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2019年4月19日

ニムロッド(2019)  

 - 上田 岳弘 著  -    

IT技術者の主人公、その恋人、映画作りを趣味とする友人、あだ名のニムロッドを名乗る先輩らがからむ物語。文藝春秋の誌上で読んだが、講談社から本が出ているそうだ。いかにも映画になりそうな題材だと思うので、この劇場でも評価したい。

著者は実際にもIT企業に勤めている方だそうで、仮想通貨を扱ったかどうかは分からないが、一般人よりは知識のある方だろう。主人公も著者も現代風と言える。古代の伝説上の人物と仮想通貨、そして無駄な機能を発展させてしまった飛行機、それらを結び付けたセンス、そして物語として表現している筆力に感心した。特に仮想通貨に関する表現力は見事だったと思う。技術者以外の人間が表現しにくい点も、本職ならできるということか。

劇場主はビットコインなどには手を出していないが、今後の可能性を感じることはある。何度か暴落しているのに、いまだに続いているので、また高騰するかも知れない。スマホ決済が流行って行けば、その価値はまた上がるかも知れない。通貨の概念が今変わろうとしているように感じている。この分野も、文学的に表現されるべき時期に来ている。    

採掘・・・通貨を採掘するということは感覚的にシックリ来ないのだが、そのように設定すれば、立派に通貨として成り立ちうることは分かる。要は貨幣の価値を定める設定の問題だ。金や米と交換できる紙を通貨にしたり、外国為替の影響で貨幣の価値が変動したりは、そのように設定されたからであり、別な設定もありうると思う。それが電気信号であっても、たしかにおかしくはない。一瞬で消えそうな不安があるだけだが・・・

怖いのは、IT大国がインフレになったりした場合、流通している仮想通貨の価値も急変することが予想されるが、おそらく外国の通貨に急いで変換しようとする人が殺到し、外国の実質通貨の価値にも変動が急速に起こり、過去になかったほどの大混乱が起こりうる点。 そのような変化は、それこそ電子的に、一瞬のうちに発生すると思うので、気がついたら劇場主の預金の価値がダイコン一本程度になっちゃってた、なんてことになりかねない。 そうなりえない設定が必要だ。でも誰がそうならないと保証するのか? 

作品で気になった点もある。ニムロッド(ニムロド)が登場して飛行機を解説する時、昔の小説家なら、「我が名はニムロッド。」といった風に、誇り高い人物を想定し、古めかしく威厳を持つ言い回しをしたのではないかと思う。人間の王を名乗っており、古代の人物の名を取ってきたのだから、古めかしさをともなうのが普通だ。そこを、「僕はニムロッド。」としたのは、ニムロッドが成長途中の人物で、あくまで現代に生きる人間であり、あだ名としてそう名乗っているにすぎないことを表現しようとしたのか?でも、そんな表現に意味があったのだろうか? 

作品の中のニムロッドは、もともとが将来の小説の元になりそうな話を想定してあったのだから、構語調に格調をたかめたり、なにか深遠で意味深な存在を連想させるような、それにふさわしい語り口がふさわしかったと思う。それでストーリーに悪影響があるとは感じない。古めかしい言い方にして、ニムロッド自身も演劇の舞台の独白のようなセリフをはいて、時代が変わっていくことに不安を抱いている様子を語らせた方が良い。せっかくのアイディアなのだから、カズオ・イシグロばりの格調の高さが欲しかった。

 

 

 

 

 

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