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2018年2月15日

LION/ライオン~25年目のただいま~(2016)

Lion

 

- TWC etc. ー

 

インドの田舎で迷子になった主人公。養子縁組制度でオーストラリアに渡った彼は、地図検索と自分のわずかな記憶を元に、故郷を探す旅に出る・・・実話が元になった話らしい。DVDで鑑賞。

 

少年役は非常に可愛らしかったが、大人になってからの役者は、少し頼りない印象を受けてしまった。実際に悩みの多い青年だったのかも知れないが、映画で描く場合は故郷を探すために苦労し、探しきれずに苦悩するだけの、単純な個性であったほうが良かったと思う。

 

本当に少年は自分の家を説明できなかったのだろうかと、少し疑問には思った。言葉が違うとしても、通訳が可能な人間によって村の名前、川や山などの名前を聞き出すことはできると思う。言語障害か知能障害があって能力的に上手く説明できない子供もいるだろうが、そんな子供は主人公とは少し状況が合わない。少年は十分に賢く、話も上手だった。少なくとも34歳くらいの日本人がインドで迷子になったとしても、およその住所を聞き出すことはできそうだ。

 

ただし、彼を預かった施設の方針が影響する場合は違う。ある程度の住所が推定できても、そこを探すよりも養子にして欧米に送ったほうが子供のためでもあるし施設の意義にも合致すると判断していたら、彼の故郷のことは無視してしまうかもしれない。そんな善意からの悪行?があったのではないかと、感じてしまった。

 

ニコール・キッドマン演じた里親には感嘆する。自分の意志で、自分の責務として子供を育てようという考え方は、誰でもできるものではないと思う。最後のほうで簡単に説明されていたが、LIONというのは主人公の名前ではなく、養子縁組制度の愛称のようなものらしい。欧米諸国は激しい植民地支配をした歴史への反省からか、古代から続く保護者制度の名残りからか、異民族の養子を受け入れる歴史があるようだ。

 

日本でも多くの留学生を受け入れているが、養子縁組は欧米ほど多くはないと思う。一般家庭では家が狭すぎる、豊かさにも限界がある、あるいは東南アジアを占領した歴史があって、しかも敗戦国であるなど、少し欧米と条件が違う。犯罪めいた養子縁組の例もあるから、いかがわしい意図を疑われるのが嫌という感覚もあるだろう。日本人がフィリピンの孤児、中国の仕事したそうな少女を養子にしたら、絶対によからぬ意図があると思われるだろう。

 

インドやアフリカ諸国の子供たちの場合、母国に残るか欧米に行けるかは、人生を大きく変える。そのままだったら死んでしまってもおかしくない子供は、今でもたくさんいるはずだ。少々うがった言い方だが、そうなっている理由のひとつは、我々の経済活動にある。後進国は経済的に支配され、生まれながらにして弱者になりやすい社会の体系がある。酷い状況の子供は救われるべきだ。

 

しかし、どの程度救うべきか、そこが分からない。人智、理想を超えた問題がある。救い過ぎると相手国が依存してくる弊害、人口の爆発、救われなかった子供との不平等、自国の子供からの反感、衝突、なんでも起こりうる。善意の養子縁組制度は古代からあった。しかし、それで人類が救われたりはしなかった。見もふたもない言い方になるが、それも確かな事実である。

 

 

 

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