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2017年4月23日

アルジェの戦い(1966)

La_battaglia_di_algeri

- Casbah  Films - 

レストランで優雅に食事を楽しむ市民・・・・しかし、突然の爆発で多数の犠牲者が出る。無差別テロだ。犯人は現地のテロ組織。組織に対抗するため、フランスから空挺部隊が派遣される・・・

・・・・アルジェリア独立前のフランス軍とテロ組織の戦いを中心に描いた作品。カンヌ映画祭や、日本のキネマ旬報などの映画賞を独占した作品。強烈な映画だ。「シェルブールの雨傘」を観ていて、そういえばギィ君はアルジェリアに行ったのだと思いだしたのでDVDで鑑賞。

臨場感にあふれている。ドキュメンタリー映像のようだが、記録映像を使わないで、全て映画のために再現したそうだ。でも、実際の事件を写しているとしか思えないリアルな映像。おそらく、アルジェリア政府の援助、市民の無償の協力があって初めて成功した企画だろう。

大勢の人達が映像の中で真剣な表情を保ち、エキストラと思しき人達も演技臭くない表情を見せ、ちゃんとリアルな映像を作ることに参画している。俳優達ばかりでは、街の雰囲気の再現は難しい。エキストラこそが、この作品で最も重要な出演者だったと思う。

独立運動の記憶がないと、こういった企画は成立しにくい。いわば、この映画も独立運動のひとつだったと言える。

フランス軍の大佐も、テロ組織側も、使命に忠実な存在として描かれており、視点が素晴らしい。素晴らしい・・・・ということは、反発されやすいということも意味する。公平な見方をすると、その理想主義が鼻について、激しい攻撃を受けるのが必定だ。昨今の炎上騒ぎをみると想像がつく。この作品も、フランス側からは批判されたらしい。

独立が善なのか?考え方はいろいろある。欧州の支配から脱出しても、ただ封建政治や貧困を生む国が多い。それに政治的に独立しても、輸出しなきゃ金は得られない。貿易にともなって、経済面では支配を受ける。アラブの春の経過をみてみると、革命は混乱を生んだだけのような気もする。でも、だから支配下にいるままで良いはずもない。民衆の意志に従うべきとしても、結果は単純な成功につながらない。

独立後が一番難しいのだ・・・・と、映画の中でも指導者が言っていた。その通りだろう。経済をどう運営するか、その結果次第では大失敗に終わることもある。

アフリカ側とヨーロッパ側の関係がそもそも複雑で、互いに侵攻を繰り返してきた歴史があり、どちらが正義、どちらが悪者と決めつけるのも難しい。今は主にシリア難民とイスラム過激派のテロが問題だが、60年前までは一方的な欧州側の支配こそ最悪の権利侵害。数百年前はイスラム海賊こそ最悪。二千年前はローマ軍が最悪だったろうか?

描かれていたフランス軍も勇敢で優秀だった。彼らなりの価値観に基づき、任務を遂行していた。しかし、残酷な拷問もやったようだし、結果的には敗北し、徒労に終わり、意義の低い行為だったのかも知れない。劇場主がフランス軍の兵士だったとして、進んで命を賭けられるだろうか?強制されないと、普通の人なら無理だろう。愛国心だけでは嫌になる。

テロ組織側も、命を賭けた意味がどの程度あったのか疑問。第一に、無差別テロが許容されるべきとは思えない。そして、独立後の治安を守るためには、おそらく欧米の手先を排除するために、強権的な政権が必要になる。実際に多くの発展途上国がそうなっていた。そうなると、勇敢な行為も優れた政治的判断も、実質ただの権力闘争の様相を呈してくる。

昔からそうだったのだろう。解放や政権交代の後にも、圧政と貧困が待っているのだ。

 

 

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