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2019年8月26日

冬の華(1978)

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- 降旗康男監督・東映 -

兄貴分を殺して受刑していた主人公が出所した。しかし、おりしも関西の勢力が浸透してきて、周囲はキナ臭い。主人公は再び殺人者になるのか?という話。DVDで鑑賞。 

降旗康男監督は本年5月に亡くなられた。新聞記事を読んでいて、この作品の存在を思い出し、DVDを借りた次第。この作品の公開当時、高倉健は47歳くらいで、主人公の年齢に近い。一番乗っていた頃かもしれない。脚本が倉本聰で、おそらく原案も彼によるものではないだろうか?   

この作品の主人公が、ヒロインである少女に声をかけられないシーンが何度もあるわけだが、さすがにじれった過ぎると感じた。女々しさ、弱々しさを感じさせずに、ただ思いやりや後悔の念だけを感じさせ、殺し屋の迫力を損なっていない状態を描かないといけないので、イジイジしたシーンは、あまり繰り返せなかったと思う。何気なさそうで、実は大きなトラウマから抜け出せてない、そんな描き方のほうが望ましい。少し演出過剰ではないか。

しかし、足を洗うかどうか、忠義に尽くすかで悩む主人公の姿は素晴らしいし、暴力沙汰が繰り返される緊迫感の中で話が進む展開も、ドラマの教科書のようなものだった。主人公を演じる役者は二枚目過ぎてはいけない。弱く見えるからだ。肉体的にも迫力がないといけないから、細すぎてはいけないし、筋肉隆々で動きに問題がありそうでもいけない。律儀で真面目そうだが、怒ると野獣のような行為をやらかしそうな、そんな人物・・・要するに高倉健的な俳優が必要だった。この作品はきっと最初から高倉健をイメージしながら進んだ企画だったろうし、当時の既定路線に沿って作られた作品のはずだ。 

最近読んだ「羊をめぐる冒険」に続き、この作品でも児玉誉志夫らしき存在が関わっていた。実際に児玉氏が、東西のヤクザ集団をまとめようと画策した時期があったそうなので、その時代を舞台にしたヤクザ映画は現実味のある話になり、興行的にも良い効果が期待できたと思う。 

組長役の小林亜星が、自分はカラオケ三昧の妙なヤクザなのに、「このままじゃ日本はどうなる!」と言うセリフがおかしい。「あんたみたいな変な人物が言うなよなあ。」と思わせる効果を狙っていたようだ。 任侠独特の世界観があれば、愛国精神を持ちながら犯罪行為を働くことも、正当化されるのだろう。その理屈は、海外のギャング団とは違う。ロシアのマフィアが国を愛しているだろうか? ドライに利益を追求する組織が多いだろうし、国よりも家族愛や民族愛のウェイトが大きいと思う。

愛国心は宗教と同じく、理屈を超えて組織を強化する材料にはなるが、組織内部の強烈な勢いのまま過剰に自分たちの信条を強制しやすい。もともとが、理屈を超えているからだろう。信じたことを強制するために激しい暴力を生んで、後に遺恨を残す。東アジアで児玉氏らが諜報、商売、麻薬取引などをやれたのは、愛国心=絶対正義という認識を利用できたからだろう。過剰な暴力と搾取は、やがて日本への反発を生む理由になった。今日でも、それでもめている。

国を愛しても殺しは嫌だという考え方は、ちょうど高倉健の理屈にあたる。傷ついた愛国者が多かった時代の戦後の考え方だ。敗戦でも心が傷つかない児玉的感覚の勢力が、高倉健的勢力を駆逐して行く様子を、この作品では描いていた・・・・と言ったら大げさだろうか。

 

 

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