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2018年9月21日

七つの会議(2016)

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- 池井戸潤・集英社文庫 -           

 

大手メーカーの子会社でパワハラ騒動が発生。怠け者社員を課長がやり込めたのがパワハラになったのだ。騒動は、やがて会社を揺るがす騒ぎに発展していく・・・・ 池井戸潤の小説の文庫本を購入。充分に楽しめた。      

 

この話の構成方法は、同じく池井戸氏の「銀行総務特命」に似ていると思った。雑誌に掲載されたものかも知れない。独立した読み物の各々の章が、結局は連続した流れで結末に向かっていく。誰かの視点で各々の章は進んで行くが、会社の中でのことだから、互いに関係しあい、時には敵となり、時には協力し合って、やがてかなりの人達が運命を共にしていく、まるで大河ドラマのような話になっていた。           

 

考えてみれば、多くの企業がこんな仕事を積み重ねているのかもしれない。新しい商品を生み出し続け、売り込んで成長し、新しい社員が次々登場して行くばかりではないはずだ。以前からの契約を破棄されたり、価格を下げるように圧力をかけられたり、苦しい交渉を繰り返していることだろう。それは、さながら歴史小説ばりの、壮大な物語になると思う。切り合い、殺し合いになっていないだけだ。        

 

さらに感心したのは、各々の章で主役となっている人物の、出身、成長の話が盛り込まれていた点。悪役と言えども、それぞれの会社員は苦労して入社してきたり、家庭が犠牲になっていたり、面白おかしい人生ではなかったはずで、会社で成果をあげるだけ頑張れるのは、頑張らざるを得ないだけの理由があったのだと、その人物紹介で理解することができる。そこが徹底していたので、人物に実在感のある共感しやすい対象として感じることができた。         

 

この物語でも、問題の中心は「ネジ」になっていた。池井戸作品ではたびたびネジの問題が出て来る。確かにネジは重要な製品で、精度が少しでも狂えば、巨大建造物も簡単に壊れてしまう。でも製品の単価は安く、多くの場合は町工場が大手の製造所から委託されて製造しており、契約更新のたびに怖い思いをしていると想像される。中国製品との競争も、大きな問題になっているはずだ。池井戸氏が銀行勤務時代に、実際にそんな現場を担当していたのかも知れない。        

 

日産やスバル、製鉄業界で法令違反が次々明るみになった時期があった。不正行為への誘惑は、業種を問わずあるものらしい。よほどな足枷がないと現場に侵入し、蔓延化していくものだろう。上司から強要された場合は断りにくいが、その上司だって保身のためには平気で裏切るものだ。劇場主にも経験がある。劇場主の場合は断ったために実際にクビになったが、大きな会社じゃなかったから悔しくもなかったし、生活に困ることもなかった。事情によっては、断るには勇気が要る場合もあるだろう。 

 

 

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