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2018年3月 5日

ありがとう、トニ・エルドマン(2016)

Toni_erdmann

 

- Komplizen Film etc. -

 

ドイツ人の教員である父と、コンサルタント会社で活躍する娘の物語。父親は娘が仕事するルーマニアに勝手に押しかけ、邪魔を始める・・・DVDで鑑賞。

 

静かな笑いに満ちた作品。爆笑シーンはほとんどないと思う。ギャグも古めで、日本人の感覚ではさえない喜劇と思えてしまうかも知れない。欧州、特にフランスでないと受けにくいような伝統的雰囲気の作品。芸術の匂いが漂うと誉めることもできるし、テンポに問題ありとけなすことも可能。

 

主役のペーター・ジモニシェックが変装する際に、しょっちゅう入れ歯を出し入れしていたが、少し意味が分からない時もあった。変装の最中は、ずっとはめ続けていたほうが良かったのではないだろうか?

 

イタズラの手法、演出手法にも疑問を感じた。米国流の喜劇映画の場合は、主人公がいたずらに失敗し、迷惑をかけて雰囲気を悪くし、誰かが真剣に怒って騒動を起こしたり、明らかにマズイ状況になることが多い。この作品では娘以外は誰も怒鳴ってきたりはしなかったが、もっとトラブルになっていたほうが哀愁が漂い、観客には受け入れられたのではないだろうか?

 

ぬいぐるみの帽子が抜けなくなったり、手錠のカギを失ったりの失敗は、米国流ならもっと悲惨に描かれるだろう。主人公が泣き出したりするほど、派手なドタバタ劇が展開されるはず。そこがないというのが欧州流なのだろうか?

 

場面の切り替わり方にも疑問を感じることが何度かあった。そして全体に少し長すぎる印象もあり、もっとスピードを上げて、シーンを限って編集したほうがテンポのことを考えると良かったのではないかと思う。そのいっぽうで、ゆっくりした流れは、親子の情愛のイメージには合致していた。あまりにドタバタしすぎると、味わいは損なわれただろう。

 

主役も存在感ある俳優だったが、娘役のザンドラ・ヒュラー女史も素晴らしかった。不機嫌そうな顔つき、きつい目つきが役柄に合っている。よく選んできたなと感心した。この役は可愛らしい女優である必要はなく、気の強そうなクセのある女優のほうが面白くなる。

 

東欧をEU圏に入れて欧米の企業は進出し、好調を保っていると聞く。安い労働力、豊かな資源と市場が陸続きでボーダーレスにあれば、発展はするだろう。現地の状況がどうかは気になるところだが、ビジネスマンたちは活発に活動して、この作品のようなドラマが各地で繰り広げられていると想像する。

 

でもビジネスウーマンの娘さんは、日本人よりは働いていなかったようだ。日本人のOLよりも条件が良い気はする。言葉、距離、歴史と伝統、人種、政府の方針など、ほとんどの点でドイツ人は優位な立場にあり、自然と労働生産性も高くなると思う。働き方改革の機運が高まっているというが、評価のもとになる各種の統計は、条件が異なる国々と比べているように思える。

ちょうど「ゆとり教育」と同じレベルの勘違いをしているように思える。条件が違う国の学者が言うことを、そのまま素直に深く考えずに政策として取り入れようとしても失敗する。深く考え、正しく検討して欲しいものだ。

 

 

 

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