映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« フェリーニのアマルコルド(1973) | トップページ | スリー・ビルボード(2017) »

2018年9月 3日

一気に読める戦争の昭和史(2018)

Photo         

 

-小川榮太郎著、扶桑社新書 -          

 

2015年に発刊された同書の新書版。「一気に読める・・」のタイトルの通り、複雑になりすぎないように簡潔に書かれた本で、とても読みやすかった。視点が優れていると思う。太平洋戦争、日中戦争の時代に限定して書くことで、問題点に焦点を集め、内容をまとめやすい構成になっていた。明治から連続して歴史を書いてしまうと、どうしても焦点がぼやける傾向がある。歴史が当然明治からつながっているとしてもだ。どこかで時代を切り取らないといけないから、良い選択をしていた。 


著者は本物の学者ではないようで、そのせいか記載内容の正確さには疑問を感じた。また、特定の政治思想に偏らないよう注意したと書かれていたが、それにも限界はあったと思う。著者もそのことを断っている。しかし、あえて断り書きをする必要はない。他の本はもっと偏りが酷い。くどくど断るのは、気にしすぎだ。    


しかし誰かを賛美したり非難したりするのは、歴史を振り返る時に好ましいものではない。難しいことではあるが、分析をするからには常に第三者の立場に立つよう努力し、日本人以外の人物が考えるかのような態度が望ましい。その点については、この本と言えども問題があったと思う。失敗した作戦について、悔しい、情けないといった感情を伴って書いてはいけない。それでは検証のレベルを下げる。突き放したクールな書き方が、本当は必要だった。   


全体の格調の高さというか、記載された内容、完成度についても、第一級品とは感じなかった。良い読み物であり、公正な立場に立とうと努力はしていても、質の点で残念な面はあったのではないだろうか。たとえば「ローマ人の物語」の塩野氏の文章の格調の高さと比べると、かなり質が低い印象を受けた。本のボリュームに限界があるから、思ったことを書けなかっただけかもしれない。あるいは、そもそも分析のレベル自体が違っていたのかもしれない。そうだとしても、他の新書の歴史ものよりはずっと上の内容だとは思う。    


劇場主は米国や中国の首脳たちがどのように考え、日本軍を葬ろうと考えていたのか、その点に一番興味がある。日本の敗戦は自滅だったのかもしれないが、敵の戦略が成功したから日本側が負けたと考えるべきだろうから、どのような戦略を立てていたのか、真の姿が分かると良いのだが、米国も中国もすべてを公表しているはずはなく、実像を上手く隠しているように思う。    


民主主義のために日本を退治したといった宣伝によって、真実は隠されているはずだ。宣伝戦は実際の戦争の勝敗によって形成も決まるから、途中の段階での最前線の外交交渉内容が分かると、本当の姿が見えて来るだろう。しかし、それは難しい。時々古い記録が発見されて、NHKのドキュメンタリー番組などで解説されることがあり、米国が日本側を追い込んでいった様子を垣間見れるが、米国は事実の隠し方が非常に上手いようだから、番組が調べた内容さえ本当なのか分からない。 


ルーズベルト政権が何かのコメントをしていたとしても、それは宣伝の一環であって真実ではないことも多いだろう。誰かが回顧録を書いたとしても、自分の責任を回避するために真実をゆがめているかも知れない。大量虐殺を命じた場合は、記録を改ざんしたり、処分したりしていると考える。その歪んだ記録を見つけているにすぎない可能性もあるから、真実を知ることは本当に難しいものだと思う。   


旧日本軍は見通しを誤り、作戦は後手に回り、運にも見放されたりしたはずだ。もっと上手く立ち回れた可能性はあると思う。しかし、どうやれば良かったのか、どうやれば敗戦しないで済んだのか、戦わないで済んだのか、その答えは、おそらく国際情勢が変わって、記録がもっと公表されないと分からないだろう。   

 


 

 

 

 

 

 

 

« フェリーニのアマルコルド(1973) | トップページ | スリー・ビルボード(2017) »