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2018年3月17日

ダンケルク(2017)

Dunkirk

- Warner Bros. -

 

ダンケルクからの撤退を、一兵士、戦闘機パイロット、民間船の乗組員などの視点から描いた作品。クリストファー・ノーラン監督作品。DVDで鑑賞。

 

ドラマとしては、あまり劇的なものは感じなかった。ほとんどの時間は沈没か爆弾の恐怖におびえる兵士の表情が描かれるだけで、際立つ英雄に相当する人物は少なく、過去の戦争映画のような活劇的な盛り上がりは考えていなかったようだ。

 

しかし、疑似体験の意味では非常に高度な作品。実際の戦場で英雄を目指す兵士は滅多にいるものではないはずで、どう生き残るか、敵から逃れるかしか考えられないことがほとんどのはず。銃弾が飛び交う中では、目立つのは危ない。そこを的確に描けていた点では優れていたと思う。  

 

特に船が沈没していく様子に、とても迫力が感じられた。過去の映画だと、血まみれ死体はたくさん出て来るが、船はゆっくり沈んで、英雄たちが何かを語る時間がたっぷりあった。演出過剰だと感じることが実際にほとんど。演出を排除すると、芸術性や訴えかける力が損なわれるという観念が主流だったのだろう。  

 

でも船内にいたら、あっという間に水が入ってきて、その勢いに抵抗する間もなく、外に逃れることが叶わないまま、悲惨な最期をとげる人が多いはず。船内で水が満ちていく時の恐怖は、この作品では強調されていた。ヒーローがさっさか逃れる作品は、もう嘘くさいと考えたのだろう。

 

スピルバーグ監督の作品でさえもそうだった。上陸作戦はリアルに描かれていても、ヒーローは信じがたいほどの活躍ぶりだったし、ゆっくり盛り上がりそうなセリフを述べていた。そこを排除するのは、勇気の要ることだろう。何を言いたいのか分からない作品だと、コケにされても仕方なくなりかねない冒険だった。  

 

冒険は成功したのかどうか、ちょっと微妙な印象。疑似体験をさせるなら、主人公は明確に一人に定め、他の人物はあくまで脇役、主人公と関わるだけに留めたほうが良かったと思う。たとえば戦闘機パイロットは主人公の兵士の兄か友人でないかぎり、顔を出す必要さえない。視点を複雑にして戦争の全体像に迫る方向と、疑似体験の方向は、相いれないものではなかろうか?  

 

BBC制作のダンケルク作品も変わった作り方をしていた。それでも、あれは旧来のヒーローが多数いる設定の作品だったようだが、分かりやすさの面では、このノーラン監督作品よりは完成されていた。

 

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