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2018年7月23日

シェイプ・オブ・ウォーター(2017)

The_shape_of_water

- Bull Pro. -  


研究施設で掃除人を務めるヒロインは、施設に持ち込まれた生物に心を奪われる。米軍は、その生物を利用するため、解剖して秘密を得ることを狙う・・・     


ギレルモ・デル・トロ監督の作品で、アカデミー賞を取った。この作品は劇場で鑑賞する価値があると感じた。美しい映像、豊かなセンスを感じる表現力に感嘆した。悲しいファンタジーであり、純愛映画とも言える。でもエログロ的なゲテモノ趣味や、スパイ映画の要素もある。この作品がアカデミー賞に相当するだろうか? するかもしれないし、微妙かも知れない。   


ストーリーだけで心をうつタイプの作品ではないようだ。作品はロミオとジュリエットに似た経過をたどるが、美男美女の物語ではないし、残虐さが露骨に表現されている。 映画にもいろいろな作り方、趣向がある。斬新な映像美で観客に訴えるのは常道だ。高度なCGを使って、色鮮やかなシーンを作り、美しさやスピード、迫力の面で観客に訴えるのは王道だ。多くのSF映画は、この方向で作られている。ストーリーの意外性、怖さ、斬新な設定で売ろうと狙う作品群もある。そしてセンスの面を重視し、独特な世界観を打ち出す面々もいる。   


ギレルモ・デル・トロ監督は、本当に独特なセンスを持っているようだ。想像なのだが、監督は暗闇に対する強いトラウマを持っているのかも知れない。過去の作品も映像が暗めに思えるし、幻想的な暗闇のシーンが多用されている。それに神秘性が感じられるので、作品の魅力になっている。トラウマや障害が作品の質を高める効果は、かなり一般的なものらしい。芸術家の多くは標準から外れた感性を持っていて、それを表現した時に魅力が際立つ。異常さは、特色になる。   


この作品では素晴らしい悪役が登場していた。警備を担当する元軍人のストリックランドだ。顔も悪役らしいし、新車や不倫、出世に執着する個性も実に素晴らしい。冷戦時代の米国なら、彼のような考え方をする人物が出世競争をしていただろう。 共産主義勢力に対抗するために、非人道的なことをやっても称賛されていたはずだ。あの時代の米国の主流派を、彼は体現していた。多くの成功者は彼のような人物だったはずだ。ただし、演出が少しオーバー過ぎた感じもする。普通の人が、職を失わないために過激になるという描き方もあったかもしれない。車を壊す奴は許さん!といった理由でヒロインらを殺そうとしたほうが、分かりやすかったかも知れない。    


ヒロインも実に魅力的だった。孤独で、友人が少なく性的に満足できていないことも明らか。言語障害があることも特徴だった。障害者を見ると自然と同情の気持ちが湧いてくる。そして異種の生物とコミュニケーションをとる場合には、言語よりも手話やジェスチャーのほうが有効だろうから、ヒロインの個性を設定する場合に、とても好都合だった。でも彼女が未知の生物に心を奪われる経緯は、少し納得しにくいものも感じた。普通ならまず恐怖を感じると思う。不自然だった。  


作品の大きなテーマを考えると、主義や自分の立場、出世や富のために平気で他者を傷つける人間を嫌悪し、偏見なく他者に接する人を支持する姿勢を感じる。人種、外見や主義、宗教に関する一般的な感覚に対してのアンチテーゼが、この作品の根底にあるようだ。不寛容、頑迷さは時代が変わってもなくなりはしない。劇場主も、あの生物を見たら気味悪く感じ、棒切れを持って接しようとするだろう。自分や家族を守ろうとして、過剰な防御態勢をとってしまうはずだ。   


過剰な防御をする権利が法律で認められたら、やっかいなことになる。米国の病根はそこにあるように思える。銃の携行が認められ、他国に軍を駐留させ、米国企業の利益のために他国に圧力をかけても称賛される。罰を受けたりは滅多にしない。国内でも弱者に対しては同じ姿勢になる。それらが法で認められると、ストリックランドのような態度の人間によって遂行されてしまう。 勝者の運命なのかも知れない。

 

 

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