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2018年9月 9日

嘘だらけの日独近現代史(2018)

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- 扶桑社・倉山満著 -                

 

著者の倉山氏は、次世代の党のアドバイザー的な活動をしている方らしい。本業がよく分からないが、学者や外交官ではない様子。コメンテイター、言論活動や番組制作などを通じて帝国憲法擁護の立場で活動している人らしい。     

 

この本の語り口は明解である。異論がありそうで曖昧な内容も断定的に書かれており、簡潔明瞭で非常に分かりやすいと感じた。しかし、そのため客観性や信頼度の点には難があると思う。そして言葉の調子も軽い。テレビで話す場合には許されるかも知れないが、文章にする場合には一定の重さが欲しいと劇場主は思う。       

 

歴史上のことには人命を損なった事件、戦争や虐殺などの悲惨な事象が必ず含まれており、自然と記述の仕方は重々しくなるはずである。殺し合いをともなう事件、事象をギャグ扱いするかのような感覚は、いかにも軽い考え方を感じる。そして、戦前戦中の人物には遺族が必ずいる。よく知りもしないでバカ呼ばわりするのは、配慮に欠けると思う。     

 

この本の文章のような感覚で物事を語る人物では、書いた内容も信頼できないのではと、疑問が湧く。政党にアドバイスして大丈夫だろうか? ただし、この本には真実も多く語られていると思う。我々世代は、戦後の米国の宣伝に忠実な内容で教育されてきた。民主的な社会をもたらしてくれた米国に、感謝の気持ちを持っている。しかし、我々は米国の都合によってそのように教育されただけであって、旧日本軍の行動にも一定の根拠はあったはずだ。旧日本軍にも正しい行為が、なかったはずはない。ドイツの行動にも、胡散臭いものは感じる。この本のような視点も必要だろう。     

 

もしかすると著者は、テレビ討論会向きの人物なのかも知れない。テレビ討論でよく見かける出演者は声が大きく、口調が早くて激しい。しかも論敵の発言を途中で遮り、相手に最後まで話させない傾向がある。昔ながらの、静かに正論を語る学者タイプの出演者では視聴者受けを期待できないから、自然と激しい口調の人間が集まりやすいのだろうか?       

 

出演するからには、「・・・と思われる」、「・・・の可能性が高い」といった表現は好ましくない。およそそうである場合には「そうである!違うと言うのか!」と勢いよく断言する必要がある。視聴者に向ける印象、訴えるための表現方法、一種の演技のようなもので、それを徹底しきれた人が番組で生き残れる。内容が正しいかどうか、正確かどうかは関係なく、討論型の話し合いの場合には、ディベートの約束が全体を支配する構造になるのだと思う。      

 

そこで思ったのだが、もしかしての話だが、旧日本軍や戦前の政府内部での話し合いがディベート型で成されていたら、当然ながら勢いの良い討論になっただろう。冷静な話し合いは困難だ。正確な分析、クールな計画作成は、ディベート型の話し合いではできっこない。 「相手は日本の数十倍の戦力を持っており、まともに戦うことは避けるべきと思われる」・・・「思われるとは曖昧な表現!勝つ可能性がないと言うのか!わが軍に力がないと言うのか!」・・・「可能性がないわけではない。しのいでいる間に情勢が変わり、講和に持ち込むこともできるかも知れない」・・・「曖昧だ。だが結局お前も認めた。勝つ可能性は十分にあるじゃないか!」そんな会話も充分にありうる。子供の口喧嘩のパターンであり、大事な会議では絶対にやってはならない話の進め方。    

 

良い結果を期待する場合は、視聴者受けを期待するのではない、退屈で慎重な思考過程が必要だと思う。重々しくなるべきだ。

 

 

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