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2017年12月22日

蜜蜂と遠雷(2016)

- 恩田陸・幻冬舎 -

 

ピアノコンクールの入賞を目指す男女の、互いの関わり合いを描いた小説。名演奏家の弟子だという謎の少年が参加してきたことで、優勝レースは混沌としてくる・・・・2016年下半期の直木賞と本屋大賞を取った作品。

 

この作品が書かれた頃は、ピアノが文学界のテーマとして流行していたのだろうか?「羊と鋼の森」も、確か本屋大賞に入選していたはず。文学で音楽をどう表現するかが、作家たちの間でテーマになったのかもしれない。互いに触発されて、いかに自分なりの文章で表現できるか、作家ならではの意欲が作用して、試してみたくなったのだろうか?

 

この作品はコンクールの勝負、そして恋愛感情、道を究めようとする試練やライバル意識、緊張感、そして協力してもらえる人達との関わり、そして異能の持ち主が与えた影響など、物語を面白くしそうな要素がたくさん詰め込まれていて、贅沢なシチュエーションになっていると感心した。

 

その一方で、話が出来過ぎている点も否めないのでは?と思う。コンクールの有力な出場者が幼少時に仲の良い友人である、しかしコンクールの日まで認識していなかったなど、明らかに出来過ぎだろう。ニュースや新聞、業界雑誌などで事前に気づいていないとおかしい。異能の持ち主が、ヒロインの周りに出没する偶然も、少し浅はかな設定のような気がした。韓流ドラマなら許されるだろうけど、小説には安易な設定だったろう。それによって作品の重厚感が損なわれたように感じる。

 

でも逆に言うと、テレビドラマの原作小説としては最高かもしれない。次々と見せ場の演奏が奏でられ、これが最高と思ったら次の演奏も素晴らしい、また次も個性的で評価が悩ましい・・・そんな繰り返しは、連続ドラマでは盛り上がりにつながる。次回をお楽しみに・・・となる仕掛けである。単発の映画でも、二転三転の勝負になって面白くできるかも知れない。もともと映画化、ドラマ化のための設定なのかも知れない。ドラマ化されると原作も売れるから、その点は無視できない。

 

作品の成功は、演奏の表現がカギだったと思う。文章で音や演奏をいかに表現するか?劇場主には想像もできない。演奏を聴いて風景がイメージされる・・・そんな演奏もあるかもしれないが、分からない。劇場主はCDやラジオでしかピアノ曲を聞いたことがないので、本当のコンサートでの感動を知らない。音響の効果は大きいから、本物を聞いたら涙にむせぶくらい感動できるのかもしれない。それを表現した文章を読めた可能性はある。でも分からないので、良い文章なのかも評価できない。

 

ピアノの位置を少し変えるくらいで、本当に何かが大きく変わるものだろうか?そんなに繊細なものなのなら、ホール建設の時には何かの仕掛けが必要だろうが、実際の演奏家、建築家や音響技術者でないと分からない。劇場主の感覚では、演奏している本人が観客席での音響を把握するのは難しいような気がする。音の拡がりは、演者と観客では方向性が違うはずだ。

実際に席に座り、周囲に人間がいて初めて音が分かるのではなかろうか?劇場の構造は、千差万別のはず。いかに演奏が上手くても、席で聞いている音は直接認識できないはず。そこを可能だと書いたら、劇場主は嘘くさく感じる。本当にそんなことが可能で、よく知られた事実なら話は別だが・・・

ドラマに向くだけの小説なのか、あるいは音楽を大胆に文章で表現した傑作なのか、そこは音楽家や音響技術者だけが分かる領域なのではないかと思う。よって、劇場主にはその判定が難しい。

 

 

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