映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« キングズマン:ゴールデンサークル(2017 ) | トップページ | BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016) »

2018年7月 3日

シュー・ドッグ(2017 )

Shoe_dog_phil_knight

 

- 東洋経済新報社 -


ナイキ創業者の一人だったフィル・ナイツ氏の自伝。波乱万丈の企業家人生が描かれている ので非常に面白い。読んで勇気が出るような、読後の精神高揚効果のある作品だ。映画化されそうな気もする。  


成功者の話は楽しい。当たり前だが、途中がどんなに苦しくても、最後には克服できると分かっている。ナイキも途中は綱渡りだったようだが、大成功したと皆が知っている。  


この本を読むまで、ナイキとアシックスに因縁があったことを知らなかった。ナイキとアシックスの間で裁判をするなら、本当は全員マイノリティの陪審員に判断させるのが適切だったかもしれない。差別意識の要素は大きいからだが、まあ現実には無理だろう。米国の裁判制度の中で勝つのは難しい。 


どちらがどちらとも言い難いが、アシックスが損した部分は大きかったと思う。ノウハウのかなりの部分が持っていかれたようだ。アシックスの人員もナイキ側の工場に移ったと言われているので、言い方はなんだが、アシックス側としては技術が盗まれたという印象を持っているのではないだろうか?    


ナイキ側が最初からそれを意図していたかどうかの証拠はないだろうが、まったく考えてもいなかったとしたら、ナイツ氏は大バカ者だ。工業製品は安い工賃で作り、追加のアイディアを盛り込んで、良いイメージを作ってたくさん売るのが基本なので、盗みは日常茶飯事でもある。アシックス側も技術流出は覚悟しないといけない。ナイツ氏が盗まなくても後進国はコピーしてくる。それらより高いレベルで戦えるように、努力を続けるしかなかった。   


ナイキ側には有利な点が多かった。バウワーマンという有名なコーチがいたことで、製品のアイディアと宣伝効果が最初から備わっていた。彼が創業に関わっていなかったら、会社の設立さえ難しかっただろう。いかにナイツ氏が優秀でも、オレゴン大学に進んで陸上競技をやり、バウアーマンと会っていなかったら、スポーツをネタに商売ができるという発想すら生まれなかったかも知れない。 


ナイツ氏の視点も素晴らしかった。技術に優れた日本の工場を使えば、ドイツの靴に対抗できるかもしれないという視点が、そもそも適切だった。アメリカで靴を作っても、勝負にならない。価格と技術のバランスを考え、生産場所として日本を選んだのは当時としてはベストの選択だったろう。 優秀な部下や、優れたアイディアマンが集まってくれたことも幸運だったと思う。本人のキャラクター、運営スタイルも良かったのだろう。      


劇場主の印象では、40年前くらいに急にナイキブランドが流行りだしたが、全く未知の斬新な会社であり、シューズより先にシャツのほうに印象が残った。新しく、斬新というイメージがした。イメージ作りが上手かった。そのナイキが長いこと経営破綻の瀬戸際だったとは、思いもよらなかった。   


売れたのはアディダスが第一。やたら高かったけど、ボルグが着ていたフィラも有名。同じころ、安めのプーマ。もっと安いカッパ。そんな風に、値段やイメージの違う会社が色々あった。数から言えばアディダスやミズノのほうがメジャーで、アシックスは性能の良さに感心はしていたものの、商売下手なのか、数的にはミズノのコーナーのほうが広く、品ぞろえも良いことが多い。いまだに、その傾向を感じるが、熊本だけの現象だろうか?   


自分の会社で工場を持つのではなく、安い労働力と優れた技術のある地域で生産し、ブランドイメージで売るというシステムが、あらゆる業界で進んだ。ユニクロなど、衣料品はほとんどそうだし、スマホやタブレットもそうだ。巨大な工場を持つことにこだわった日本企業は大きなダメージを受けた。各社ともそれなりに海外に進出したが、米国の他国籍企業ほどドライにやれなかったのではなかろうか?     


だが、その流れがいつまでも続くとは限らない。米国だって国内の産業は必要だろうから、今後はシステムが変わらざるを得なくなると予想する。ユニクロ税、ナイキ税など、企業の形態、場所に応じて管理すれば、多国籍企業の税金逃れもやりにくくなるから、米国だって考えるのではないか?  ナイキのようなグローバル・システムも、やがて生き残れなくなる日が近いかも知れない。その時、自社工場を持つアシックスが、世界を席巻する可能性だってある。アシックスは、とにかく本当に良い品を作るから。 





« キングズマン:ゴールデンサークル(2017 ) | トップページ | BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016) »