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2019年5月22日

ホモ・デウス(2018)

Homo-deus

- 河出書房新社 -

イスラエルの哲学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書。文明論にとどまらない幅広い知見からの論説をまとめた内容で、内容から想像するに講義集なのかも知れない。本屋さんではかなり大きなスペースで売られていた。前作の「サピエンス全史」が評判になった著者なので、今作も前評判が高かったからだろう。映画の原作になる本ではないが、きっと影響を受けた映画も出て来ると考える。

今作も文章は非常に難解だ。もともとの原文が難しいのか、和訳しづらかったのか理由は分からないのだが、日本語になっているのか微妙な文章も多く、よほどな根気がないと集中力を保って読み続けるのは難しい。そして具体的なデータに欠けていた。学術書とは少し違う記述の仕方をしていたようだ。 

でも概要はよく分かった。なるほどと思わせる説得力を感じる。理屈は全てオリジナルとは言えないが、「ホモ・デウス」という表現が斬新だ。それによってオリジナルな考え方のイメージを構築することに成功していると思う。 

現代の技術革新は、人間の認知の仕方を大きく変えつつあることは間違いない。若者が座っているところを見ると、ほとんど例外なしにスマホをいじっている。これは、この20年の間に起こった現象で、古い感覚から言えば明らかに異常。 劇場主が若いころにスマホがなかったから、そう感じるに過ぎないのだろうが、当の若者本人は、どのように感じているのだろうか? たぶん、何も不自然には感じていないだろう。

スマホに害はあると思う。まず目が疲れたり、姿勢を悪くしたり、単調な作業の繰り返しで脳の活動性にも影響があるだろう。若者は自分のデータがGAFAに読み取られていくことへの不安など、悪い面について何も考えないのだろうか? おそらく、まったく問題ないと考えるアホウと、不安を抱えつつ仕方なしと考える人間がいるのでは?。情報から取り残されると、そのほうが怖い。劇場主自身も、IT機器が全くなくなると、仕事が成り立たなくなっている。少し異常な時代なのではと、不安に感じる。

ハラリ氏は読者の不安感を煽るような記述を繰り返している。人間は単なる端末のような存在になり、GAFAやその先の強力なAIの指示通りに生きるアルゴリズムになるという。まさか・・・と思いつつも、なんとなく近いところに行ってしまいそうな不安を感じざるを得ない。 

劇場主が予想するのは、ヒューマニズムや宗教などの旧来の価値観がAIに取って代わられるのではなく、互いに影響し利用しあっていくことである。既にISがIT機器を駆使しているように、宗教がAIを利用していくこともあるだろう。中国政府は、IT機器を監視に役立てているようだ。AIを政権が利用し、その主張に力を与えている。日本の国粋主義者だって、ツイッターくらいは使うだろう。完全に対立するのではなく、混在した形で双方が変化していくのではないかと、期待と不安が混ざった予想をしている。

理屈を超えたものである宗教、信条は、完全に消し去ることが難しい。世界の隅っこに押しやられるとしても、情報社会に反発したり、逆にAIを利用して主張したり、AIから得た情報に影響されてテロ行為などもやるだろう。AIが人を洗脳し、政治や経済を動かす・・・それは現状を見れば充分に予測できる。

GAFAに対する法の規制が始まったようだ。個人情報の管理について、国や地域ごとに規制の方法が違ってしまうだろうが、その違いを利用して利益を得ようとする連中が必ず出て来るので、規制の具体的な方法は想像もできないくらい難しいものになると思う。でも、なんらかの規制をしないと、本当に我々は情報社会のモルモットになるかもしれない。規制によって、ホモ・デウスの在り方も変わるだろう。

 

 

 

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