜の都会のバーか探偵事務所に主人公が独りでいると、突然謎めいた美女が何か相談をしてくる・・・そこで主人公はドギマギしたりしない。劇場主なら、おそらく声がハイトーンになって、多少どもりながら、言わないほうが良かったと後で後悔することになるセリフを吐くに違いないのだが、ハードボイルドな男は低い声で短く、クールに返答しないといけないらしいのである。少し仲良くなったら、シビれるような愛の表現も欠かせない。そこいらが、まったく真似できそうにない。  

主人公の友人がイタリア車を飲酒運転で壊してしまうシーンがあった。国産車ではいけないし、ベンツでもダメだ。ベンツで事故ったら、それは成金の失敗に過ぎず、クールじゃない。飲酒運転は無謀で、当時としても確実に違法で、若気の至りでは済まない所業だが、ハードボイルドな人間は、違法かどうかを気にするより、何事にも動じないでいられるかが大事なようだ。

現実にそんな生き方をしたら、重大事故で後遺症に苦しむか、軽率で尊大な人物と思われて社会的制裁を受け、酷い目に遭うかも知れない。たいていの人間は、少なくとも下っ端の間はヘコヘコと、情けない生き方をするものだ(そんな生き方に怒りを覚えつつだが)。できればスリルをクールに処理したい・・・だからだろうか、時々チキンレースで事故ったような痕跡を、峠道などで見かける。阿蘇の外輪山の一部には、まともなガードレールが残っていないところが何か所もあるが、あれは夜中にハードボイルドな運転を試みた連中の仕業だろう。

彼らは単なる暴走趣味で、意味をはき違えただけのように劇場主は思うが、本人たちは自分をクールな冒険家と思っているかもしれない。 そもそも都会のバー以外で、どのような場所にハードボイルドの面々は存在するのか? まさかカラオケで歌ったりはしてないだろう。たぶん峠道でもない。 毎日バーにいたら、肺癌か肝硬変になってしまう。健康に注意するハードボイルドな田舎人は存在しうるのだろうか? なんだか笑いの対象にしかならないような気もする。現代のハードボイルド的あり方が、劇場主には掴めていない。

それに、ハードボイルドな医者をイメージすると、患者が殺されそうな気がするので、そんな方向を目指してはいけないとも思う。生き方が違うのだ。

 

 

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