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2018年5月31日

日本軍兵士(2017)

Tyuukousinnsyo

- 中公新書・吉田裕著 -  

 

著者は吉田裕氏、一橋大学の教授だそうだ。太平洋戦争の反省、検証を試みた内容と考える。 

 

記載されているかっての首脳たちには遺族もいる。首脳たちは敗戦の将だが、家族の心情を考えると記述には注意が必要。かといって同情心全開、忖度とイデオロギーに満ちた賛美のし過ぎもいけない。間違いは間違いとして、純粋に訂正と改善を目指す・・・それが難しいことだが、そう目指すべきと考える。 著者の吉田氏がそのようなスタンスに立っているか、少し疑問を感じた。やや感情的な表現もあるようだ。 でも、概ね学術的に述べている印象。内容が著しく左に偏っていると評価するのは無理がある。 

 

本でも取り上げられているインパール作戦は代表的な失敗事例だと思うが、あの作戦では兵站を十分に考えていなかったのは間違いない。 それが悲劇の直接的原因になっているはずだ。 補給の確保は簡単じゃないだろうが軍隊の基本である。どんな思考回路で作戦を決行したのだろうか? 反対意見もあったろうに、強行を防げなかったのは組織に問題があったからだ。そこを検証し、再発を防がなければ、兵士は「俺たち、無茶な作戦に駆り出されないかなあ?」と、常に思っておかなければならなくなる。それではいかな勇者でも、戦意喪失する。失敗例については、検証を妨げてはならない。気分が滅入っても、検証作業は大事だから、止めてはいけない。

 

歴史の検証は難しい。特にイデオロギーが関係する近代以降の歴史を語る場合は、ひとつの事象を同時に見ているはずでも、解釈が全く正反対になることが珍しくないようだ。そして記録する人にも立場があり、忖度によって記載を変えたり、記録を捨てたりされることもあったのだろう、昨今の自衛隊の日報の記録についての報道を見ると、捨てたり編集したりが普通に行われている。なんたる認識不足。昔はさらに酷かったに違いない。事実は隠されるものであり、真相は簡単には分からない。

 

そもそも中国への侵略が、どうして実行されたのだろうか? 石炭以外の地下資源は、そんなにあるようには思えないので、経済圏を作って欧米の帝国主義に対抗しようと考えたのか? 確かに当時の帝国主義は激しく、日本は不利な立場だったろう。それに中国は大きい市場だ。でも、経済的な意味合いがどれくらいあったのか分からない。また実際に侵略が達成可能かどうか、維持できるかも不透明だ。欧米からの妨害や現地の抵抗を排除できると考えた理屈も分からない。 

 

劇場主は間違いを正さないと進歩しないと考えるので、当時の間違った人達がどう考えていたのか、意志決定がどのようにされたのかに興味はあるのだが、一般的にはそういう考え方は主流じゃない。劇場主こそ間違っていると認識する人も多いだろう。過去のことは忘れようと考える人のほうが多いはずだ。いまさら考えても終わったこと、過去のことについては学者達の見解も分かれるし、イデオロギーに支配された極論も多いので、よく分からない。記録も不完全で、全面的には信頼できない。   

 

検証への抵抗、激しい批判も必ず起こる。論争は避けたいだろう。忘れたいし、都合の悪いことの責任を回避したい。忖度して保身や利益を第一に考えるからか、面倒な検証は気分的に滅入るといった理由からか、様々な思惑が絡んで、闇は闇のまま処理される傾向が続いている。多数派がそんな思惑を持っていると、検証するのが悪いことのように言われてしまう。正確に記録し、検証を続けないと戦いには負けるはずなんだが、もはや集団としての勝ち負けは気にならないのか?     

 

帝国主義は消え去ったわけじゃない。欧米諸国が手法を変えただけだ。野望の活動形態は変遷している。覇権を狙っている国がなくなったわけじゃなく、大戦以前より規模が大きいというのに、それを認識できていない人が多いだけと感じる。より強大な覇権国家が、すぐそこにある。こちらに隙があれば、相手は当然ついてくるだろう。失敗を検証して原因を把握し、学んで改善し次に備える。その姿勢が必要と思う。次の心配がないとは思えない。だから、こんな本は必要なのだ。

 

 

 

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