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2019年5月30日

誰が世界を支配しているのか?(2018)

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- 双葉社 -

MITの伝説的な学者であるノーム・チョムスキー氏の著書を購読。今作も独特のチョムスキー節だ。氏が共産主義者だったのかは分からないが、そうであっても不思議ではないと思う。いずれにせよ米国の中では極めて左寄りな政治思想を持つ人物で、トランプ政権とは真っ向反対の主張をしている。だが客観的に見れば、チョムスキー氏が自由に発言できるのは、米国人だからだ。中国で同じような発言をすれば、すぐ逮捕される。米国の恩恵の元に文句を言えている現状を、氏はひとこと述べておくべきだろう。 

イラク戦争の開戦の時に思ったが、米国民はプロパガンダに乗って簡単に、そして理不尽なほど攻撃的になるようだが、チョムスキー氏は明らかに異質。かなり批判的で悲観的だ。でも、米国においても彼の考え方を支持する一定の層はあるはずで、だからこそ著作がベストセラーにもなれるわけだから、米国の思想は幅が広い。富や宗教など、望むものが多彩だからだろう。その幅の広さ、自由度は評価すべきと思う。ただ、自由度が過剰になると、富と権力の独占も自由ということになり、種々の問題が発生する。要するに、それが問題なんだろう。  

この本の主張のメインは、米国の金融界や巨額の資産家たちが、政治を動かして世界を支配しているということ。2017年の著書「アメリカンドリームの終わり」と共通する内容。誰がという個々の人間ではなく、パワーを持つ社会的エリート達の要求の力関係で、それが確保される方向で、全ては決まっているという主張のようである。その点に関しては、劇場主も同感であるというか、世界の常識だ。米国の右派の人だってそう思っているに違いない。チョムスキー氏に限らず、1%の超資産家を攻撃する学者や若者は多く、ウォールストリートでデモを行ったりしたから、相当数の人間が同じような認識を持ったはずだ。

デモは2011年だったから、もう8年も前になる。人手不足の昨今だから、今の若者は忘れているかも知れない。景気さえよくなれば、人はあまり過激なことはしたがらないものだが、さすがに当時の就職難には頭に来た人が多かったようだ。あの時の考え方は、この本の主張とかぶっている。過剰な資産の集中が金融機関~投資家に向けて起こり、米国の政界はその意向を尊重せざるを得ないし、そうしてまた資産の集中が加速する。トマ・ピケティ理論とも同様だ。自由に金儲けをさせたら、国民のことを気にするはずがない。

加えて、生産現場が中国に大々的に移転したので、米国の労働者階級に回る仕事がなくなってしまった点も大きい。中国の市場開放は急激に起こり、与えた影響は欧米の労働者を直撃した。急激でなかったら、それほど反感を買うこともなく、労働者たちも個別に対処できただろうが、一気に情勢が変わると、職探しで苦労することになる。職探しを劇場主はしたことがないのだが、想像するだけでも、それは辛いものだろう。だから中国の市場開放が明らかになったら、変化のスピードを緩和する法律を新たに作るべきだった。会社の自由にさせたら、必ず問題が起こる。EUと米国の企業間でライバル意識が働いて、互いに進出を競い、抜け駆けをしようとして、結果的に自国民にしわ寄せが来た形ではないだろうか? 

問題は今後の展開だが、米国の支配が直ぐ変わるとは考えにくい。中国やインドが経済発展しても、資源や伝統の力などを考えると、そうそう覇権は移らないだろう。むしろ、各国のエリートが米国に移住し、一体化する可能性のほうが高い。労働者層の権利が高まるかどうかは、金融業に何かのダメージがあるかどうかにかかって来る。資産の集中を防ぐ何かの法律が成立するかどうか、資産税が上がるかどうか、戦争があるかどうかなど、カギとなる要因はたくさんありそうだ。

日本では金融業界の今後は暗いと予想されている。米国でもそうならないとは限らない。投資家達の力も景気に左右されるはずで、戦争で景気を上げようとするキャンペーンがあれば、逆に反戦の動きもあるだろうし、米国の大統領選の動向にも左右されるはずで、予想できない。米国は日本に対して経済的譲歩を要求し続けるのは確実。それは昔からの伝統で、手段を選ばないのも確実だろう。 中国はもちろん、イランにも強引な要求をしているが、力で圧力をかけて待つ姿勢を見ると、日本の過去を思い起こさせる。 

 

 

 

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