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2019年6月11日

82年生まれ、キム・ジヨン 

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- チョ・ナムジュ著 筑摩書房 - 

1982年生まれの主婦キム・ジヨンは、ある日、言動が母親そっくりに変わり、他の日には友人のそれに変わる。心配した夫は、彼女を精神科に連れて行くが・・・ 

韓国でベストセラーになった作品だという。既にドラマ化が決まっているそうだ。語り口に工夫がしてあって、精神科での問診内容がストーリーになっている仕組みだが、実際にはヒロインが語る今までの人生が、淡々とつづられている。それは特殊な人生ではない。少女の頃に感じた不満や、家族とのやり取り、親や姉への感謝、淡い恋や夫との出会い、仕事場での努力や辛いことなど、誰でもありそうな話がエッセー風に、色々と描かれている。

それら全てを通じ、ヒロインを苦しめて来た女性への不当な扱いに対する憤りが、この話を貫くテーマであろう。精神症状を描く必要は必ずしもなかったのかもしれないが、ヒロインの人生が特殊なものでないとする以上、ただ淡々と語らせていては読者の興味を保たせることは難しい。妙な状態にする必要があると判断したのだろう。上手い手だった。  

この物語は、そのまま日本でも通用すると思う。日本でも女性の議員が少ない、企業の幹部も男性ばかりなど、性差別は確実にある。ひどいセクハラ行為も珍しくない。女性記者が事務次官から露骨な言葉をかけられ、その後に名前を公表するように大臣から要求めいた言葉を発せられたこともあった。大臣のような連中は、相手の気持ちを考えて生きてはいないのだろう。仲間や野党との競争、足の引っ張り合いや脅し、それ以外に何も考えないくらいの殺伐とした日常を過ごしてきたからこそ生き残れているとも思える。だが、そんな感覚を正直に吐露してはいけない。自分がどのような人間なのか、時々は振り返り、驕った考えを認識して、考えたことをそのまま話さない、そんな覚悟が必要。

つい去年報道された医大の入試における不平等も、性差別と言える。大学に自治権はあり、勝手な基準で学生を選んでよいとは思うが、こっそり基準を設けるのはフェアではない。フェアでないことに慣れ過ぎてしまっていたのだろう。今日までそれが公表されて来なかったというから、大学の上層部の頭がいかに古く、前時代的で人権意識が低いのかを示唆する。そんな人間が教授、事務長に選ばれるシステムにも問題がある。人権意識や公正さと関係なく、彼らの人事が決まり、彼ら自身も古い感覚を持っていたはずだ。

いっぽうで、大学の合否は米国などでも闇の部分があるというから、日本だけの問題ではない。あちらでも有力なOBの子弟は優先されるらしい。むしろ恣意的な判断のほうが国際標準と言えるかも知れない。仮に劇場主が病院をや学校を経営する立場になった場合、女性が職員の大半を占め、次々と職場に出てこれなくなったら、職場の維持が難しいので経営者としての能力を疑われて当然だ。その分、余分な人員を確保し、余裕を持たせる必要があるから、当然人件費が経営を圧迫する。責任は運営者にある。たとえ不公平でも、学校の維持のために、独自の基準を設けざるを得ないかも知れない。

そこを考えて学生の選考基準をいじるなら、できれば「男性何人、女性何人」と明示したいと思う。受験する側のことを考えれば、そうなる。ただし、それに対しても必ず反発は来る。それこそ明らかな性差別と言う人もいるだろう。男子校、女子大と同じ理屈だから、許されるかも知れないし、医学部の場合は合格は雇用に直結するから、今の男女雇用機会均等法に触れるかも知れない。学校は、法に触れるなら経営リスクを覚悟で予算の組み方を変えて対応するしかない。 あるいは、やはり学校の権利を盾に、旧来通りに選考基準をブラックボックスにすべきだったのか? よく分からない。

一般の会社でも、幹部に女性が少ない状態がまだ続いているが、おそらく今後は変わって来るだろう。ただし、そのせいで出産の機会が減って少子化が進むとしたら、そもそも社会が成り立たないから結果は最悪になる。平等な社会、機会均等が望ましいとしても、少子化と合わせて法律を作る必要があった。おそらく、出産したら年金を増やす、給与の等級を上げる、男性の育休を奨励する規定が望ましいのだろう。そのうえで機会均等を考えないと、良かれと思って作った法律で、医療体制や社会全体の破綻という、もっと深刻な問題を引き起こしてしまう。

 

 

 

 

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