映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主


Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 誰が世界を支配しているのか?(2018) | トップページ | アベンジャーズ/エンドゲーム(2019) »

2019年6月 3日

華氏119(2018)

Agc-internationaletc

- Michael Moore -

マイケル・ムーア監督がアメリカの政治制度を論じたドキュメンタリー映画。DVDで鑑賞。説得力があった。過去の作品よりユーモアは減り、迫力は増していた。迫力の理由は、銃規制を訴えた高校生たちの活動や、ミシガンの町フリントで起こった水道の水質問題が詳細に描かれていたためだろう。描き方が良かった。編集、構成が素晴らしい。

銃業界から金をもらわないと誓うように迫る高校生に対し、有力政治家がまともに答えられないシーンは、現状を鮮やかに写している。政治家に幻滅せざるを得ない、その現実がよく理解できた。水道水をめぐる問題も強烈に描かれている。ひどい話だ。鉛の血中濃度のデータをいじって虚偽の報告をさせたという証言があったが、本当なら完全に犯罪だ。

どうしてそんな行為をとったかは不明だが、おそらく正確な報告をすると予算の関係で水道事業自体が成り立たないという危惧からではないか? 担当者たちは、進行中の計画を続けることを優先したに違いない。だが不思議な点がいくつもある。州知事は、水道の水質問題をどの時点で知ったのだろうか? 民間活力の導入で市の経営を再生することを狙い、結果として汚染を引き起こしたのが真相と思えるが、衛生問題が疑われたら、普通なら対処は保健所や水道局が自動的にするのでは? いちいち知事の判断を仰ぐ時間的余裕はない。そうでないとしたら、その仕組みに問題があり、知事は諸悪の根源と言い切れないのかも知れない。  

財政が厳しい市が、なぜ新たな水路を建設しようとしたのか? そこも不思議だ。湖の水の権利より建設費のほうが安いとは考えにくいので、公共事業によって地元の仕事を増やすケインズ経済学的意図が働いたのかもしれない。それにともなって、業者と何か取引があったのかもしれないし、そこは確認しづらい。 

市の担当者は、なぜ偽装という危険を冒したのだろうか? 普通に考えれば、ことが露見しないはずはない。その時に、自分の刑務所行きは確実と分からなかったのだろうか? 明らかに損する仕事であり、不可解だ。日本の役所ならともかく、米国で隠ぺいはありえないと思っていた。勘違いだったようだ。恐ろしい力が働き、真相が隠される仕組みが浸透しているようだ。 

また、オバマ政権が問題の解決を図ったらしいのだが、水道水を飲むパフォーマンスをしようと誰が考えたのか? 問題が解決した後なら効果的だと思う。しかし、害は未解決のはずだ。救うためには、犯罪者達に裁きを下し、補償の目途を立てる必要がある。解決した後なら、パフォーマンスもできる。そうでない時には、別な表現をすべきだ。明らかに間違った対応をとった。
フリント市の市街地で軍事演習をしたというのも分からない。他の町で例があるのだろうか? もし、その演習の許可と引き換えに、水道問題に国の介入を認めたりしたなら、話のつじつまは合うかも知れない。末期的なほど酷い取引だが。 

トランプ政権も酷いようだが、民主党の運営も非民主的というムーア監督の訴えは、非常に説得力があった。構造的な問題があるのだろう。すさまじい力を持つ勢力が互いに争い、力で権力を奪い合ってきた歴史が米国を作ってきた。理想主義の入り込む隙は大きくない。民主主義は、昔から常に危機に瀕してきたのだろうが、今もそうだ。おそらく、サンダース議員が大統領になっても、体制の欠陥はそのまま残ると思う。欠陥が根深く、構造的だからだ。日本よりはマシと思うが、矛盾に満ちた米国政治は、誰か新しい政治的ヒーローが待望される状態。ただし、その彼が独裁者になる可能性も確かにありそうだ。

 

« 誰が世界を支配しているのか?(2018) | トップページ | アベンジャーズ/エンドゲーム(2019) »

無料ブログはココログ