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2018年2月24日

オマールの壁(2013)

Photo

 

- Hany Abu Assad -

 

占領下にあるパレスチナに暮らす青年。逮捕され、スパイになることを強要される。バレたら即座に殺される運命。彼は生き抜くことができるだろうか?

 

DVDで鑑賞。作品の権利関係(映画会社など)はよく分からない。撮影の舞台は中東の町で、おそらく本物のパレスチナの壁も使っていたはずと思うが、占領下の日常が非常に上手く表現されれていた。よく撮影許可が下りたものだと驚く。明らかにイスラエル軍を非難する内容であるから、妨害が入らないことは考えにくい。こっそりタイミングを見計らって撮影したのか、あるいはまったく違う他の場所にセットを作ったのか?

 

主役の若者は米国で活躍していた本職の役者らしい。自然な演技をしていた。激しすぎる感情表現は、作品のレベルを下げてしまう。この種の映画の場合は淡々と演じるほうが良い。リアルなドラマができていたと思う。パレスチナ出身でも、欧米に渡って活躍する人は多いらしい。現地では自分の能力を伸ばすことは難しいので、欧米での活躍に賭けるのだろう。

 

スパイになった人間は、仲間をだまして自分が生き残る道をただ歩むしかない。この作品の優れている点は、スパイたちが考えそうなことをストーリーに上手く反映していた点。特に複数のスパイが組織に紛れ込んでいたらどうなるか、そこがよく考えてあった。加えて現地での恋愛の問題も絡むから、話が複雑になって面白かった。ただ戦いの話ばかりよりも、恋の話があったほうが断然いい。

 

スパイを作ることは、実際に簡単だろうと思う。家族や恋人をネタにすれば脅迫して従わせることは可能。自殺する者もいるだろうが、スパイになる者もいるはず。関係を維持し、出し抜かれないようにするのは難しいだろうが、入念に検討してスパイ同士が互いを見張るようなシステムを作れば、かなり有効な情報網を作れると思う。

 

だから一度でも逮捕された人間は、基本として組織に復帰させてはいけない。いかに優秀な戦士でも、家族を人質に取られたら裏切らざるを得ないと考え、少なくとも情報を与えてはならない。そこを徹底して、おそらく本当の抵抗組織は維持されているに違いない。

 

占領地の実際の様子は、日本からは分かりにくい。紛争が起こって銃撃戦になればテレビの映像などで状況を知ることができるが、日常生活にどんな形でどの程度イスラエル軍が介入し、どう管理されているのか、そこが分からない。実際も、この作品に描かれていたような悲惨さなのかも知れない。

 

占領下にある若い男女は、自分たちの結婚、人生設計についてどう考えているのだろうか?この作品では、そこを考えざるを得なかった。結婚しても夫が直ぐ殺されたら、残された妻は生活が大変になる。日本での結婚でさえ不安を感じるくらいなのに、支配下地域の若い娘は相当な覚悟がないと結婚に踏み切ることは難しいだろう。いっそ脱出して米国での未来に賭けたい、そう考えるのが自然ではないか?そしてイスラエル側も、現地の人口が減ることを望むだろう。でも、やがて米国で育ったパレスチナ人が、祖国の復興を望んで数百万人単位で入植してきて、話がさらに厄介になるかもしれない。

 

パレスチナ問題の解決は、現時点では誰も方法をあみ出せていないと思う。トランプ大統領が介入しようとしているそうだが、問題の複雑化を生むだけかも知れない。旧約聖書の時代から、占領によって決着をつけてきた歴史がある地域だから、より武力があるほうが他を圧する状況が、ただ続くだけと考えておいたほうが良いのかも知れない。

 

 

 

 

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