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2018年8月25日

陸王(2016)

Syueisya_inc        

 

- 集英社 -         

 

足袋を作る会社が、新規事業としてスポーツシューズを開発しようとする。しかし資金不足、技術的課題、ライバル会社の妨害など、様々な苦難が待っていた・・・・池井戸潤氏の本を購入。  

 

この物語はテレビドラマになっていて、後半部分を観ることができた。主役の役所広司の演技は少しオーバー過ぎる印象も受けたが、勧善懲悪、次々とやってくる難関に懸命に抗う社員たちの姿には訴えかける力を感じた。    

 

池井戸作品では「ルーズヴェルト・ゲーム」でも野球の戦いと電気部品の会社の開発競争が描かれていたが、この作品は陸上競技とシューズ開発が題材になっており、スポーツの感動と開発の苦悩を重ねる点が共通している。ふたつの戦いが連携し、相互に盛り上がる仕組みは、よく出来ていた。しかし、今後もまた同じような構図を使うと、さすがに飽きられるだろう。このパターンの話は、そろそろ終了したほうが良さそうだ。   

 

銀行と企業の関係について、この作品には考えさせられる。銀行は貸し剥がしなどを厭わない冷酷なイメージがある。温情ばかりでは資金を回収できないから仕方ないとは思うが、中小企業にとっては怖い存在である。おそらく銀行員の多くも、この作品に登場していた融資担当者と同じように、自分たちの仕事の限界を感じていると思う。出世に成功した頭取だけは、自分の仕事を肯定的に感じているかも知れないが、普通の感覚で言うなら、社会に対する責務を果たす努力を怠り、回収できる企業にしか貸してこなかった面があると感じるのではないだろうか?       

 

銀行員がベンチャーキャピタルに移るのは、危険を冒してでも企業の成長に賭けてみたいという意欲がある人物だからで、彼らはベンチャーに投資しない限り日本の未来は暗い、今までの大企業中心の融資では欧米には勝てない、そう感じていると思う。ここ30年くらいは、そんな例をたくさん見て来た。

米国の銀行だって、ベンチャー企業に安易に資金を出しているはずはない。あちらは銀行以外にも資金を提供する仕組みが色々あって、プレゼンテーション内容に納得できるなら信金提供の契約を結ぶという伝統が昔からあり、日本のように経済産業省の企画に乗って資金が動くタイプの流れではないことが、今の状況につながっているように思う。発想が新しい企業が、日本では資金を集めにくい。  

 

そう考えると、中国のように権力側が指導して産業を育成した国は、やがては競争に負ける可能性が高いかもしれない。日本にも斬新な企画をする企業はあるが、米国のように 次々と誕生し、一気に巨大化する動きになっていない。つまり金の動き方が関係しているはずだ。  

 

中国でベンチャー企業が発生していると聞く。多くは大学から研究者が独立するタイプのようで、米国を真似ている。これが続けば、市場の規模から考えて一時的に米国を上回る成長も起こりうるかも知れないが、斬新な企業が続く環境にあるかどうかは疑問。国の体制が違う。

管理が緩いと汚職や不正が蔓延し、管理がきついと国営企業が優先されてベンチャーが育たない。政府が既得権益を優先し、ベンチャー側に冷たいなら、ベンチャー側は国外に逃げるだろう。資金の流れ、投資をどのように集中させるか、国や地域が応援するか排斥するか、その微妙な違いが国や地域の発展に影響してくるものと思う。  

 

 

 

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