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2018年7月12日

オリエント急行殺人事件(2017)

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- FOX -


アガサクリスティ原作の推理小説の映画化作品。前回は1974年にアルバート・フィニー主演で制作されていたが、今回はケネス・プラナーの監督、主演で作られていた。  


制作の意図が最後まで理解できなかった。もしかするとCGを使って列車の移動の様子を迫力たっぷりに描こうという狙いがあったのかもしれない。さらに、列車の窓の中と外で視点を自由に移動することも、今なら可能だ。クレーンやドローンを使って、視点をダイナミックに変えて表現したい、そんな技術的な欲求があったのかもしれない。   


有名俳優を集めれば、前作と同様の集客効果も期待できる。そのような内容を提示して企画が通り、予算が集まったのだろうか? 列車の動きの迫力に関しては、前作より断然素晴らしかった。迫力がありすぎて、あんなにスピードを出したまま雪山に入ったら、簡単に脱線するだろうという不自然さも感じたくらいだ。いっぽう駅の雑然とした雰囲気や、機関車の煙が立ち込める様子などについては、前作のほうが懐かしいような感覚が感じられ、この作品のほうが演出臭い印象を受けた。  


ケネス・プラナーとアルバート・フィニーでは、個性の面では断然後者のほうが際立っている。小説の表現から考えると、ポアロは小柄で偏屈で、異常な人格の持ち主と思えるが、この作品のポアロは普通の学者のようにしか見えない。もっと特殊なメーキャップしても良かったのではないだろうか?


最後に推理を披露するシーンも、原作とは違っていた。さながら最後の晩餐の絵のような長いテーブルが用意され、寒い外で、おそらく現地の人達にも聞こえそうな大声で話がなされていた。あれでは現地の警察に逮捕されてしまいそうだ。列車の中でもよかったのではないだろうか?風邪ひくかも知れないし・・・  


「ナイル殺人事件」の予告みたいなシーンが最後にあった。もし、この作品に大変な人気が出て、今後の予算が確保されるなら、続編ができるかも知れない。でも劇場主は、次回作を見たいとは感じなかった。よほど斬新なことをしない限り、期待感を持って鑑賞することはできない。有名な作品をリメイクするのは勇気が要る。それをやれと言われても、どうやったら良いのか分からない。 


おそらくCGの技術だけでは難しいのではないだろうか?  悪役が善玉に変わるくらいの、大胆な変化が望まれる。もし今回の悪役が弱々しい風体で、必死に命乞いをしているのに無残な殺され方をするとしたら、犯人達と悪役のやりとりは非常に現代風になるかも知れない。イスラム国をめぐる報道映像を思い出したりして、見ていて辛くなるだろう。誰からも好かれていたアームストロング大佐が、実は戦地で悪役氏の家族を犠牲にしていて、その復讐が根底にあったのだとしたら、どっちが正しいのか分かりにくくなる。犯人たちは激しく後悔するラストになり、観客もどう考えてよいのか分からなくなる。   


そんな、よく分からない事態こそ現代風ではないか。でも、それは興行的には最悪の選択になりそうな気もする。

 



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