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2018年9月15日

それでも、日本人は「戦争」を選んだ(2009)

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- 加藤陽子、新潮文庫 -                 

 

高校の歴史研究会で行った特別授業を編集した本。2009年は朝日出版社から本が出て、その後新書として2016年に新潮社から発売されたものを購読。   


著者は加藤陽子という教授。この教授を、たまにテレビで見かけることがあるが、派手に討論するタイプではなく、静かに話すタイプなので、討論会の常連のいい加減な論客ではなく、本物の研究者と感じていた。この本の内容も至極まともなもので、自分の思い込みだけで書いたものではなく、一定の裏付けのある内容と感じる。   


説得力のある本だった。構成、企画がもともと良かったのだろう。高校生に向かって話す場合は、大学生や一般人とは違う。最新の知見だが曖昧といった話では、高校生相手ではマズイ。受験前の人間には、一定の証明が成された事しか話すべきではないという常識がある。その常識にしたがって、この本は最新ではないが、正確な内容だろうという安心感、信頼感を生んでいる。派手な断言口調で人気を得るタイプの論客もいれば、学術にこだわるタイプがいてもいい。そんな本こそ読みたい。できればテレビ討論会も、事実に忠実な高いレベルの議論になれば良いのだが・・・・   


国民の中に、戦争への道を好ましく思った人達が多かったことは間違いないと思う。年寄りたちと話していて、そんな臭いは感じることが多かった。誰でも自国の軍隊が負けるより勝つ方を好むし、勇ましく進出していくほうが、撤退するよりも嬉しい。それは単純な感情だ。それだけで、一定程度の割合で戦争を支持する人はいる。  


三国干渉は、普通の感覚なら許し難い横暴と感じたはずで、これも単純な感覚で、やがては復讐すべきという感情につながったことだろう。日露戦争当時と第二次大戦当時では兵士のモラルが違っていたというのも、復讐心が影響していたかもしれない。人は復讐となると理性を失い、残虐になるものだ。三国干渉をやられた時点で、その後の経緯は、ある程度決まっていたのかもしれない。  


復讐心に捉われずに冷静な頭で勝てるかどうか、進むか引くか、待つか勝負するかを正しく判断できるか、あるいは考えの足りない人間が指導者になるか、そこは運がかなり影響しているように思う。 三国干渉をやられても、しぶとく時を待つことは可能だった。でも流れに抗えなかった。 同じように今後、ポピュリズムの流れに乗って、派手な扇動者が政権を担ったら、同じことを繰り返す羽目になるかもしれない。既にそうなっているのかもしれない。理性には、あまり期待できないように思う。   


歴史に関しての証明は非常に難しい。つい近年のことであっても、問題の当事者を詰問した時には、「記憶にない・・・自分は命令に従っただけ、責任はない、悪い意図はない。」など、言い逃れをしようとする人が多い。劇場主が彼らの立場であってもそうだろう。当然の話である。おそらく、歴史上の人物でも過去の失敗について聞かれた場合や、自分が著作で当時のことを述べるような時には、同じようなレトリックが使われやすいのではないか?  


したがって、誰が何を述べていようとも、基本は嘘で固められた内容かも知れない。手紙だから正直に述べるだろうとか、近親者に対しての言葉だから本心だろうというような思い込みは良くない。親しい人にこそ、好かれたいあまりに嘘をついている可能性はある。歴史上の事象を理解するためには、二重三重の裏付けがあることが望ましい。裏付けの難しいものは、すべて「その可能性がある。」「と、思われる。」という表現をすべきだ。テレビの論客の多くは、それがウリでもあるのだろうが、単純すぎる人が多い印象を受ける。  


 

 

 


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