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2018年2月18日

舟を編む(2013)

The_great_passage

 

- Shochiku -

 

辞書の編集を担当する青年の物語。人とのコミュニケーションに難がある青年は、編集作業を延々こなすことになるが、作業は膨大。企画自体が危うくなってくる・・・・DVDで鑑賞。

最近、広辞苑が再版になっている。より巨大化し、片手で持つのは難しいほどの書物。ネット時代に、あえて巨大化で勝負する、その心意気に感心する。体力のある会社でないとできないことだ。

 

作品の宣伝は何度も観ていたが、あまりにもマイナーな企画なので、さして興味も持てないまま、鑑賞はお流れになっていた。今回は近所のビデオ屋さんの棚でたまたま見かけたので鑑賞。ビデオとしては高級な出来栄え、でも劇場での鑑賞にはどうだろうか?といった印象を受けた。素晴らしい題材だが、テンポを調整して心地よい雰囲気をつくるまでには至っていない印象。

 

作品として実によくまとまっていた。コミュニケーション障害のある主人公は、存在するだけでも興味を惹く。その彼が壮大な仕事をこなしていくと、達成できるか期待する気持ちが生まれる。その気持ちは作品全体への期待につながる。実によく出来た話だった。

 

宮崎あおいが出演しているから観たのかもしれない。彼女が出演した作品に大きな失敗作はない。きっと作品の質を上げる稀有な才能を持っているのだろう。もっと美人のスターはたくさんいるが、まなざしの使い方、幼児のような顔と体型などが相まって、旧来の名女優たちとは個性の違いがあり、そこに観客が何かを期待するという仕組みが出来上がっているように思う。

 

そう既に名女優だろう。大竹しのぶや、古くは高峰秀子や沢村貞子など、名女優はたくさんいる。名女優になるためには個性と演技力、自分の個性を生かす能力、集中力や企画力も必要なのかも知れないが、宮崎あおいの場合は相手役の支えになりそうな強さ、自分の世界を確実に持っていそうな雰囲気が実にうまく表現できている。子供のような顔が、たぶん役立っているのだろう。名子役のような存在なのだろうか?子役がそのまま順調に大人になったら、たぶん彼女のようになるのか?

 

主演の松田龍平も役柄に個性が一致していた。彼はバラエティ番組にもたまに出演しているが、この作品の役柄とあまり変わらない個性のように見受けられる。ボソッとした話し方や、表情のとぼしい所は、この役には最適な個性だった。他の俳優がうまい演技で演じても、ここまでの味はなかなか出ないだろうと思う。

 

発達障害やコミュニケーション能力の障害がある人間は、社会に出て活躍を続けるのは難しい。出世の道から外れやすいし、伴侶を得るのにも苦労する。お見合いのような機会がないと、話し下手な人間はなかなか結婚できないままになる。

 

昨今は事業として結婚の斡旋をする会社が多いようだ。劇場主もデートは面倒と感じるほうだったので、話するよりも先に段取りをつけてくれたらと思うところがあった。デートで自分を高く売るためには、ある程度の虚勢、嘘に近い見栄が必要だと思うが、演技めいたことをするのが嫌だった。そこが障害だったのだろう。

 

罪にならない程度の嘘なら、こだわる必要はない。ただ、自分のセンスで罪にならないと思っても、許しがたい傷をつけて気づかないままでいるだけでは?という不安は残る。嘘と言えないほどの誇張が、意外な形で人を傷つける可能性はあり、後でしまったと思うことも多い。おしとやかなふりをして結婚した娘さんは、後で地を出した時に夫にすまないと思うことはないのだろうか?家内を見る限り、そんな感情は一切ないようだが・・・

 

男女に限らず、友人や先輩、上司や広く社会全体との関係においても、できれば真摯な態度をとりたい。そう考えている人も多いと思う。ただ真摯な生き方は融通のなさと隣り合わせであり、コミュニケーションでも支障になる。さらに真摯という感覚も、時代によってかなり変化していくものだ。平成29年に明らかとなった東芝などの企業倫理は、やや古いタイプのものだったと思う。かっては許され、推奨さえされたものだったろうに、今は倫理にもとると断罪される。そこに我々が勘違いしまくってきただけなのでは?

 

 

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