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2017年7月31日

頭上の敵機(1949)

20cfox

- 20C.Fox -

ドイツの軍需工場を攻撃している米軍部隊。失敗が続くため、あらたに隊長に任命された主人公は、作戦成功を目指すが・・・・

・・・異色の戦争映画。テーマは作戦の成功ではなく、その代償のほうである。作品の存在は知っていたが、その特徴は知らなかった。時代を考えると非常に珍しいのじゃないかと思う。赤狩りの前に企画されたから間に合っただけで、少し遅れていたら大変な迫害を受けたかも知れない。奇跡的なタイミングの作品かも知れないと思った。

終戦直後にアカデミー賞の候補にあがった作品は、多くが非常に理想主義に燃えている。1950年頃からは映画界の内幕ものなど、戦争や政治とは異なるテーマに作品の趣向が集まっている。おそらく、赤狩りで製作中止にでもなったら資金が吹っ飛んでしまうから、政治がらみの作品に予算が集まりにくかったのではなかろうか?

この作品、主演はグレゴリー・ペックで、最後のほうまで役柄に合っていないような気がしたが、ラスト近くで最後の攻撃に向かおうとして調子を壊した後の表情を見たら、非常にリアルな病人ぶりで、キャスティングされた意味が分かったように感じた。彼の良さは、苦しい状況に陥った時の表情だったのだと、改めて気づかされた。

ある意味で、人間の弱さ、兵士の厳しい環境が描かれた作品だから、厭戦を主題にしているとも思われる。戦後でないと評価されにくい内容だ。興業的には、かなり危険な種類の作品になると思う。

原題はTwelve O'Clock Highで、何のことか分からなかったが、飛行機に対して12時の方向、上方から敵機が攻めてくるという、操縦士達の連絡に使われる言い方のようだ。確かに「何時の方向・・・・」と、よく映画でも兵士同士の会話を聞く、あの言い方だった。

兵隊の中には、一定の割合で精神的に破綻してしまう人がいると聞く。単に勇気がない人がそうなるとは限らず、多大な期待を背負ったり、過剰な仕事、繰り返される緊張で精神に障害が来るらしいので、要は環境と責任が生む病態だろう。強い弱いというより、鋭い人はやられ、鈍い人は影響されないといったものではないか?

兵士ではなくとも、収監されて連日の取り調べを受けた人は、人の心を砕かれるような体験だったと語ることがある。人権を制限され、自由を失うだけで、人は容易に意志の力をそがれるものだ。精神的に強そうな人でも、それは立場によるもので、どのような状況下でも強い態度をとり続けるのは難しい。

 

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