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2017年1月 6日

住友銀行 秘史(2016)

- 呆れた善き題材 -

住友銀行とイトマンをめぐる人の動き、暗躍する人物達の行動を、直接の関係者のひとりが語った暴露本。これは明らかに映画の良き題材だと考えた。

第一に、その内容に驚いた。銀行員達は本当に本に書かれているような行動をとっているのだろうか?その驚きは、感嘆ではなく、呆れや失望、怒りに近い。もっと実業的な本来の業務に集中し、自分の出世や人の足を引っ張ることは二の次にしてくれないかと思った。

一銀行が破綻するのは確かに大きな事だが、破綻整理を厭わず、本来の業務、責任を果たすことのほうが大事だろう。社会人として、何か自覚に欠けた部分の多い人が、この銀行には多かったと言われても仕方ないと思う。

作者の記録の通りなら、作者は日中の時間のほとんどを裏工作や情報収集に充てていたことになる。本来の業務は部下達がやっていたのだろうが、上司がおかしいと部下も成果を出しにくいだろう。会社の課長~部長クラスがそんなでは、そんな会社は潰れて然るべきかも知れない。もっと本来の仕事をせい!と、言いたい。

著者は、自分は銀行や日本の経済界のことを考え、悪者を排除するために行動した、義憤にかられたといったことを書いているが、そのままを信じることは難しい。著者自身が出世競争にのめり込み、裏工作や情報漏洩を通じて上層部を排除することしか考えていなかったのではないか、まずそこが怪しい。

この本に書かれていたように、本来の仕事をほったらかしにして勤まるなら、日本の企業戦略の停滞は致し方ないのかも知れない。特殊な例であって欲しいと思う。日々、患者さんに大声出して話しかけ、身を粉にしてサービスしている劇場主の苦闘は、いったい何なのだろうか?ただ銀行に使われているだけなのか?

大企業に勤める人達にとっては、出世競争は大きな問題。殺し合いにならないだけで、汚い手段も日常茶飯事と思う。ヤクザの抗争と、心情的な部分は同じではないか?会社で外様にされると、時にはイジメを目的とした行為で苦痛も受けるだろうし、収入や誇りの面でも不利だと思う。弱い立場に陥るのが怖いから、強烈な行動をとる連中も自然と多くなるのだろう。

真に誇りを持ち、仕事に集中し、その成果に応じて天命を待つ・・・そんな人物でありたいものだが、ライバル達はそれを許さないだろう。誇りある人物が自分の上に立たれたら、自分の浅ましさが際立つし、信条を異とする人物とは協調するのは困難。敵として対処しないといけない・・・そんな風になるもののようだ。だから誇りを持つ生き方を目指すなら、出世は諦めるのが基本となる。

イトマン事件の場合、巨悪はおそらく許永中や裏のヤクザ組織だったのではないかとは思う。当時は暴力団も派手に金儲けに走って、凄い金額を稼いでいた時代。経済に詳しい人物と連携したり、みずから経済ヤクザとなって大儲けをしていた連中も多かったろう。彼らがイトマンに目をつけ、結果的に銀行からの融資を得たのが本態だと思う。

その中で抵抗した銀行員は、完全な悪者とは言えない。敵が敵だから、表立って内部で何かを発言したら、身の危険がすぐ迫ってくる。味方からも簡単に裏切られ、銀行はくびになり、最悪の結果が待っている。裏工作を選んだのは正解だったと言える。その点は差し引いて考えないといけない。でも、出世競争にはまりすぎていたと思う。

今でも犯罪組織が企業に取り込んで、巨額の資金を得ていると聞く。企業が収益をあげようと無理する際に、弱みをつかまれ、強請られたり協力関係にはめられたりするようだ。企業側も政府も、株主総会の日取りを操作したり、法律を整備したり、細かい工夫で成果は出しているそうだが、きっと敵は小さなほころびを探ってくるのだろう。行員の出世競争は、そのほころびのひとつではないか?

許永中は、今も韓国で生存中だという。彼側からの反論が出れば、読んでみたい。おそらく、素晴らしい論理で自分を正当化し、被害者として描いてくるだろう。それも絶対に良い映画の題材になるはず。

 

 

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