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2017年1月24日

君の名は。(2016)

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- 2016 「君の名は。」制作委員会 -

夢の間に入れ替わった二人の高校生が、周囲を巻き込んで起こす奇跡の物語。劇場でやっと鑑賞。昨年夏に公開が始まり、もう2月が近づこうとしているのに、中はかなり混雑しており、隅っこのほうの席にやっと辷り込んだ次第。人気の凄さに驚いた。

よく出来た美しい作品だった。魅力を確かに感じた。

①魅力の第一は、その美しい画像にあると思った。景色の写真を処理してアニメ風にする技術が生きている。おそらく手作業ではなくソフトが中心になって処理して、最終的に人間が修正しているのでは?

今まで実写で使われていた手法、早回しの間に日が昇ったり沈んだりする、あの光景がアニメで表現され、しかもより美しくなっていたので、物語全体を美しくリアルにする効果があった。

②ただの入れ替わり物語に終わっていなかった点。そこも大事だった。「転校生」のような騒動だけでは、もはや今日、見向きもされないだろう。どんな物語を附加するかが大事だった。

③飛騨地方を舞台としたこと。神秘的な雰囲気に通じる、善き選択だった。もし、露骨に東北地方の漁村などに選定していたら、意味合いが大きく変わってしまう。悲劇がリアル過ぎると、観ていて辛くなってしまう。

④夢の内容を忘れてしまうという現象は、たいていの人間には経験があるはず。そこを、時空を越えた巡り逢いの話に連想させた点が、非常に分かりやすく表現できていた点。分かりやすく、しかも美しく表現するための手法が素晴らしかった。

⑤田舎の町長選挙、建設業者との癒着の問題や、独特の陰口などがリアルだった。リアルなドラマは、一見関係ないように見えて、主人公らの物語を切実にする効果がある。田舎出身で、しかも建設業界に関係があるらしい監督の実体験が生きているように想像した。

逆に、問題点も感じた。

映像面はともかく、ドラマ的な部分は、韓流ドラマと大差ない。アイディアは優れていても、細かい点の整合性、執拗なほどの理論的検討が足りていない。大ヒットはしても、青春ドラマの域は超えていないかも知れない。

冒頭の流星のシーンは不必要で、むしろ質を下げて逆効果だと感じた。一般の人には美しいスタートに見えたかも知れないが、やや浅はかな印象も受ける。ストーリーを想像させてしまう。夢の話からスタートすべきだった。

直ぐに違和感を感じたのは、もし今日の日本で大きな悲劇が起こっていたら、マスコミは繰り返し被災地を特集し、光景を写していたはずで、画を見れば誰だってそこが被災地だと気づくはずという点。地名も常識となって、記憶に残るだろう。ましてや現地の人が分からないはずはない。設定に無理があった。

無理が生じた理由は、おそらく東日本震災の悲劇を暗に示唆するために、意図的に題材から外したためだろう。震災は、うっすらと隠した、この作品の裏のテーマに違いない。悲劇を、どうにかして防ぎたかったという後悔、怒り、悲しみは、おそらく作品の根底に隠れたテーマだ。

劇場主は、やはり名もない漁村を舞台にすべきだったと思う。作品のヒットの邪魔になり、無用な批判の原因になったかも知れないが、追悼の意味で映画にできることが、そろそろ求められていると思う。この作品が、それになると良かった。

実写版がもしできるなら、今度こそ舞台は東北地方の田舎にして欲しい。

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