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2018年11月 7日

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(2017)

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- Forcus Features,Universal - 

 

ナチスドイツとの戦いが劣勢の中、新しく首相に選ばれたチャーチルは、たちまち孤立無援の状況に陥る・・・DVDで鑑賞。話が非常に上手くまとまっていた。   


この作品ではメーキャップの方が賞を取ったらしい。主演のゲイリー・オールドマンはチャーチルとは全く似ていなかったので、メイクの腕の見せどころだったろう。結局、チャーチルのような愛嬌のあるマシュマロマン型の目は再現できなかったので、キャスティングの時点で無理があったと思うが、そのハンデを演技力とメイクでカバーした力作だと思う。主演男優賞を取ったのもうなずける。


彼の秘書をリリー・ジェームス嬢が演じていて、こちらも良い味を出していた。際立つ美人としての役割ではなく、普通の英国人としての大事な存在だったようだが、好感を持てた。控えめな演技、演出が成功していたようだ。  


この作品での悪役はヒトラーではなく、政敵のハリファックス卿だった。陰湿な謀をめぐらし、次の首相の座を狙う個性は、悪役としては最高だ。でも想像する本物のハリファックス卿は、おそらくソ連を最大の敵と考えており、そのためにドイツとは敵対しないほうが良いという基本方針で行動していたのではないかと思う。貴族生まれの議員の場合、その方向で考えるのが普通だろう。  


詳しくはないし、調べたわけでもなく、また調べようもないのだが、彼がただ怖気づいた人間とは思えない。基本理念が異なるソ連とは交渉すら難しいと考えたとしても不思議ではないし、間違ってもいなかったと思う。ただ、当時の英国民の多くがナチスを嫌悪し、ソ連よりも先にドイツを倒すべきと考えていた場合は、その方向の政策を取らないと失脚してしまう。その流れになったのだろう。 


ユダヤ人を敵視するナチスに対しては、報道機関が敵意を煽るはずだ。よって世論は反ナチスの路線になりやすいだろう。ナチスの理屈は通りにくい。しかし、たとえばインドに対する政策では、チャーチルこそが徹底的な抑圧支配を主張していたというが、ハリファックス卿は硬軟織り交ぜた対応をしていたらしいので、戦後の経過をみると、ハリファックスのほうに先見性があったのかもしれない。   


彼は経験上、どのように撤退し、最大限の権益を守るかに徹した現実派の政治家で、勢いで徹底抗戦を貫いたチャーチルこそ、非現実的かつ、長期的な展望を誤った政治家だったのかも知れない。ドイツが上手く立ち回り、ユダヤ人や英国への野心を隠して行動していたら、チャーチルに出番はなかっただろう。さらにもしもの話だが、米国が参戦することに失敗していたら、ドイツはもっと長く欧州を支配していたと思う。ソ連軍も攻めることは難しくなったろう。   


結局、支配の維持は難しいので、時間が経てばソ連軍がドイツと敵対することになり、東欧や、下手すると、ドイツ本国やフランス領までソ連になっていたかも知れない。その勢いが明らかになった時点で、米国は確実に参戦してくる。日本はそう読んで、形成が分からない間は忍耐することが最善だったのではと考える。もし本当に中国を占領したら、確実に世界中から袋叩きに遭う。支配者がドイツだろうとソ連だろうと、その点に関して例外はない。米英、独露とも、協調してくるはずだ。手を引くしか選択肢はなかったはず・・・・  


徹底抗戦しきれなかった国がどうなるかは、作中でチャーチルも述べていたが、かなり彼の言葉通りになったようだ。

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