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2017年11月16日

世界から格差がなくならない本当の理由(2017)

Sekaikara  
 

- 池上彰著・SB新書 - 

 

格差社会を論じた本。何かの番組のためにまとめた内容を書籍化したらしい。したがって記述の中には池上氏以外の人物、たとえば番組スタッフが集めた資料、文章も含まれているかも知れない。池上氏オリジナルの内容かどうかも分からない。取材した専門家たちの意見をまとめただけかもしれない。

 

格差の問題は、現代社会の最大の難問ではないかと思う。昔からそうだったのだろうが、実感としてそうだと感じる状態は、この数十年のことではないか?様々な環境の進歩によって、以前より大規模になっているはずだ。たとえば欧州に移民が大量に流入するのは、経済的な格差があるからだろうし、そのせいで人種問題が表面化し、人種間の対立が目立つといった風に、格差が他の問題を誘発していく病態のようなものも感じやすくなっている。

 

もし富の再分配に成功しているなら、格差は一定のレベルにとどまり、「仕方ないかなあ。」程度の諦観のもとに許容されそうな気がするが、どうも昨今はそういってない。許しがたいレベルの格差、常識から外れた不平等があると感じるようになっている。感じるだけじゃなく、実際に格差は拡大しているようで、様々な統計でそれが示されていた。

 

なぜ富の再分配が成功しないのだろうか?それが、本の結論になるべきだろうが、読んでも結論めいた文章はないように思えた。もちろん簡単な方法など、ないのだろうけど、もう少し意見を紹介するくらは、やっても良かったのではないか。 

 

EUのような経済圏の誕生とネット空間の整備により、人や金は動き方が変わった。壁がなくなって富がグローバルに動くから、国の単位で何か方策を考えても、富は国境を越え、形を替えて逃れていってしまう。国境があることで不平等も固定化されていたのではあるが、境目の扱いが変わったことで、格差の持つ意味も変わってしまったようだ。

 

解決法の基本は税制だろう。税制が国のものである間は、国際的に協調して資産家が税金から逃げることができないように、どう対処するか?そこが大事な問題。しかし国同士が互いに隙を狙い、競争し合っている関係だから、協調は難しそうだ。格差問題は戦争につながりかねないが、根本から解決する協調の意欲は、互いの思惑に引っ張られて捨て去られる。それに各国首脳が真っ先に資産隠しに走るくらいだから、協調は夢のまた夢だろう。解決の糸口がつかめない。

 

今の20代の方達は、自分が大きな資産を形成できそうな予感、自信はあるだろうか?非常に稀には強い野望を持ち、実際にもかなりの仕事をやってのける人物がいると思うが、昔と比べたら、そんな野心家は少ないような気がする。巨大な富でなくても良い、裕福になれるだろうという予感だけでも欲しいが・・・
 

理由はいろいろあろうが、

①その必要がないくらい、社会はかなり豊かであること。

②既得権益が守られて、ありつける資産に限界がありそうに感じること。

③格差問題に対する危機意識が薄く、簡単に事が改善しそうな予感がしないこと。
そういった雰囲気のようなもので、希望を失っている人が多いのでは?と、想像する。よくは分からないが。 
 

劇場主が20歳の頃は、かなり貧乏なほうだったが、今後は豊かな生活を送れそうだという希望や確信のようなものがあった。学校を追い出されないなら就職はできるだろうし、家庭も持てるだろう、明日の食事を心配するようなことは、天変地異か戦争が起こらない限りないと思っていた。たまたま幸せな時代に生まれ、不安より夢のほうを感じることが多いように感じられただけかもしれない。劇場主の時代が、むしろ稀なのかもと思う。おそらく、当時の若者と今の20代では、微妙な感覚の違いはあるだろう。 

 

感覚を良い方向に誘導することは大事だと思う。ただの励ましではなく、若者が常識的な判断力で「無理してでも借金し、商売を始めたい。きっと上手くいくだろう。」「豊かにならないとは、あまり思えない。きっと対処法はある。」・・・そんな風に感じるように、融資枠や税制をいじるべきだろう。国家の意志が明瞭に示されれば、少なくとも良い方向に変化するはず。 

 

 

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